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すみません! ヒロイン間違えました!

作者: だぶんぐる

 姫騎士。

 それは俺達の住むこの国で最も栄誉ある称号の一つであった。


 国で語り継がれる伝説がある。


 大地が裂け現れた憤怒の化身が世界を燃やし尽くそうとする時、美しい白銀の剣を携えた女騎士が現れ、その恐るべき存在を剣と魔法によって打ち倒した。


 というこの国の者なら誰もが知る物語であった。


 ただ、それはただの伝説や物語で終わらず、実際にその白銀の剣は受け継がれ続けていた。


 そして、その剣は都の中心にある王立学園の聖堂、その中の台座に刺さっていた。


 何十年かに一度その剣を抜く者が現れ、抜いた者は必ず、国に救いかさらなる幸福を与えた。


 そして、その者こそが【姫騎士】と称えられる存在となる。

 この国では姫騎士となる為、女性は武芸と魔法の鍛錬に励み、男性はそれを支えるべく、同じように力を鍛えたり、支援や回復のような魔法を覚えたり、金銭的な援助が出来るよう商才を伸ばしたりしていた。


 だが、俺にとってそれはただの伝説ではなく、


「乙女ゲームの設定なんだよなあ……」


 乙女ゲーム『姫騎士と盾の守護者』。

 主人公、つまり、ヒロインは、王都の中心にある学園に入学することになった平民の新入生。

 【姫騎士】を目指し、日夜勉強や訓練に励む中、姫騎士と対を為す相棒とも言える存在【盾の守護者】候補の男性キャラとの仲を深めていくゲームである。


 俺はゲームと名の付くものならなんでもやってみたいタチで、このゲームもやったことがある。結構古いゲームなんだけど、面白かった。


 そんなゲームの中に転生してしまった。

 よくある話だ。ラノベの世界では。

 そして、俺はモブ。

 よくある話だ。ラノベの世界では。


 そして、俺はヒロインに取り入って、裕福な生活をしようと考えてた。

 悪役令嬢? 知らん。平民に生まれた俺に悪役令嬢を救う力などない。

 同じ平民出身のヒロインに力を貸して恩を売り、王子と結ばれ妃となった暁にはその恩を返してもらう。


 そのつもりだ、った……。


「ねえ、ちょっと、どういうこと?」


 桃色髪の可愛らしい少女が俺を上目遣いに睨んでいる。

 彼女はミーア、このゲームのヒロイン、と同じ名前だ。


 端的に言おう。


 間違えた。


 ヒロインを間違えた。



 転生した俺が、自由に動けるようになって、した事は大きく分けて三つ。


 舞台である学園に入りヒロインをサポートする為に子供の頃から能力を高める。

 学園に入る為にも、金を稼ぐ。

 ヒロインを探す。


 転生した俺は、まあ、テンプレラノベの如く現代知識チートで荒稼ぎした。

 そして、その金で魔法や知識の勉強をし、学園に入れるよう努力した。

 まあ、賄賂も流した。


 そして、最大の難関と思っていたヒロイン探しは意外にもあっさり見つかり、俺は彼女に、未来の妃になれると予言し、最大限サポートするから学園に入れるよう頑張ってみないかと勧誘した。


 貧しい村出身の彼女は村を離れることに悩みながらも必死の説得で了承してくれ、努力の甲斐あって異例の平民にもかかわらず入学することになった。その三人の内の一人になった。


 そう、三人。


 俺と、ミーアと、ミーア。


 そう、間違えた。


 俺の育てたミーアは、乙女ゲーヒロインの方のミーアじゃなかった。

 ただのミーアだった。


「ねえ、さっきからどういうことって聞いてるんだけど? あんた曰く『ミーアと言う少女が平民にも関わらず学園に入学し、将来は妃になれる』って予言だったわよね? ……ミーア二人いるんだけど。しかも、あの子の魔力凄すぎるんだけど」


