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拾七話
○灯影の鯨
今度の曲のテーマは何にしようか。
クラス替えで僕とクラスが同じになったときに僕に言ってくれたあの言葉か。
体育祭の後、片付けの時に呟いていたあの言葉か。
帰り道、火事になっている家の前を通りかかった時にひっそりと唱えていたあの言葉か。
朦罵。君は可哀想な人だ。
今という時間を味わうことができず、一生未来に怯えている。
だから君は、一刻も未来を閉ざしたいんだろう?
君が忌避する退屈とは程遠いような______劇的な死を遂げて、輝きたいんだろう?
そんな夢を見て、やりきれない思いを胸に抱いて日々を過ごしている。
僕は______知らぬ間に脳にこびりついた君の言葉を洗ってる。
電子の音楽に想いを乗せて。




