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狼男の純情  作者: 一之瀬 椛
一章
16/35

16、誰が為の茶番かと傍観者は笑う


「だから、一つ、提案があります」


美女が微笑むと、なんでも、悪いことにも乗りたくなる気持ちを理解した。









【狼男の純情】









どういう意図があってかはわからない。

エトさんは私の勘違い?を利用しようと言った。

勘違い?


とりあえず……

ランドルフがエトさんを好きを前提に、私がランドルフの恋を応援する。けど、エトさんにフラれてしまい、落ち込んでいるところを私が慰めて仲を深める。

という寸法。

エトさんはランドルフを恋愛的な意味で好きではないから、くっつくことはない。ここ、重要らしい。

ランドルフ、フラれるのか……。

ちょっと可哀想ではあるけど、これが成功したら…………成功するかな?

自信はまったくない。

というか、ランドルフをからかったという話といい、エトさん真面目そうなのに意外とお茶目?


私一人じゃ上手く出来ないかもしれないから、恋の応援はニーナにも少し手伝ってもらおう。

エトさんにも相談して、顔合わせと作戦会議?を兼ねた女子会をすることにした。

他の人に聞かれないように、休みを合わせてエトさんとニーナと私で他の町に。

ニーナが以前から気にしていたお菓子の美味しいお店に行く機会にもなり、エトさんも甘いものが好きみたいで喜んでくれた。


運ばれてきたケーキをみんなで一口味わってから、話を始める。

ちなみに、私は、「あんたが口を挟むとややこしくなるから、しばらく黙ってな」とニーナに事前に言われていた。

仕方なく、またケーキを口に運ぶ。

ん~……美味しいっ!

ケーキを味わい過ぎて、半分話を聞いていなかったことは内緒。……すぐにバレたけど。


私は鈍感らしいから、ランドルフがエトさんを好きなんじゃないかとニーナが私に言った、という設定から始める。

そんな鈍感じゃないよ私。

それで、今ではどちら共に仲の良い私がランドルフとエトさんの仲を取り持とうと、プライベート時間にわざと二人になるようにしたり、お菓子とかを二人で分け合うような小さなことから、ちょっとドキドキな体勢になるように突き飛ばしたりと、色々お節介を焼くのだ。

私、そんなお節介焼きするタイプかな?

突き飛ばすって私がやるの?

両方共騎士だし、私よりずっと大きいよ??難しくない?

と言ったら、エトさんがこちら側の人だから問題ないと話がついた。

私が動き易いように動いてくれるらしい。

勝手に話が進んでいく。

口を出そうとしたら、ニーナから無言の圧、笑顔で圧があって頷くしかなかった。

この子、たまに怖い……。

そんなニーナと私のやり取りをエトさんはケーキを美味しく頬張って見ていなかった。

この人も大概天然じゃないだろうか。


やることが決まっても、どのタイミングからそれらしいことをやればいいのか。

ニーナはすぐに始めると言っていたけど……。


またお昼ランドルフたちが来る。

エトさんも来るかもしれないと思っていたから、来なくて残念。

片側がマリアンナが占領していて退くことはないだろうから、ニーナと一緒に一つ席をずらしてエトさんにランドルフの隣を空けようと考えていたのに。

いつも通りに隣でご飯食べられるのは嬉しいけど。


ご飯を食べ終わって、仕事に戻らなきゃいけないランドルフが先に席を立つ。

そして、「また」といつものように私に言ってくれる。頷いて「お仕事がんばってね」といつものように返したら、「エマも」って。……好き。

この後の忙しい時間も頑張ろうと思う私に、ニーナが肘でツンツンしてくる。気が抜けていたから、ちょっとビクッてした。ごめん。


「ねぇ、エマ。この前、ランドルフさんとエトさん一緒にいたんだけど……良い雰囲気で、もしかして……」


内緒話をするように声を少し抑えているとはいえ、まだランドルフは近くにいるのにそれを口にするニーナ。

あれ、そういう設定じゃなかった?

わざわざ言うの?

いつもの内緒話よりも声は大きい。

ランドルフにも聞こえちゃわない?

気になって振り向こうとしたら、カウンターからサラサが身を乗り出してきて私の肩を掴んで内緒話に加わる。


「わかる!良い雰囲気だったものね、あの団長さんと!私も幼馴染みの一人としてランドルフの恋を応援してあげたくなったわ」


ニーナと同じぐらいの声量だ。

え、サラサは私たちの作戦知らないよね?

本当にランドルフとエトさんの応援しちゃうよ?

にこにこして言われるから、本当のこと言い難い。


「じゃあ、三人で!応援しましょう!」


ニーナは構わず、サラサと意気込んでいる。

え、大丈夫?


二人と内緒話をしている内に、ランドルフもマリアンナもいなくなっていた。

何も言われなかったってことは、聞こえなかった?聞こえていたら、私たちの応援を喜んで受け入れた?

