悪魔と御使い
レイは味方が門から出た瞬間に魔法を発動した。
敵との距離は約1km最初に敵戦力を削るためにレイがこの距離での出撃を提案したのだ。
魔王軍上空に雨雲が展開される。
「酸性雨」
前衛にいるゴブリン達が為す術なく倒れていく。
敵陣の足が止まった。
その隙を狙い一気に畳み掛ける。レイが雨を解除した瞬間、炎が戦場を飲み込むはずだった。
陽炎、烽烟の2部隊が敵を焼き尽くすまでがレイ達が考えていた序盤の作戦だった。
彼らの炎は大規模な無属性の障壁で無効化されていた。
「いやいや、本当に貴方は何者なんです?」
障壁の向こう側にいたのはメルーシュだった。
前回と違うのは手に持つ杖、この世界にまだ慣れていないレイでさえ、それには気圧されるほどのプレッシャーを感じた。
「どうでもいいだろ。今度は逃がさない」
「確かに、これから死ぬ人間のことなどどうでもいいですから」
そう言ってメルーシュが杖をついた。その瞬間レイ達の前に水球が展開される。
「全体障壁」
水球を包み込むように球形の障壁を展開する。
水球は棘のようなものが無数に飛び出した。
「こいつは任せるわよ」
そう言い残し陽炎は敵陣に突っ込んで行った。
「あれだけの人数で大丈夫ですか?」
メルーシュがニコニコしながら話しかける。
「大丈夫だよ。あいつらは強いんだ」
「そうですか。地形生成」
地形生成、自身の魔力を大量に消費し己に最も適した空間を作り出す魔法技術の最難関。使えるものにとって他のどんな魔法とも違う奥の手。今の状態は1体1だが、戦争の序盤に使うものでは無い。メルーシュはレイを恥をかかせた張本人として全力で叩き潰すと決めている。
故に序盤であろうが己の全てをつぎ込んでいるのだ。
メルーシュとレイだけが生成された空間にたっていた。そこはただ暗く静かだった。
「ようこそ私の世界へ、どうです?私のフィールドは」
「暗くて臭いだけだ。だからどうということは無い」
「それは早計ですよ」
メルーシュは悪魔族のトップである。全ての悪魔を統べる王。悪魔は本来この世界では姿を保てない。
彼らがこの世界で過ごすためには契約を結ぶ必要がある。
しかし悪魔と契約を結ぶ人間などいなかった。
散々モンスターに襲われた人々がそんなものを信用することなどなかった。
そこで彼が契約をした相手は魔王であった。
契約内容はとても簡単だった。
魔王はメルーシュに幹部として軍に加わり、その力を存分に振るうことを望んだ。
その対価として、メルーシュは魔王に普段の生活の自由を求めた。
故に彼は任務以外では縛られない。彼の手下の悪魔はその自由の保証によって呼び出すことができるようになった。
世界の法則への介入、小規模ではあるが改変が成功したのは、自信に縛りを設けた報酬のようなものであった。
レイの周りを大量の陰が取り囲む。
「無形の怪物この中では全てがあなたの敵です。さぁどおしますか?」
「どうもこうもない。ただ突き破るだけだ」
フィールドを打ち消すには、相手の魔力が切れるまで耐える。もしくは術者を倒すかのどちらかである。
レイはそれを知らなかったが、「魔法大全」の第2の能力(初見の魔法であろうと性質を理解することが出来る)により解決法を知った。
陰が一斉に飛びかかる。
上空から飛来するもの、爪で切りかかるもの、牙を剥くもの、形は様々であったが、そこから感じる殺気だけは同じだった。
「浄化の光」
あたり一体が眩い光に囚われメルーシュのフィールドごと消し飛ばした。
レイは視界が潰れたタイミングでメルーシュ目掛けて突き進む。
これは魔を払う神の光、レイが御使いであるが故に扱うことが可能な魔法。彼を少し変わっている魔法使いとしてしか認識していなかったメルーシュにとって大ダメージを受ける結果となった。
神の光と言っても使用者は元は魔法すら使うことが出来なかった人間。メルーシュが消滅させられると言うことはなかったが暗所からいきなり強い光を受け彼の眼球は悲鳴をあげた。
メルーシュの正面にたどり着きとどめの一撃を叩き込む。
「獄炎剣」
炎はメルーシュの体に突き刺さり激しく燃え上がる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
体に食らいつく炎の中でメルーシュの声にならない声が響き渡る。
「こん・・・な所・・・で」
メルーシュはそう言って何度も杖を地面に叩きつけた。
レイは距離を取り攻撃に備えたが結局何も起こらなかった。
メルーシュが燃え尽きその空間に残ったのはレイ一人
術者の死亡によりフィールドが崩壊していく。
そこには、紅い炎と機会兵がモンスターを蹂躙する姿が目に入った。
投稿感覚がまた開いてしまい申し訳ありません。
ひとつ言い訳をさせていただきますと、リアルでの運動量が増え疲れて執筆時に頭が回りませんでした。
さて今回の話はいかがでしたでしょうか?
面白いと思っていただけると幸いです
今回の豆知識
「生ゴミの臭いはお酢を2、3滴垂らすと消えるらしいです」