 俺が育てたヒロインじゃない方のミーア。面倒だな、ミーアBが問い詰めてくる。

 まあ、そりゃそうだろう。あれだけ俺と頑張って伸ばしてきた魔力があっさりと超えられた。


「いや……それはですね……」

「なんで平民なのにあんなに強いのかしらね? 私より強いかもよ? ねえ、あっちが予言の娘なんじゃないの?」

「かも、しれませんね、ははは……」

「ははは、じゃねーんだワ」


 壁ドン。しかし、嬉しくない壁ドン。ちょっと魔力使ったでしょ。

 壁にヒビ入ってるんだワ。


 命の危機に走馬灯がもう凄い事になっている。


 ミーアBと出会って『キミなら妃になれる!』と伝えて、『バカじゃないの!?』とはねつけられながらも、自信を持ってもらう為に三日三晩褒めちぎってなんとかこくりと頷いてもらった出会い。


 魔法から教養の勉強、そして、戦闘まで教えていると、ミーアBのご両親に『娘をよろしく頼む』と言われ、それを伝えたら、『バカな事言ってんじゃないわよ!』と何故か俺が殴られ死にかけた思い出。


 村を襲った盗賊と戦い、みんなを守り、一人で戦ったにも関わらず『アンタ、バカでしょ』と殴られた思い出。


 学園の合格が決まり抱き合って喜んでいたら『ババババババカ!』と何故かぶん殴られた思い出。


 ほとんどが殴られたか、バカと言われたが、今となってはいい思い出だ。

 立派に育ってくれて、俺は嬉しいよ、うん。

 だからね、もう殴らないでね。


「でもー、そのー、学園に平民で入れただけで凄いことですし、将来は安泰なのではないかと」

「安定もいいけど、アタシは王子様と結婚できるって聞いてたんだけど? 出来ないよね、多分、あの子になるよね?」


 そうですね、そうしないと、乙女ゲーのストーリー的にはゲームオーバーで世界が破滅するので。


「セキニン……とってくれるわよね?」


 顔が赤い。笑顔が怖い。震えている。怖すぎる! キレすぎだろ!


「ももももももちろん! 責任取らせていただきます!」


 大丈夫、この乙女ゲーの他の攻略対象も、貴族だ。

 そっちと結婚ルートを目指せば、大丈夫。


「そ、そう? な、なら、いいわ。今の言葉、卒業まで忘れないでよね……」

「は、ははぁあああああ!」


 五体投地により、地面にこすり付けられた頭、その中にある脳に刻み込まれました。


 セキニンという言葉に震える。


 ヒロインばりの幸せを提供しなければコロサレル! だが、出来るのか……!?

 だって、ヒロインって物凄いなり上がれるんだよ!

 そもそもヒロインはなんでそんな会話で好感度上げられるんだってくらい、好感度バフが凄い。顔とかではないはずだ。顔であれば……。


「なに? 人の顔じろじろ見て……」

「いや、(お前だって)美人だよなあって……」

「なばっ……!」


 顔を真っ赤にして眉間に皺を寄せ始めた。

 え!? 何!? 地雷どこ!?


「なんでアンタはそういう事をいとも簡単にっ……!」


 よくわからんがもう喋らない方がよさそうだ。


「きゃっ……!」


 遠くで悲鳴が上がる。

 見れば、本物のヒロイン、ミーアAが貴族様に絡まれている。


「平民臭いなあ! このあたりは! 由緒正しきこの学園にドブネズミが入ってくるとは困ったものだ」


「早速、始まったか」


 ゲームの最初のイベントだ。


 嫌味な貴族に絡まれているところに王子様、他攻略対象がそれぞれの個性を出しながら助けに入る。

 いわゆる、自己紹介イベントだ。

 そして、初日は学園内の色んなところを巡って改めて、攻略対象とよくいる場所を確認するのだ。


 なので、ちょっとああいうのは腹は立つが、ここは静観。助けが必ず入る。


「ちょっと! やめなさいよ!」


 ほーらね。って、ねぇええええええ! ミーアさん! あ、ミーアBさん!?


 気付けば、ミーアBがミーアAさんの前に立ちはだかり、貴族様を睨みつけている。


「ああん? なんだ、貴様は?」

「アンタ達の嫌いなアンタ達より成績優秀だから入学できたドブネズミよ。」

「なああああ!?」


 なああああ!? なあに、やってんのよお! ミーアB!

 お前が喧嘩売ってどうするんだよ!


