みくトラブル
「真宵、マヨヒガからはどうやって出るの?」
「ミク様?まさか分からないのですか?」
「分かりません」
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だからね。真宵にはあまり遠慮しなくてもいいと思う。少なくとも忍よりかは遠慮しない。
「ミク様の場合ですと、マヨヒガに行き先を伝えると、行ったことのある場所限定ですがショートカットができますよ」
「よし。マヨヒガ、モノロスに行きたい」
あれ?霧が出てきた?私を包むように集まってくるけど…。
「ミク様、後程モノロスにて合流させていただきますので、お買い物などをされてはいかがですか?」
「真宵また後で」
真宵は一緒について来れないみたいだね。
霧が私の体を完全に包み込む。
しばらく経ち、霧が晴れるとそこは忍と出会った路地裏であった。
「マップオープン」
<マップを表示します>
表へ行かなきゃ!
「ん?」
そういえば真宵はどうやって私を見つけてくれるのだろうか?まあ、真宵だし座敷わらしの力で見つけてくれるか。
「お、見つけたぜテメェ」
「私に何か用ですか?」
厳つい見た目の連中に囲まれる。うーん、思い当たる節はココロ関係かな?
「ココロ様に近づく怪しい輩は俺たちが排除してココロ様に快適なゲーム生活を送ってもらうんだよ」
「その上で、テメェは排除する対象に選ばれた訳だ」
ココロ…過激なファンがいてお姉ちゃんちょっと不安になるよ。GMコールちらつかせて追い払うか。
「GMコールしますよ?」
「無駄だぜ、何せ俺たちはGMを買収しているんだからな!」
ジークや忍が買収された!?いや忍は違うか、掲示板専門みたいだし。ココロに連絡するか。
「おっと、助けてを呼ぼうとしても無駄だぜ、何故なら俺たちがそんなことをさせないからだ」
腕とか捕まれて拘束されちゃったや。何故かメニュー使えないし忍を直接呼ぶか。
(忍、ヘルプ)
(なんじゃ、主様?)
(GMコールです)
(すればいいじゃろうに)
(出来ないからこうして《念話》で呼んでるの!)
(しばし待っとれ)
よし、GMコールモドキ完了。あとは生き残るだけだね。
「何にやついているんだよテメェ!」
顔目掛けて拳が飛んでくる。まあ頭を動かせば回避できるから回避するけど。
「テメェ何避けてんだよ!」
「痛いのは普通嫌ですよね?」
「テメェが二度とこのゲームできなくなるように教育してやるよ」
「ココロに嫌われても?」
「はん、ココロ様が嫌うのはテメェの方だ」
ココロが聞いたらぶちギレるセリフのオンパレードだね。
「ココロ様のことを様を付けずに呼ぶようなやつがココロ様に好かれる訳が無いんだよなぁ」
「それにテメェをローラーで探していたこっちの身にもなれってんだ」
「理不尽で理屈が通ってない…ココロが嫌うのはどっちなんだろうね」
「テメェ口答えすんな!」
「そうだ。テメェは俺たちのオモチャにされては精神崩壊するのが仕事なんだよ!」
うゎ~。見事なまでのグズだな~。ここまでくると逆に尊敬できるわ。
(忍まだ?)
(主様今どこじゃ?)
(忍とはじめて出会った路地裏だけど?)
(あそこか)
「なんだなんだ!?」
足元の影どうしが繋がり、一つの大きな影に変わっていっている。それと同時に黒いモヤが厳つい見た目の連中に絡みついていく。
「アニキ、逃げてください。この女やべーやつです」
「ココロ様親衛隊ならこの程度で根をあげるな!」
「忍、ジークに連絡して、ログ確認してもらってもいい?」
『こっちは我に任せて真宵と買い物でもしてくるといいのじゃ』
「ありがと」
一瞬暗闇に包まれたかと思うと真宵の顔が目に入る。
「ミク様、見つけました」
「真宵、買い物行こ?」
「はい。喜んで」
そうして噴水広場から私たち二人は離れて行く。
「ミクちゃんだっけ?ちょっとごめんね」
「え?ここは?」
さっきまで真宵と一緒に噴水広場にいたはずなのに。目の前には透き通るような白い肌に、黄金に輝く金髪の綺麗なエルフのお姉さんが立っていた。
「ここは運営の応接室でね、一応事実確認をしておきたくて」
「GMAIなんですか?」
「私はAIではないけどGMの一人よ」
「エルフなんですか?」
「私個人について知りたかったら真宵ちゃんに聞いてね」
真宵の知り合いなのか。
「まるまるシカジカあったみたいだけど間違いないかしら?」
「間違い有りません」
「あなたとココロの関係は?」
「姉妹です」
「なら問題はないわね…ありがとう。時止め解除して、送り返すわね」
「え?」




