開戦
メルーシュが退却した後
レイと焔は熾火の国との連絡を取った。
この二国間の連絡手段は魔法ではなく科学によるものである。火炎の国は今ある国の中では科学技術に力を置いている国である。故に魔法の面では他国よりは圧倒的に劣っているよって真っ先に狙われたのだ。
しかし、火炎の国が科学発展に力を入れられたのは、すぐ近くに熾火の国があるからだ。
熾火の国は火炎と真逆で魔法の開発に力を入れている国である。火の属性は高火力、広範囲を兼ね備えた争いにもってこいである。
このような特徴があるのでこの二国間は他の国よりも1層強い協力関係があった。
モニターの接続準備で3人の作業員が慌ただしく動いていた。
この場には作業員の他にレイと焔それから火炎の国のトップである早炎 斎の3人である。
ちなみに、斎にはレイが御使いであることを説明済みである。
数分でモニターの準備は完了した。
大きなモニターの中にレイも見た事のある2人があらわれた。熾火の国のトップ火野 裕二と
焔の父親である倉橋 業火である。業火は熾火の国の魔法軍総司令官である。
「お久しぶりです。火野さん、倉橋さん」
斎が簡単な挨拶をする
「お久しぶり、手短にいきましょう。どのような状況ですか?」
裕二が単刀直入に話を切り出す。
「こちらで戦える者は殆どやられてしまいました。
しかし、新兵器とその乗組員なら100ほど用意できます」
「倉橋、どう思う?」
「近くに魔王軍の拠点があるのならそちらを叩くのもありだと思います。だが、報告を聞く限りもう一度敵は攻めてくるでしょう。
相手の戦力を考えると陽炎、烽烟を手配しよう」
陽炎とはレイと戦闘をした焔率いる部隊、烽烟は陽炎の兄弟分ともいえる部隊である。
烽烟の戦闘力は軍内でも平均的だが、陽炎はトップクラスこの采配は、魔王七勇士であるメルーシュをレイが追い返したことを踏まえたものである。
業火の作戦は単純なものだった。
メルーシュをレイが相手にし、周りの雑兵を派遣した部隊と火炎の新兵器で相手取るというものだ。
最後に火野がレイのことを全ての国へ伝達するよう頼み通信を終えた。
外に出た二人は別行動することにした。焔が部隊の仲間と合流するために向かって行く。
レイは壁の上に上り景色を眺めていた。
レイは一人不安に駆られていた。魔法自体は思うように扱えるのだ。しかし、彼には魔法戦の経験が足りない。そのために、自身の技を鍛えて魔王の部下となっている者と戦えるのだろうかと思っていたのだ。
「御使い様がこんな所で何してるんだい?」
その声をきっかけにレイの意識は現実に引き戻された。
声をかけてきたのは、長身の女性、美しい緋色の髪を
なびかせ白衣を着ていた。
「景色を見に来ていたんだ。それより貴方は?」
「私の名前は浦濱 奈々美この国の研究機関、煙の責任者だ」
レイも名乗ろうとしたのだが、奈々美は必要ないと首を横にふった。
「零と呼んでもいいと聞いているんだが?」
「ああ、それで構わない。堅苦しいのは嫌いなんだ」
二人はしばらく世間話(と言ってもレイがこの世界について教えて貰っていることが殆どだが)をしていた。
突然警報がながれた
「2km先に魔王軍の本隊を確認、至急戦闘準備を整えてください。繰り返します」
「おっと、もうそんな所まで来ていたのか」
これは奈々美のセリフ。敵の侵攻が予想よりも早く驚くのではなくむしろその行動力に関心しているようだった。
「俺は焔たちと合流してくる。ありがとういい気晴らしになったよ」
レイは壁上から飛び降り門に向かった。
「お互い様だよ」
奈々美は森からゾロゾロ出てくるモンスター達を眺めて呟いた。
彼女も自身の兵器がどこまでモンスターに太刀打ちできるのか不安になっていたのだ。
「主任、またこちらにいらしていたのですか」
彼女の秘書を務めている女性が声をかけた。
「もうすぐ争いが始まるというのに貴方が指揮を取らないでどうするんですか」
呆れた口調で話しかけてくる秘書に、すぐ行くと返事をし急いで司令室へと向かった。
門の前には既に焔と他の隊員達が揃っていた。
焔から はい と言って渡されたものは小型の物体
レイの顔に?の文字が浮かび上がる。
「それはインカムって言って通信ができるの。
こうやって耳につけて」
焔に促されレイもインカムをつけた。
「これから各自立ち回りを指示する。全員聞こえているか?」
突破耳元から奈々美の声が聞こえた。
「先程連絡が入り熾火の国でも同時にモンスターが進行してきたそうだ。向こうは統率が取れて居ないそうだからおそらく援軍をこさせないためのものだろう。
今回は今ここにいる我々だけで自体に対処しなければならない」
全員の気が一気に引き締まる。
自分たち一人一人の働きに全てがかかっていると言われたからだ。未熟な兵士ならここで緊張していたかもしれない。しかし、そんな者は1人もいなかった。
それはレイも例外では無い。自分がなんのためにここにいるのかを自覚しているのでこのような状況程度で彼の心は乱れなかった。
「敵の軍陣はざっくり言うと大量の歩兵とドラゴンとガーゴイルだ。空中からも攻めてくるつもりだろうがこちらは数が少ない烽烟は壁の上に登ってこれらを対処してもらう。陽炎とルドラの部隊は敵の歩兵を殲滅を」
ルドラとは機械兵器のの名前だ。奈々美から聞いた話の中にレイの世界とこの世界には同じ神様が伝わっているとわかった。
ルドラとはその破壊力からインド神話の暴風雨の神からとってつけられた名前である。
「そして、零には敵将であり魔王七勇士のメルーシュを倒してもらう。皆、こちら側で合図をしたら開戦だ」
話が終わった直後、ドォンという音が後方から聞こえた。上空を眺めると飛翔体が敵陣に向けて突っ込んでいる。そして再びものすごい爆発音がした。
「作戦開始!!」
インカムからながれた合図で戦の火蓋が切られた。
間が空いてしまいすいませんでした。
今回の豆知識
「曇っている日(気温の低い日)はチューリップの花は閉じている」
ありがとうございました。これからも引き続き読んでいただけると幸いです。