「この、ドブネズミがぁああ! 貴族に喧嘩を売るとは! この世界で生きていけると思うなよ!」

「残念でした。アタシの将来は、安泰なのよ。いいから、この子に謝りなさい」


 いやいやいやいや! 何言ってんのよ! ミーアB!

 それじゃダメなんだよ! ミーアAはお前に助けられたらストーリー変わっちゃうんだよ! 安泰どころか世界の崩壊なんだけど!

 間違ってるよ! おい!


「いいだろう、後悔するがいい! おい! この平民に貴族に逆らう意味を教えてやるぞ!」

「な! 一人で来なさいよ! 意気地なし!」


 貴族が5人。ミーアたちを囲む。

 ミーアBは剣を抜き、魔力を高める。


 いやいやいやいや! なんで戦うのよ! やめてぇええ!


「……平民が私達に勝てると思っているのか?」

「はっ! アタシが勝つわよ。アタシの先生誰だと思ってるのよ」


 ……いや、負けるよ、君。流石に五人は無理だ。先生、そう思う。


「くらえ!」


 5人が一斉に魔法を詠唱し始める。

 ミーアBは避けようとする。だが、ミーアAは腰が抜けたのか動けない。


「嘘! 何やってんのよ!」


 ああもう! 言わんこっちゃない!


 魔法が直撃し、爆発音が耳に痛い。


「俺の指示を聞いてくれよ、頼むから」

「アンタなら助けてくれると思ったのよ。責任取ってもらうまでは、ね?」


 セキニンって大変だなあ。

 俺は魔法を防いでいた〈障壁〉の魔法を解除しながら溜息を吐く。


「な……! 私達五人の魔法を全て受け止めた、だと……!」

「あのー、コイツには言って聞かせておくんで、ここは一旦なかったことに」

「ふざけるな! 偉そうにしやがって! 平民如きが!」


 貴族様達が再び魔力を練り始める。

 もう、ストーリー無視すんなよ! お前ら!

 みんなして間違うな! もう知らないからな!


 俺は、四人から放たれた四つの魔法を見定め、ミーアBに指示を出す。


「水と土は任せた」

「オッケー!」


 ミーアBは左側の、ウォータボールとストーンショットと向かい合い、右手を前に突き出す。

 左手は魔力を溜め、いつでも攻撃できるように構えている。

 右手から放たれた魔法が、水の玉を吹き飛ばす。

 その瞬間、水が一気に弾け飛ぶ。

 同時に、地面に手を当てる。地面が隆起して壁となる。

 そのまま、隆起した壁は放った貴族たちまで生え続け、吹っ飛ばす。


「どう?!」

「うん、百点満点」

「やった!」


 無邪気に喜ぶミーアB、うん、かわいい。これなら攻略対象もいけるんじゃなかろうか。


 俺は、右から来る火と風を対処。俺は右手を風の魔法に向ける。

 左手で、ウォーターボールを圧縮させ、威力を上げる。

 そして、それを放つ。

 火は一瞬にして消え去り、熱を持った水は霧に変わる。

 そして、俺は風魔法に向けていた右手に魔力を込め、より大きな風魔法で全部巻き込み次の魔法を放とうと準備していた貴族どもに向かって放つ。

 そして、そいつらは全員、壁に激突する。


「す、すごい……」

「ふふん、アタシの先生だからね」


 ミーアAとBが呑気に喋ってる。


 いやあ、ちょっとやりすぎちゃったかなあ。

 でもまあいいか。


「ちょっと! あれ!」


 ミーアBが指さす方を見る。

 一番奥で控えていた貴族様の光魔法が詠唱を終わらせ、発動したようだ。

 俺はさっき水と火がぶつかり生まれた霧にちょっと工夫を加え黒い霧を作り出し、光魔法を包み込む。

 すると、光魔法は黒い霧に食われるように消えて行く。


「はあ! そんなのありか!?」


 いや、アリだよ。だってそういう魔法なんだもん。まあ、二年三学期にならないとヒロインは覚えられない魔法だけど。

 俺はそのまま突っ込んでくる貴族様たちに向き直り、両手を突き出す。

 そして、その両の手の間に白い球体を作り出す。

 それはだんだん大きくなり、最終的にサッカーボールぐらいの大きさになる。

 それを、貴族様たちの頭上に浮かべ、徐々に加速させる。


 「ひい!」とか「やめろ!」とか聞こえてくるけど気にしない。

 そして、完全に速度の乗ったところで、今度は重力の魔法を発動する。

 貴族様たちは見えない力で押しつぶされるような感覚に襲われ、地面へと叩きつけられる。

 ちなみに、この魔法は、隠しイベントを攻略しなきゃ出来ない魔法。


「ぐぅうううう!」

「痛てえ! 体が動かねぇ!」

「なんだよこれ!」

「お、おい! そこの平民! 謝るから許してくれ! 頼む!」

「いいえ、許しません」


 だって、お前らが止まってくれないせいでストーリーが滅茶苦茶だろうが!


