ダンス男子ダシンンク女子
「ねえ、大橋君。ダンス得意なんでしょ私に教えてくれないかな?」
「え?」
突然、クラスで一、二位を争うような美少女、古川結衣に声を掛けられ僕は舞い上がった。
「あ、あの、その、えーと、ぼ、僕はダンスのう、上手くないです。」
「でも去年の文化祭上手く踊ってたよね」
去年、ウチのクラスの出し物はダンスパフォーマンスだった。そこそこ人が見に来てくれてそこそこ盛り上がったのは覚えている。僕はセンターではなく地味に隅っこで踊っていた。
「僕、あの時のセンターじゃないよ。隅っこにいたし、センターの中里、紹介しようか?」
「知ってる。なんで中里君がセンターで大橋君が隅っこだったの?」
ドキッとした。僕がセンターじゃない理由。目立ちたくないからです。打ち合わせの時、桃華と口裏を合わせて二人で目立たない位地で踊ることにしたのだ。
古川さんは僕がダンスを上手いことを知ってる。それはそれで少し困った。
「中里の方がカッコいいからだよ。僕はダンスも上手くないから」
「どうしてそんなに謙遜するの?あの中でずば抜けて上手かったよ。」
よく見てもらえて嬉しいぞ。上手いのを隠して踊る身としては、隠しきれていないので失敗だけど。古川にダンスを教わりたい理由を聞いてみた。
「どうしてそんなにダンスを覚えたいの?」
「それはね。そ、そう、ダイエットのためよ」
どうも嘘をついている感じかする。そのプロポーションでダイエットとか刺されちゃうよ。それでも話だけは聞く。
「ダイエットね。同性の方がいいでしょ。西野紹介するよ」
「桃華ちゃんか。あの時の桃華ちゃんもずば抜けて上手かったからね。.....大橋君、桃華ちゃんと付き合ってたりする?」
「いや、腐れ縁ではあるけと」
「え?桃華ちゃんとは高校で出会ったんじゃないの?」
ヤバイ。失言。同じ学校になったのは高校生からだが、親同士の付き合っで小学校からの知人だ。これは幼馴染みって言っていいのかな?
「そうそう。高校生からの出会いなんだけど入ってすぐに目つけられさ」
「そうなんだ」
誤魔化せれたかな?そう言えば、古川さんとは小中と同じ学校だった。クラス替えで二三度は同じクラスになったっけ。僕と古川さんも互いこの人いたな~ぐらいの認識はあるかも知れない。
「あ、桃華」
タイミングよく桃華が通りかかる。思わす声をかける。あんにゃろう無視しやがった。
「大橋君って桃華ちゃんのこと下の名前で呼ぶんだね」
古川がにっこりして話しかけて来た。しまった。油断していつものくせが出てしまった。訂正して。
「あの西野さん」
「なんですか?大橋君」
今度は反応してくれた。
「あの、古川さんがダイエットのためにダンス教えて欲しいだって」
古川が桃華に対し頭を下げる。
「大橋君ちょっと」
何故か僕が桃華に呼ばれた。隅っこで小声会談がはじまる。
(ちょっと、ちょっと。結衣とどういう関係なの?)
(なんの関係もないな。去年のダンスで興味を持ったらしい)
(あんたはじっこだったよね。)
(そうなんだよ。そこ不思議なんだよ)
「あのーお二人中が良いらしいでさけど仲間ハズレは寂しいです」
「「うお」」
古川の乱入に二人で驚く。すぐに桃華は復帰し何事もなかったように古川から話を聞く。
「コホン。結衣は私にダンス教わりたいの?」
「ちょっと違います。出来れば大橋君がいいです」
「だって長門。あと宜しく」
おい、待て。慌てて桃華の腕を掴む。結論速いから。
「ほら古川さん。異性だとダイエットは色々考るし、同性の方が良いって」
「大橋君はダイエット最中に異性の何を想像するんですか?」
うぉ。ぐっさりナイフが刺さったような質問が来た。そりゃね。見えそうで見えないとことかさ。隣で笑いをこらえてる奴がいる。
「結衣わかったわ。一緒にダンスしましょう」
「桃華ちゃんいいの?有り難う」
二人は仲良く何処へ消えしまった。コレって出しに使われたってこたかな。二人とも始めから仲良さそうだったからな。どっーと冷や汗がでる。疲れた。
「長門、今日は?」
放課後いつものように桃華に声をかけられる。
「そうだな大会も近いし行くよ」
「そうこなくっちゃ。頼りにしてるよ。パートナー様」
桃華と共に彼女家へ向かう。
「その後、古川はどうなった?」
「今日からウチに来るよ」
「良かったのか?」
桃華はダンスのことを秘密にしたい素振りだっので方針転換に驚く。
「いいんじゃない。今日見学。踊る気持ちがあれば体験談もしてもらうよ」
「僕は行かない方が都合よくないか?」
「ダメです。エサは必ず来て下さい。魚が食いつかないでしょ」
僕は魚のエサらしい。スタジオに入り、動き易い格好へ着替える。僕に釣られたマダム達と挨拶を交わしながら桃華を待つ。軽く体をほぐすと桃華も着替えスタジオに入って来た。
「今日は?」
「5曲通し時間いっぱい」
「嘘。死ぬ」
基本、僕には拒否権はない。桃華がやりたいと言えばトコトン付き合う。こうなって来ると桃華は周りを見れない。僕も余裕が無くなりついて行くのに必死だ。時間いっぱい振り回される。古川さんは見学へ来たのだろうか?
