銀木犀
銀木犀の花が散る
はらはらはらり
散り積もり
白い花の絨毯となる
高潔なる
銀木犀の精霊は
美麗なる白磁の肌の精霊
黒き豊かな髪をおろし
風に吹かれて
薫りを振り撒いている
彼女は決めていた
金木犀の精霊の姉妹は
悲恋なる恋物語を伝説として残した
私は悲しい恋はしない、と
そんな彼女の木の下に
一人の青年がやって来た
「恋しき貴女」
その美声に彼女の心の琴線は震えた
彼女は激しく狼狽した
だが、乙女が一人
青年の元に駆け寄ってきて
手を取り合った
銀木犀の精霊は
涙の代わりに花弁を降らす
恋人たちは
銀木犀からの祝福だと喜ぶ
恋人たちが去った後
銀木犀の精霊の彼女は思った
金木犀の精霊の姉妹と同じ
悲恋なる恋物語をこの胸に抱いたのだ、と……
「金木犀」の詩と対になる訳ではないですが、併せてお読みいただけたら、幸いです。
ここまで、お読みくださり本当に本当にありがとうございました。