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龍令

○白春砂



海が荒れ狂い、大地が裂け、雷が穿たれる。

止む気配の無い地鳴りを感じながら、私は腰を落ち着けようと公園のベンチに_________吹き飛んでいってしまった。元々この公園は遊具の改装も数年されてないみたいだし、当然かな。


私自身、身を引き裂こうと吹き付ける風に現在進行形で抗っている。


「いやー、今回もだめだったか……あはは」


自然と笑みが溢れてしまう。

失敗はこれでもう数百回は経験しているはずだが、結果が失敗と分かって笑うのは初めてだ。いつもなら、蹲ってえずくか、狂って叫び続けるかのどちらかだ。


「これでもう終わりって、決めてたもんね......」


そう。最後の一回にすると、決めたのだ。

この一回で成功しなければ、諦めると。


"龍令"。忌々しき災厄。


止めようとした。私の理想とする形で。

だがそんなものは幼稚な想像でしかなかった。


それを数百回のループで思い知らされた。


「こんな気持ちだったんだね......真衣......」


今、一度だけ叶うならあなたに会いたい。

誰よりもあなたに会いたいと願っている自信がある。

あなたの妹より、恋人より、家族より。


風に促されるまま、街を放浪する。


避難勧告は"出した"。

この街に残っている者はいないはずだ。


看板と塗装が剥がされた町中を一人、歩き続ける。

道路と建物と空と海と、視界がグレーで染まり、私を嫐ろうと風雨が激しさを増す。


やがて、海に出る。


こんな田舎街だが、海は綺麗に見渡せる。

でも清潔感も危機感も幸福感もない街。私の嫌いな街。


「......守りたかったんだけどなぁ......」


無意識に己の肩を抱いていたことに気づき、自嘲の笑みを溢す。

私はなんだろう。戦士にでもなっていたつもりなのだろうか。一丁前に傷付いたふりをして。


__________全部、私のせいなのに。


目の前で誰が傷付こうと、誰を傷つけようと。

自分の罪を忘れてループを重ねて、何食わぬ顔をして日々を過ごしていた私が今さら善人の如く振る舞えるか。


浜辺の地面は不安定で、いよいよ私も風に吹き飛ばされるのではないだろうかというほど体の芯が揺れる。


______背後で轟音が鳴り響く。


振り向けば、巨大な、荘厳な、流麗な______


「……ほんと、ムカつく」


"そいつ"に一言くれてやって、私は時間を巻き戻した。


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