次の日、学校へ行くと結衣が僕の席で待ち構えていた。
「大橋君。やっぱりダンス上手いだよね。鳥肌立っちゃった」
どうやら見学には来ていたようだ。アレを見られたのか恥ずかしいな。
「い、いや、そ、その」
「桃華ちゃんと付き合い長いの?」
「まあ」
「嘘つきだよね。卑怯だよ。私も幼稚園から大橋君のこと知ってるのに、ずーと秘密だったなんて」
はい、その通りです。僕がスタジオいれば驚くよね。
「ごめん」
「私の決めました!桃華ちゃんから大橋君のこと奪います!」
なにやら高らかに宣言されてしまった。僕にモテ期到来か?彼女の言葉は続く。
「桃華ちゃん見たいに上手くなるから社交ダンス私にも教えて」
そっちか!残念。愛の告白だと思ってしまったじゃないか!びっくりびっくり。僕もダンスについて真面目に答えよう。
「桃華は小学生からやっているからレベル高いよ。あれを越えるのは至難の技だ。古川さんが努力するなら強力は惜しまないよ」
「ありがとう、がんばる。それじゃお昼休みに教えて」
「学校校内で?」
「お願いします。お礼にお弁当作ってきます」
「わかった。じゃ明日から屋上で練習しよう」
「今日からお願いします」
「今日から?わかったよ。いいよ今日からね」
その日の昼休み。購買部でパンを買い屋上へ上がった。古川さんはまだ来ていないようだ。一人でパンにかじりつく。しばらく待つと彼女はイケメン男子と共にやって来た。
告白のイベントだろう。顔を合わせてしまったため、邪魔者は素早く退場することにする。校内へ戻ろうとした時彼女から恐ろしい言葉が発っせられた。
「大橋君。すぐに終わるので待っていてください」
彼女と一瞬にやって来た男は何も言わす、悔しそうに校内へ戻って行った。
「彼と話があったんじゃないの?」
「私には無かったんですけど。急に気持ちが変わったようですね。なんででしょう?」
彼女は笑顔で答えた。ひょっとして利用された?
「では先生。宜しくお願いします」
「基礎の基礎を教えてます。まずステップ」
彼女と共に足を動かず。ステップ練習だけて昼休みは終わってしまう。ふたりで教室へ戻る。クラスメイトから何故か注目を集めていた。
「長門。何したの?」
放課後いつものように桃華が業務連絡へやって来る。今回は少しばかり言葉が違う。
「何もしてないけど」
「そう?ならいいけど。私の周りの友達もよそよそしくてさ」
「気にすることはないさ」
「そうだね。今日は?」
「もちろん行く。」
今日また彼女と共に彼女の家へ向かう。この時まだ僕は気付いていなかった。僕を含めた三人がクラス全体の興味の対象となっていることを。
「で、今日は?」
「昨日、散々やったから軽く流す。結衣も来るだろうし」
軽く準備運動をしていると結衣の姿が見えた。彼女もこちらに気付き手を降って来た。僕も手を降り返す。
「何やってるかな~?」
「古川さんが来たから挨拶をした。」
「来てたね。でも派手に出迎い過ぎ。ステップ。ステップ」
「へーい」
ダンス練習へ戻る。桃華は嬉しそうだ。
「桃華、大橋君」
教室の先生に呼ばれる。これは古川さんの練習パートナーの依頼かな?
「紹介します。今日入会した古川結衣さんです。二人のクラスメイトですね。がんばって教えてあげてね」
「古川です。宜しくお願いします」
「結衣いこう」
挨拶をそこそこに桃は結衣を連れて行ってしまった。彼女達は二人でステップ練習を始めていた。僕は置いてきぼり。マダム達の相手をさせられてしまった。
次の日、教室へ入ると騒がしく雑談していたクラスメイト達の口が突然が止まり静かになった。皆、僕の様子をチラチラ伺っている。
(何だこれ?)
「おはよう」
足腰をフラフラさせながら古川さんが入ってくる。
「どうした?」
「筋肉痛」
「大橋君、あのほど動いて平気なの?」
「まあ、慣れだな。がんばれ」
激務の言葉をかける。そこに桃華も教室へ入ってくる。いつも朝はスルーする彼女だか今日に限って僕の机までやって来た。
「結衣大丈夫?昨日少しやり過ぎって反省してるんだ」
「大丈夫。運動不足がモロに出てるだけだから」
「無理しないでね」
桃華は古川さんにそう伝えると自分の席へ戻って行った。古川さんもプルプル震える足を頑張って支え自分の席戻って行った。
二人が離れたところにお調子者の中里がやって来た。クラス1の社交家だ。
「なあ、大橋。お前どっちと付き合うんだ?」
「何のことだ?」
「噂になってるぜ」
「主語を話せ」
「お前に古川さんが告白したとか、お前が西野が隠れて付き合っていているとか。二人の間か修羅場なったとか。どの情報がホントなんだ?」
「は?」
この状況が周りから見るとクラスの二大美少女が僕を奪いあっているように見えたらしい。それを聞き僕は驚いた。
「残念ながらどちらとも付き合ってない」
「嘘だろ?」
彼女達が争っているのは僕の彼女の立場でなく、ダンスのパートナーなのだから。
息抜き作品です




