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プロローグ

電指神楽でんしかぐら


______________________________


「ねぇ、次の神楽はいつなの?」


紅葉に覆われた小さな神社で、私は巫女である彼女に問いかけた。

神楽というのは神に舞いや歌を奉納する、というものだ。この神社に仕える身である彼女も、今度行われる神楽に向けて歌舞の練習をしている。


「まだ未定だってお父さんが言ってたわ」


「そっかぁ。早く真衣まいの踊り見たいのに」


「ありがと、すーちゃん。私頑張るよ」


そういって、より一層躍りの稽古に励む真衣。

彼女の垂らした髪が宙で躍る度に、私も胸が躍る。

彼女の舞いはこの世の何よりも美しいものだと思った。


「そういえば、最近幽衣ちゃんどうしてる?まだ神社に仕えるのは嫌だって言ってるの?」


「そのことなんだけどね。幽衣には神社の職には就かせないことにしたの。お父さんに頼み込んで、私が一人でこの神社を切り盛りしていくことにしたわ」


「ふーん。そっか。でも、寂しくない?」


「別に平気よ。見物客が一人だけ来てくれるんだし」


そう言って真衣は私にウィンクを打ち放った。


「あっはは。お客さんが一人って結構切くない?」


「そりゃ、この神社の存在を知っている人なんてこの街には私の一族とあなたしかいないもの。こんな山奥で放浪しているあなたみたいな変人は世の中そうそういないわ」


「ひっどいなぁ。今度の神楽来てあげないよ?見物客ゼロ人だよ?神様もきっと唖然としちゃうだろうね」


二人でけらけらクスクスと笑いあった。

それでも、彼女は躍りの稽古を止めることはなかった。


_____結局、私が彼女の舞いを見るのはそれが最後だった。





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