「おい! 何をやっている!」


 漸く王子登場。金髪イケメン、う~ん、キラキラしてるなあ。

 その後ろには、攻略対象の方々が。


 よし、ストーリーに戻してくれ。

 俺とミーアBはクールに去るぜ。


「貴様! 何をしている!」


 そう、ここで王子の一言で一方的に攻撃してた貴族様達が咎められって……え? オレ?

 王子が俺に向かってずかずか歩いてくる。


「貴様! 弱い者いじめなどしてて恥ずかしくないのか!?」


 チ、チガウヨォオオオ! 王子様!

 あっちがやってきたんだよぉおお!


「あ、あのですね、王子」

「黙れ……! 私は、この国の王子として皆を守る義務がある! 弱きものを守り、笑顔になれる世界を作る! それが私の願いだ!」


 いや、間違ってますけど。

 いや、台詞は間違ってないんですけど、今、それ言っちゃうと、ねえ……。

 ほら、状況を見てたみんなも黙ったし、貴族様達も『あ、やべ……』みたいな顔して黙っちゃうし……王子、ぶっちゃけ、すべってるから!


「さあ、かかってこい! 私が相手だ。愚か者には正義の鉄槌をくれてやろう」

「いや、あのー、王子? あのですね……」


 俺が話しかけようとするより早く王子に近寄った人物が。


 ミーアAだ!


 流石! 流石ヒロイン! 王子様の誤解を解いて、本筋に戻して!


 と、思ってた時期が私にもありました。


 パアン!


 ミーアA、王子の頬引っ張たいちゃった! なああんでぇええ!?


「こ、この人は、私達を守ってくれたのです! なのに、状況も見ずに、一方的に決めつけて! それが一国の王子のいう事ですか!?」


 うわああああ! 流石ヒロイン! 正しい!

 正しいけど、ストーリー的には間違ってる。


 あ、ヤバい。王子が目に涙浮かべてる……。


「わ、わたし、ぼ、ぼくは……うわああああん!」


 王子様が泣きながら駆けて行った!

 いや、それは三年二学期のイベントで初めて王子が自分は弱いと自覚してヒロインに引っぱたかれて目を覚ますヤツー!!!

 

 今じゃない、今じゃないのよ!


「あ、わ、わたし……」


 ミーアAが震えている。俺も震えている。


「よく言ったわ! あんた!」


 ミーアBがミーアAを褒め称える。違う、そうじゃない。

 ああ、攻略対象たちがぞろぞろとやってくる。

 どうなんの? これ……?


 銀髪の王子の側近的存在。シルバさんが俺の方に向いて口を開く。


「王子の事は気にしないでくれ。こちらでなんとかする。それより、あの状況でよくあれだけ冷静な判断を……君とは仲良くしていきたいものだ」


 間違ってます。そのクールな微笑みはヒロインにあげてください。

 その後ろから緑髪の知的眼鏡、リングが眼鏡を直しながらやってくる。


「もしかして、君は全属性を使いこなすのか? 実に、興味深い存在だ……よければ、魔法研究会に来ると良い。魔法を共に学び合おう」


 間違ってます。確かに俺は頑張って全属性使えるようになりましたけど、ヒロインもなんです。ヒロインを誘いなさい。

 赤髪の細マッチョ剣士、レイドが手の平と拳をパンパンさせながら近づいてくる。


「いや、それよりあの身のこなしだ! 平民だからやはり身体を動かすことが多いのか? あ、いや、すまない。悪気はないんだ! ただ、お前の動きは美しかった! それだけなんだ! いつか手合わせしてみたいもんだ!」


