レイと少女
レイは町で1番大きなビルの(50階建てである)最上階に連れてこられた。
いかにも会議室という雰囲気の場所ではあった。
部屋の中心に大きな机がありレイは窓側の席に座るよう案内された。
案内をしてくれたのは、カッターシャツにタイトスカートの真面目そうな女性だった。
レイの質問(といっても彼はトイレの場所を聞いただけだ)や座る席への案内は はっきりとした口調で行うが、余計なことは何も口にしない人だった。
席に案内されてから、数分後、3人が部屋に入ってきた。1人は白髪頭で60後半程度に見える男性。
残り2人はレイに向かっていきなり謝罪をした男性と若者を率いていた少女だった。
レイにとって3人とも(特に少女)があおい顔をしているのは不思議な光景である。
「御使い様、この度は御無礼を働き申し訳ありませんでした」
最初に話しを切り出したのは、レイから見て左に座った白髪頭の男性。
「俺に攻撃したことなら気にしないでくれ。
いきなり得体のしれないやつが目の前に現れたんだ。」
お互いに無傷だったのだからと続ける。
「寛大なお言葉、ありがとうございます」
決まりきった定型文を老人が述べると3人の顔から不安が無くなっていくように感じられた。
「ところで何故俺を御使いと呼ぶんだ?」
最初から気になっていた事を尋ねてみる。
「この地に住む人間たちの言い伝えのようなものです。
はるか昔この世界は全ての人々が協力し生きていました。しかし、そこに魔王を名乗る者が多数の魔物を引き連れて現れました。その頃はまだ魔法が発達しておらず魔王により世界はあっさりと征服されてしまいました。
その結果、今のように、魔法属性が同じもの達がそれぞれ集まり国を作り生き残るために日々努力しているのです。
最初は皆協力しようとしていました。しかし、使える土地の縮小により収穫できる作物の減少、国を繋ぐ道では魔物が出現するということもありしばらくして国ごとに独自の生活を作り上げることとなったのです」
ここまでいい終わり老人は「失礼」と一言断りを入れペットボトルを取り出し水を飲んだ。
「そして国が分裂する前に当時の巫女様がこう予言されました。 我らが本当に絶滅の危機に追い込まれたとき、天から御使いが現れ世界をひとつに導くだろうと」
なるほど、と納得しているレイに今度は真ん中に座った男性が話を続けた。
「分裂時作られた国は50近く同じ魔法属性の国もいくらかはありました。しかし現在の数は18同じ魔法属性(属性は火、水、風、土、雷、光)の国が2つずつと違う属性の魔法を扱う二国の間に残った小さな国が統合したものが1つずつです」
状況説明を始めた時点で遠回しに助けてくれと言っているようなものなのだが3人は頭を下げてお願いしますと頼んできた。
そのために来たレイに迷いは無く即答した。
協力は惜しまないのでなんでも言ってくれと言われたのでとりあえず御使いではなく、レイと呼ぶように頼んだ。すると男性2人は慌てて
「申し遅れました。私の名は火野 裕二申します。」そのまま裕二と名乗った老人が隣の
男性を倉橋 業火少女を倉橋 焔と紹介する。
レイはまず町をみて歩くことにした。
建物の外に出ると、町では既に御使いが救いに来てくれた。という噂が広まっており、その姿をひと目見ようと多くの人がレイの周りに群がっていた。
皆、期待と尊敬の眼差しでレイを見つめている。
レイとしてはしばらくリクエスト(握手や写真、中には赤ん坊を抱いてやってくれというものもいた)に応えても良かったのだが、ご迷惑になるだろうと火野が言い聞かせ解散させた。
火野の後ろには焔がボードを持って立っていた。
焔は町を案内するということで先程の席にも呼ばれていたのだ。
焔はついてきてください。とだけ言ってボードに乗る。
するとボードが10cmほど上昇する。
レイが飛行魔法を発動したのを確認し、焔は路上にボードを滑らせた。
戦闘を仕掛けた後ということもあってか気まずい雰囲気が漂っている。
「飛行魔法は難しいんじゃなかったのか?」
場を和ませるため、レイは戦闘中の発言に基づき先程から疑問に思っていた事を尋ねてみた
「私が乗っているボードによるアシストのおかげです。
本来、無属性の魔法は高度な訓練を積んだ者しか扱えません。しかし、数年前に全ての国の科学者が協力し作り上げたのが、こういった補助具です。」
開発される前は自動車が走っていたんですよ。と続ける焔の口調は随分と事務的だった。
「渾身の大技が防がれたのがショックなのか?」
レイは自惚れ屋ではない。自身を御使いと知って緊張しているわけではないことくらい理解している。
「そんなんじゃない!!」
反応はすぐに帰ってきた。
焔が勢いよく振り返り精一杯反論する。
先程までの口調ではなくなり、頬は赤くなっている。
図星だったようだ。そう考えていると
「きゃぁ!!」
振り向いたことにより焔は体勢を崩した。
時速60キロ程で走っているのだ。このまま地面と衝突すればタダで済むはずがない。
しかし、そうなることはなかった。
焔が倒れている方向へレイが素早く回り込む。
そのまま抱えあげるとお姫様だっこの形になった。
制御者を失ったボードはそのまま地面を転がり破損してしまった。
「ありがと・・・」
歯切れの悪い口調で先程よりもさらに赤くなる焔。
「気にするな」と返しボードに目をやる。
もう使い物にはならないがこのまま放置する訳にもいかない。残骸を焔に持たせ、そのままの状態で飛行魔法を再発動し移動を再開した。
目的地に着くまで焔は経路以外のことは一言も発さず。大人しくレイに抱かれていた。
先程までとは違い気まずい雰囲気は無くなっていた。
今回は少し微妙なところで終わってしまいすいませんでした。出来ればもっと良いところまで書いて終わりたかったのですが。長くなり、投稿が遅くなると判断したためこのような終わり方となりました。
今回は説明部分が多くなってしまいましたがお楽しみいただけたでしょうか?
良ければブックマーク、評価、感想などしてくださると幸いです。