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世間的にはつまらない、エッセイ以外の作品

右直事故

作者: xoo

私は車より先にバイクの免許を取った。教習所で右直事故に備えて防衛運転するよう、教官に口酸っぱく指導されたけれど。事故の類型は知っていたけど、我が身のこととは考えていなかった。

 再会したのは、田舎の寺だった。もう遠い夏。



 中学校で吹奏楽をやっていた。仲の良いМはT子が好きだったけど、T子はSと付き合っていた。でも卒業の時に、親の転勤で田舎を離れることになったSを、田舎の駅から見送った。

 私とМは同じ高校に、T子は別の高校に。それぞれ同じ列車に乗るけれど、それぞれ吹奏楽は続けたけれど、私はT子とは没交渉だった。



 高校を卒業してからは別々だった。田舎から1時間離れた街に就職した私は、ある日、Мからの電話を受けた。


 「T子が亡くなった」と。Мは遠隔地で行けないので「香典を届けてくれ」、と。


 田舎の寺に集まる。十数年ぶりに同級生が集まる。

 8月のお盆明けの夜、遺影のT子と、泣きじゃくるSがいた。



 T子とSは、中学校を卒業してからも連絡を取り合っていたらしい。T子は東京に出て、准看護師になって、看護師になって、助産師の資格を取って、でも産科病棟に空きがなくてICUに勤めていた。10月からは産科病棟に異動して、翌春にはSと結婚する。ことになっていた。


 深夜勤のT子は勤務先の病院にバイクで向かっていて、対向車が右折してきて、避けられなかった。典型的な右直事故だ。勤務先の病院の、ICUで、T子は亡くなった。



 その日、T子を勤務に送り出したSは今、田舎の寺で泣きじゃくっている。

 勤務先の師長さんと主任さんが正座している。

 同級生は誰も、Sに声をかけられない。



 「同窓会をしようか」

 夏の夜の、田舎の寺で。誰かが言いだした。

卒業して十数年ぶりの同窓会。T子とSの姿は、ない。

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