 間違ってます。ヒロインも動けます。野山を駆けまわるおてんばさんだから動けるんです。ヒロインと手合わせイベント起こしてください。

 黒髪の暗そうなオタクっぽい青年ルクバがチラチラこっちをみながら呟く。


「いいね……実験体として最高だ……。僕の研究室に来ると良いよ……」


 間違ってます。俺、呼ばないでください。ヒロイン呼んでください。

 そして、青髪の爽やかな男アイルが、大声で言ってくる。


「いやあ、なによりさ! 女の子二人をかばおうというあの姿勢! 正に盾の守護者って感じだったよ! 愛を感じたね! 愛を!」


 間違ってます。此処に愛はありません。

 みんな、頷きながら口々に「負けないぞ」とか言いながら去って行くのやめて!

 ねえ、! 間違ってるよ! みんな全部間違ってるよ!


「お、おい! お前も君も否定を……!」


 振り返ると、ミーアAもミーアBも真っ赤な顔で俯いている。

 もうやだぁああ! こんなイベント知らないよぉおお!


「ど、どうした? そんなに赤くなって」

「なんでも……ないです……」


 俺の声にミーアAが消え入りそうな声で言う。


「あ、あのさ! 二人ともさ! その、す、好き……だよね?」

「……はい」


 ミーアAが恥ずかしそうに言う。

 ミーアBも小さな声で「うん」と言う。


「だよね! 王子様かっこいいもんね! 王子様のことが二人とも……」

「「は?」」


 二人の声が綺麗に揃う。


「い、いや! だってほら! 憧れるでしょ!? あんな風にみんなの前で堂々と! 素敵だよねええ! ああいうの!」

「いや、思い切り言う相手を間違ってたし……」


 ミーアBが口を開くと、ミーアAも同意する。


「そ、そうですよ! 王子なんかより、あなたの方がずっとかっこよかったです! 私を守ってくれたときなんて……まるで騎士様みたいで……!」

「え? なに? アンタ、もしかして……いやいやいや! アンタは王子様と結婚するんでしょ!」

「何言ってるんですか? わたし、平民ですよ。平民は平民同士、その、け、けっこんしたほうがいいと思いません!?」


 俺に聞かないで!

 俺はただのモブキャラ!


「ねえ、アンタ、私にセキニンとるって言ったわよね……?」


 凄い怖い顔でミーアBさんが迫ってくる。って、ちょっと待って。顔赤くない?


「え? マジ? セキニンってそういう? いやいやいや! 早まるな! 安心しろ! 俺には攻略情報が頭に……」

「うるさい! 私は、あんたの事が好きになったのよ! 責任取りなさいよ!! 王子様と結ばれないと分かってちょうどいいわ! アタシと付き合いなさい!」

「はあああ!?」

「ちょ、ちょっとまってください。それは、その、私の方が好きで……いえ、あの、その……!」

「なんで、アンタまで割り込んでくるのよ!」

「割り込みって、な、何を言ってるんですか! わ、私だって、この人の事が……」


 あーもう! なんだこれ!? どうすれば良いんだ!! 誰か教えてくれぇええ!


 そこで、俺はパッと目が覚めた。


 はい。夢オチ。

 とか、だったらなぁあああああああ!


 間違ってる! 全部間違ってるよ! 誰のせいだ! 責任者出て来い!


 ……俺だよぉおおおおおお!


 俺が間違ったせいだよぉおおおお!


 ごめんなさぁあああああい!


 こ、こうなったら、間違いだらけで始まったこのストーリーを俺がなんとかしてやる!

 二人が近づいてくる。よし、まずはどの間違いから正すべきか……。


「ねえ、この子もミーアだから、呼びにくいでしょ? アタシの事は、その、あ、『愛するミーア』って呼んだらいいわよ」

「え、えと、えと、わ、わたしは『大好きなミーア』って呼んでください!」



 …………。


 だ、だれかぁああああああ!


 すみません! ヒロイン、間違えました! たすけてくださぁああああい!

お読みくださりありがとうございます。


少しでも面白いと思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


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[良い点] 何もかも間違ってるの好き
[良い点] ニヤニヤした。 [一言] ハーレムはこうでなくっちゃ♬
[一言] お前が間違えてるのはヒロインじゃねぇ 全部だw
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