【書籍化作品】約束通り白い結婚後すみやかに離縁したはずでしたが。
いつものゆるふわ設定です。
ノリだけで書いてます。
すみません。
政略結婚。イェーイ!
3年後を夢見て私はスキップしながら教会に入る。
私、マリアは異世界転生したらしい。
5歳の時、流行り病で生死の淵を彷徨った結果、前世を思い出したのだ!
前世、日本人だった私は男運がとにかくない女性だった。
浮気癖のある父親を持ったがため母が愛想をつかして私を置いて離婚して出ていき、高校生で主婦のような生活をスタートさせた。
『私は素敵な男性と結婚して、幸せな家庭を築いてみせる!両親みたいにはならない!』と思っていたのだが結果は惨敗。
高校時代につきあった相手は、浮気や二股交際発覚で捨てられた。
で、大学生になって今度こそはと地味な男と付き合った。
なのに!なのに!
結果は無惨で、私はまたしても二番目の女だったらしい。
ヤケ酒を親友とのんで、交差点の信号待ちで
「男なんて全員滅んじまえー!」
て叫んでたら、目の前にトラックが突然あらわれ、自分が滅んでしまったのだ。
で、目を開けたら転生していたのだ。
せっかく転生したのだから、もう恋愛なんてせず、趣味に没頭しようと決意虚しく、貴族に生まれた運命からは逃れられず。貴族なのに貧乏ってところもポイントね。
仕方なく、どうせ結婚するなら政略・契約結婚!と豪語していたら、とんでもない大物が釣れた。
前世憧れた豪華なウェディングドレスに身を包み、目の前の眩しすぎて目がチカチカする新郎をあらためて見上げる。
乙女ゲームとかやった事ないし異世界転生小説も詳しくはない。存在は知ってる。
眩しすぎる新郎・・・きっとメインヒーローに違いない。
彼はマケラッティ公爵嫡男バシハル様で私は貧乏伯爵令嬢マリアンヌ。
彼から実家の支援をする代わりに3年白い結婚をした後、離縁するという前提の結婚だ。
私は天才的な魔道具を作る変人と評判の令嬢で、幼い頃は『魔道具と結婚する』と口にしては両親を心配させ、家が貧乏と自覚した後は『どうしても結婚しないといけないのなら、金持ちと政略・契約結婚!』に変更したにも関わらず、両親に泣かれた。
解せぬ・・・
上司である目の前の新郎バシハル様も常々女豹達からのアピールに嫌気が差していたらしく、半ば強引に政略結婚を承諾させられた。
決定打は
『金はある。好きなだけ魔道具の研究をしたらいい。』
ええ、打算ですよ。世の中マネーよ。
マネマネマネーと海外の歌を口ずさんでは周りからドン引きされる日々。
だってしょうがないじゃん。
実際、魔道具の開発にはマネーがかかりますことよ。
そして、私マリア改めマリアンヌは公爵夫人となり、約束通り社交などは殆どせず趣味の魔道具作りに没頭した。
まずは前世で言う洗濯・乾燥機を作り使用人たちから喜ばれた。
次に冷蔵庫・冷凍庫・オーブンなど作って料理人に喜ばれた。
私は貧乏貴族令嬢だったので、使用人たちに交じって一緒に仕事をしながら、重労働だなと思ったり不便に思った事を魔道具作りで解消していった。
すると邸中の人間から感謝され、時間に余裕ができた侍女たちから身体の手入れをしましょうと無理やりエステを毎日受けた結果、元がよかったのか、結構な美女へと成長していた。
たま〜にどうしても行かないといけない夜会に渋々旦那様と行くと、男性から声をかけられるようになったが男なんてもう懲り懲り。
旦那様にピッタリくっついて夜会をやり過ごし、またバシハル様も夜会では甘い言葉を浴びる様に仰るので完全に馬鹿ップル認定されたようだ。
しかも滅多に私を社交に出さない事から公爵は夫人を溺愛して邸に軟禁しているのだと噂されている事を知るはずもなく、私は3年を待ち望んだ。
魔道具は裏切らない。
世の中金だ。
白い結婚万歳、離婚ウェルカム、傷物?かかってこいやぁーという感じで私はひたすら魔道具製作に没頭し、結果多大なマネーを手にした。一生遊んで暮らせるほどだ。
