ココロの交渉術
「真宵、私ね、どうしようもない裏切りモノは百鬼夜行から追放するって決めてるの」
「ココロ様、諦めてください」
「そんな~」
慈悲など要らぬ。敵を滅ぼすまで攻め続けるのみ。
「お姉ちゃんのあのボイスデータをネットで売ったら余裕で百万稼げると思うよ」
「ッ!」
私が気にしてることで攻めてくるとか狡いな。
「ねぇココロ、それってどういう計算かな?」
「一ダウンロード百円だとしても私の知名度とか今のお姉ちゃんの注目度からしても一万ダウンロードは固いと思ったからね」
うーむ、この手の計算をココロが外した事、一度も無いんだよな。いや、でも。
「お姉ちゃん、そう言えばゲーマーとして私の後輩になるって言ってなかった?」
「そんな記憶は一切ございません」
「まあ、言ってたのはジャックさんなんだけどさ」
え、またバイトくれるの?ココロから経済的に独立できる?
「顔がニヤついてるよ、お姉ちゃん」
「うっ」
私の中での最優先事項がココロからの経済的独立だからね。ん?あれ?ココロからの妨害が無い?
「ねぇココロ、何か裏があったりするよね」
「推しを布教したい、最愛の人を自慢したいそういう裏しか無いよ」
あ…絶対にココロとはコラボしたら駄目なやつだコレ。絶対に配信中とかにプロポーズしてくるからね。
「因みにうちの事務所、ジャックさんのお気に入りだと、固定給プラス歩合制と言うリスク無く努力で稼げる最高の事務所だからオススメだよ」
「へぇ~」
相づちを打ちながら、本当の裏を読むとか難しいわ!ん?そもそもなんでこんな話をしていたんだっけ?
「それでボイスデータなり映像なりを合法的に入手すると。さらに最初に言った数に届きそうに無い場合は自腹でダウンロード数かさ増しして私に貢ぐと」
「いつもは鈍いのに今回鋭いね、お姉ちゃん」
「いつまでもココロに騙され続ける訳にはいかないからね」
「お姉ちゃんの成長が嬉しいくて悲しい」
都合の良い姉のままでいるのは嫌なんだよね。
「今回は特別に見逃す。但し、消すのはだよ」
「そのうち配信してくれるんだよね」
「それはジャックくんと学校で相談次第かな」
「そっか、しばらくは脳内再生で我慢するね」
念のために釘を打っておくか。
「言っとくけど、基本的にココロとコラボするつもりは無いし、うちの食卓で流したらココロの持ってる再生できそうな機器を片っ端から握り潰すから」
「さすがに食事中のお姉ちゃん対してやったら最悪の場合家から追い出されそうだからやらないよ」
うん。なんでバレてるの?
頭脳戦でミクが本気になったココロに勝てる訳無いんだよな…