後者だったら複雑。


サラサが加わったことで、翌日騎士団の方にご飯を配達することになった。

一緒にお昼食べられないのは残念だけど、仕方がない。

訓練で忙しい中、お昼に外に出る時間も勿体無いだろうという名目で、二人仲良くご飯食べて下さいという応援。

サラサからの気遣いだ。

午前中から店に入っている私が届ける役目を担う。それで、目に見えた応援をしろってこと。大事な大事な、あなたの恋の応援をしていますよアピール。


訓練はランドルフとエトさんの二人だけでしていた。

エトさんは魔力を使える人で、その使い方をランドルフに教えていた。

他の人は……まず知識から、ということで机でお勉強中だとか。大人になってからも大変。

ランドルフはすでに最低限を知っているから、他より早く実技に入ったのだ。師匠(せんせい)のおかげらしい。

しかも、エトさんはランドルフと同じことが出来る魔力だから、他より教え易く、また飲み込みも早いのだとか。

……私にも教えてくれないかな?

と思ったけど、机でお勉強になると思い出したら、気が進まなくなった。

うっかり、魔力を使った訓練に魅入ってしまって目的を忘れていた。だって、技?使う時にキラキラ輝くランドルフもエトさんも綺麗だったから。剣技だけでも格好良いのに、ドキドキが止まらない!

良いもの見れた、とすんなり帰るところだった。

訓練中の二人はフリではなく、本当に良い雰囲気で……。

エトさんは否定していたし、訓練だから真剣なのは当然だけど……エトさんと向き合うランドルフはなんていうか、それだけじゃないように見えた。

やっぱり、エトさんのこと好きなんじゃないの?

とりあえず、二人共素敵だったから拍手した。

すごい!すごい!って。

剣を下ろして、二人は離れたところにいた私に近付いてきた。


「怖くはなかったですか?」

「ぜんぜん!格好良くて綺麗でした!」

「それは良かったけど……待たせてごめんな」

「いいのいいの、こうして届けにきた役得?だし」


ふふふ、役得は役得なんだよね。

訓練中のランドルフなんて滅多に見れないし。

汗も輝いてる~。


「剣合わせている時は怪我しないかとか考えちゃって別の意味でドキドキしたけど、キラキラした二人は素敵で絵になるなぁって思ったよ。剣が無くても絵になりそう!お似合いの二人って感じ!」


笑顔で言えたし、言い終わった後も表情(かお)崩れてない。たぶん!

絵になるのも本当、お似合いなのも本当。

言って苦い思いをしたのは私の方なのに、なんで、ランドルフがちょっと……傷付いた表情(かお)しているの?


二人のお昼ご飯渡して、早々に……ってほど早くはないけど、帰ろうとした。

一緒にって誘われたけど、二人分しかないから遠慮した。

二人は騎士で、二人のお仕事は重要だからご飯が足りないなんてダメ!しっかり食べてもらわないと。私、結構食べるから、絶対足りない。

早く帰らないと、賄いゆっくり食べられなくなっちゃうから二人に手を振って戻った。


店に戻ったら、ニーナが来ていて成果を聞かれた。

ランドルフが私の言葉を聞いて何故か傷付いたような表情をしたことを話したら、一緒に聞いていたサラサと二人して「へぇ~」とニヤついていた。なんで?


説明も無いまま、次の話に入る。


成人の式事の前にある、年越し。

前夜から盛大に祝う祭が開かれて、祭の時にしか売られない食べ物や縁起物を売る出店が大通りにたくさん並ぶ。

幼い子どももこの夜だけは夜更かしが許されて、遅い時間でもはしゃいで走り回っているのを見る。少し前までは私もそちら側だった。この歳になったら、そんなはしゃいだりしない!……ウキウキはしているけどね。


年を越す瞬間は一番大切な人と、という習わしのようなものがある。

新しい年、その人、もしくはその人たちとの一緒にいられるようにと手を繋いだり、抱き締め合ったりする。

兄たちがいた頃の我が家では年越しの瞬間は団子状態だった。恥ずかしくて逃げようとする奴に積極的な面子が抑え込むように抱き付いていって、最後に父と母が外から私たちを抱き締める。一番目の兄の家族やダナ家もくっついてもいたから、なかなか立派な団子だっただろう。団子が解かれた時に中心で圧死寸前だった兄には同情したけど、ダナ家と……ランドルフとその頃は団子にくっつきながら手を繋いでいた。

兄たちが家を出ていく度に団子は小さくなって、二つのグリ家とダナ家の小さな三つの団子がくっつく形になった。

今になって思うのは、大きな兄たちが無理矢理大きな団子を作っていたのは小さな私たちのためだったんだろう。結構愛されていたんだなと思う。

昨年から今年の年越しも小さな三つの団子だった。

我が家はヘリオがいないから更に小さくなって、ちょっと寂しさがあったけど……これまでと同じようにランドルフがこっそり手を繋いでくれた。


今年から来年の年越しはどうなるか。

ニーナたちの立てる計画に置いてけぼりをくらいながら、また手だけでも繋げたらいいなと思った。


「…………え?私が何??」






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