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6.お父様と対決

 朝のすがすがしい空気の中、わたしは庭園を歩いていた。

 おやつを3分の1に減らし、毎朝ウオーキングをする。つまりダイエットよ。

 綺麗なお花を見ながらの運動はとっても気持ちがいいわ。

 わたしもそのうちまた花を育てたり畑を作ったりしたいなあ。

 早朝の、まだ日が高く昇る前の庭仕事は気持ちいいのよね。大好きだったな。

 うちの庭師も朝早くから庭にいる。働き者のいい庭師だわ。顔もいいし、わたしを見るとにっこり挨拶してくれる。その笑顔がいいのよね!はあ癒し。やっぱり早起きは三文の徳だわ。


 わたしが早起きして自分で身支度を整えると、朝のモニカの出番はなくなる。驚いてはいるけど、仕事が減って喜んでるみたい。あの女って単純というか深く物事を考えることがないようなのよね。

 だからあんな態度もとれるんでしょうけど。

 

 お茶の支度はアンナに変えてもらった日からずっとアンナだ。お菓子は2つ、必ず渡している。遠慮するけど子供にあげてって言うと嬉しそうな顔をする。

 アンナは庶民の出らしいから、貴族の食べるようなお菓子はなかなか食べる機会がないだろう。ママがお土産に貴族の食べるお菓子を持って帰ってきたら、子供はきっと喜ぶわよね。子供、かわいいよね。わたしも昔いたのよ。前世で。懐かしいな。

 子供のいる女性との会話はリラックスできるし楽しいわ。若い娘はモニカでこりごりだから、アンナをメイドにつけてもらったけど正解だった。

 わたし達はそうしてだんだん親しくなっていき、ある時わたしはアンナにあるお願いをした。


 

 

 その日夕食の後、わたしはお父様の書斎を訪ねて行った。

 お父様のお仕事は忙しく、夜も書斎で何かをしていることが多い。


 お母様が亡くなってからわたしは悲しみで部屋にひきこもることが続き、お父様とも少し距離を置いた関係になっていた。お父様はどんな反応をされるかしら。緊張するわ。


「お父様、失礼します」

「どうした、シャーリー。何かあったか」

 シャーリーが書斎室に来ることなんてめったにない。意外なことだとお父様は驚いている。


「はい、実はお願いがあるんです」

「なんだね」

「うちのメイドのモニカを辞めさせたいのです」

「……トーマスから少し聞いているが、そんなにひどいのかね」

「はい!

 朝の手水は氷のように冷たいものを出すし、身支度のときはわざと髪をひっぱって痛くするんです!動作は乱暴でいつもバタン、ガタンと煩いし、わたしに対して失礼な物言いばかりします。紅茶はわざとぬるいものを出すし、たまに食事も忘れて出さないこともあります!」

 あら、勢いで言っちゃったけどなんだか子供っぽい印象になったかしら?


 お父様はわたしの話を聞いて、少し考えてから言った。

「あのメイドはサヴォア家からの紹介だ。簡単に首にすることはできない。

 メイドにはトーマスから注意させ、様子をみよう。メイド見習いだと思って受け入れてくれ」

 

 ああ、やっぱりこうなるのね。

 今のわたしが言うことはまるで子供のわがままみたいに見えるんだろうな。真剣に話しているんだけど、まともに取り合ってもらえないのは悲しいな。

 ライモンド様は伯爵で、我が家は子爵。立場もあちらが上だから強いことを言えないのよね。分かるわ。

 

 でも。


 この現状、わたしに我慢しろって言ってるのよね?

 どうして?わたしが我慢しなきゃいけないの?!おかしいわよね???!

 

 ここで引き下がることはできないわ!

 わたしは次の手を出すことにする。


「お父様、モニカはライモンド様と親しい仲だとわたしに言っています。恋仲だと」

 

「なに?」

「サヴォア伯爵家はライモンド様が婿養子に入った時に味方がいるようにと考え、ライモンド様がこの家に迎えられる前にモニカを入り込ませたのですわ。ライモンド様が過ごしやすいように、この家を変えておくことがモニカの目的です!

 モニカはライモンド様の愛人です。いずれ側室になるのだと言っています!」


 そこまでモニカは言ってないけど。

 匂わせたモニカが悪いのよ。

 ごめんなさいね、こういうのって先に言ったもん勝ちなのよ。

  

「……それは本当なのか?シャーリーの考えすぎではないのか?」

「お父様、わたしはもうずっとライモンド様からお手紙もいただいていませんし、お会いすることもありません。ライモンド様から何かご連絡があればモニカに手紙がいき、それをモニカがわたしに伝えるようになっているのです」

 ずっとかどうかは知らないけど、少なくとも今回はそうだからね。

 嘘ではないよね。


「なに!?」

「来月のライモンド様のお誕生日パーティにも招待されていません。モニカからプレゼントを指定され、それを送るようにと言われてます」

「なんてことだ!」

「お父様、我が家はサヴォア家に貶められているんです!わたし、もう嫌です!」


 決まった。

 これでモニカは首ね。

 

 と思ったのに。


 お父様は厳しい顔をしながらこう言った。

「そうだな、うちにはおいとけない」


 やったー!!!

 

「しかしそんな理由では解雇できないな。……これから執事に注意深く監視させ、何かいい機会があればすぐあちらに返すことにしよう」


 ええー!そんな、お父様ノリが悪いわ!


 さすがヴィスコンティ家当主、しっかりしていらっしゃるのね……。

 でもね、これはわたしの最重要かつ最速で解決しなければ将来生死にかかわるかもしれない案件なのよ!

 

 こうなったらもう、奥の手を出すしかない。


「いいえ。お父様、理由ならありますわ」

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