マネーを得た私は約束の3年が過ぎたのでサイン済みの離婚届と置き手紙を残し、ルンルンで前もって購入した小さな邸に移り住んだ。
「はぁー処女なのにバツイチって、また伝説つくったわー!」
誰もいない寝室でワインとチーズ片手に1人晩酌をする。
「後1時間で21歳かぁ………とりあえず、マネーは裏切らない。一生独身貴族だよ!乾杯!」
1人乾杯をしたはずだったのに、なぜかカチンとグラスが鳴った。
振り上げた手を見上げると、そこには見慣れた顔があった。
「あれ?幻覚?元旦那様が見えるわ。」
「幻覚ではないな。」
「え?どうして?」
目を瞬いていると元旦那さまはグラスにワインを継ぎ足して微笑む。
「21歳おめでとう、マリア。」
「あ、ありがとう、ございます?」
とりあえず2人でワインを飲み干した。
「ところでさっきの内容だが、処女でバツイチとはどういう意味かな?」
「あ、バツイチっていうのは一度離婚した人の事をそう呼ぶ国がありまして。」
「なるほど。では君は処女のまま離婚経験を持っていると思っている、で合っているかな?」
「え、ええ。まあ、そうなりますわね?」
何故か良い笑顔の元上司で元旦那様が近づいてくる。
「訂正をすると、君はバツイチにはなっていない。」
唇が触れそうなほど近くまで顔を寄せて爆弾発言をかましてきた。
「3年の白い結婚は離縁理由になるけどね、残念ながら籍を入れたのは結婚式よりだいぶ後なんだ。
だからまだ3年たっていない。」
「ええええー!そ、そうだったんですかぁ?まあ、じゃあ後何日くらい待てば良いのです?」
「明日の朝だが、残念ながら離婚理由の白い結婚は今から消滅するから、君の言うところのバツイチにはなれない。」
「あ、あの、それって………」
どういう意味かと聞こうとして唇を塞がれる。
バシハル様との口づけは気持ちよかった。気持ちよくてついつい流されまして。
酔った勢い・・・もあったのか、私は3年の期限ギリギリで処女を失った。
しかも、初めての私に何度も求めてくる絶倫・鬼畜な旦那様だという新たな事実に愕然とする。
それが嫌ではない自分にも驚きだったが・・・・。
夜明け前にやっと解放された私は昼過ぎまで爆睡した。
お腹が空いて目を冷ました私に素敵な笑顔のバシハル様が書類を差し出してきた。
「新たに契約を交わそう。君はこれまで通り公爵夫人として私の隣にいてほしい。」
契約書には今まで通り、最低限の社交と魔道具作りの開発費も今まで通り支給するという内容と、これからは正式な夫婦として夜の生活をこなし、子供ができれば一緒に育てるという内容だった。
「あの、どうして私だったんですか?」
条件が良すぎて思わず警戒した私にバシハル様は困ったように微笑んで言った。
「・・・・一目惚れだった。だが君は結婚したくないと豪語していたし、どうしてもするならお金持ちと政略・契約結婚だと言っていたから、白い結婚を持ちかけた。3年で君を落とす予定だったが、全く君は意識してくれず・・・」
おお、なんかバシハル様からどんよりとした黒いオーラーが渦巻きだしました。
「邸の人間からはヘタレだ、役立たずだと陰口を言われ、君にちゃんと告白してくるまで帰ってくるなと追い出されたよ・・・」
わお、皆さん、強気ですわ。
「君には直球で言わないと伝わらないのだと3年で身に染みてわかったよ。マリアンヌ、愛しているんだ。どうか私と一生一緒にいてほしい。」
「ちゃんと私だけを愛してくれますか?私を信じさせて下さいますか?」
「私を信じて。私に一生愛させて欲しい。」
バシハル様はそう言って私を抱きしめたのです。
「私も……(多分)一生愛します。」
酔っ払ったノリで一生の返事をしてしまったが、その後邸に2人で戻ったら使用人の皆に泣いて喜ばれたので、この選択は間違って無いはず。
その後、旦那様の溺愛を一身に受けた私は沢山の子宝にも恵まれ、前世の夢を叶えたのだけれど、それはもう少し先の話だ。