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8話 悪いことをしたらお天道様がみています

 ある日、上尾篤の携帯が鳴った。その電話は大学の後輩である岡本進からだった。


「篤先輩、お久しぶりです。岡本です、覚えていますか?」


 岡本進は上尾篤が大学4年の時にサークルにおいて1年だった後輩で、各学年と仲が良く、大学仲間の橋渡しをするようになっていた。


「おお! 岡本か! 久しぶりだな!確か出版社に入社したんだったよな!」


 上尾篤は、電話越しに聞こえる後輩の声に懐かしさを感じた。


「篤先輩が転勤されてから、どうにかして会えないかと考えてたのですが、仕事で近くに行けそうなんですよ! 今、お城の取材をしていて、そっちに城があるので、企画あげたら通りました!」


 岡本進の嬉しそうな声に上尾篤も嬉しくなる。彼らは仕事の後に落ち合う事を決めた。



「岡本、来てくれて本当に嬉しいよ。前みたいに皆に会うことが出来なくなって少し残念だったんだ」


 上尾篤と岡本進はビールで乾杯した。


「それで皆は元気なのか? 定期的に会ってんだろ?」


 岡本進は少し考える素振りをし、ニンマリと笑いながら上尾篤に話しかけた。


「寺島さんの事、覚えてますか?」


 上尾篤は当然覚えていた。寺島新一は1学年下のリーダーだった。運動神経抜群でサークルでも人気があり、サークル内で猛アピールしてきた娘に根負けして付き合い、卒業後すぐに結婚したはずだ。最後に会った時は3人目の子供が生まれると言っていた。


 岡本進の話し方には癖があり、こういう時は返事をするよりも促す方がより情報を提供してくれることを上尾篤は知っていた。上尾篤はジョッキを傾けながら軽く頷いた。


「離婚しましたよ、あの二人」


 上尾篤は思わずビールを吹き出しかけた。岡本進はしてやったりという顔で笑った。


「ウソだろ? 何で?」


 上尾篤は、吹き出しかけたビールを落ち着いて飲み込んで言った。


「浮気が原因って本人から聞きました」


 寺島夫婦は仲が良かった。周りからは奥さんの性格がきつかったので大丈夫かと心配していたが、喧嘩したといった話もなかった。

 

「新一……あいつ、なんで浮気なんか……」


 上尾篤は、寺島新一がモテることは分かっていたが不誠実な事をした事はなかったので、思わず呟いた。


「先輩、勘違いしてません? 浮気をしたのは嫁のほうですよ」


 上尾篤は、何気なく掴んでいた唐揚げを思わず落とした。


「先輩はいつも俺の望むリアクションしてくれるから嬉しいですよ。そうなんです。嫁が浮気してたんです」


 岡本進は、したり顔で続きを話しだした。


「寺島さん、車に乗ってるときにガソリンの減りが早いことが気になったみたいなんですよ。それでね、車ディーラーの所に行って確認したんです。最近の車は盗難防止用にGPS積んでるんですよ。知ってました?」


 上尾篤は黙って首を横に振った。


「そしたら、嫁は毎週テニスをしてたみたいなんですが、レッスン後にそのテニス場から家とは反対方向に進んでいたんですよ。浮気相手の家ですね」


 岡本進は腕時計を指差した。


「当然GPSなので時間が判るわけですよ。いつ出発したかとか……つまり、その間の時間がタップリあれば……わかりますよね?」

 

 上尾篤は頷きながら、寺島新一に対して疑って申し訳ないと心の中で謝った。


「お天道様は見てるとは言っものですね。でも、この話には続きがあるんですよ。実は浮気は結婚前からだって話です」


 上尾篤の驚きの顔を見た岡本進は、満足そうに話を終わらせ、他のサークルメンバーの話を始めだした。上尾篤は夫婦ってなんなんだろうと楽しそうに話を続ける岡本進を見ながら考えてた。



「洋子さん、寺島の事覚えてるかい?」


 上尾洋子は単身赴任先から帰ってきた夫の言葉で記憶をたどった。


「篤さんの後輩で合ってる?」


 夫が続けた話によると寺島夫妻は離婚したとの事だった。


「あのお嫁さんなら、なんとなく分かるわ」


 上尾洋子は素直に言った。夫は驚いた顔をしていた。続けて上尾洋子は夫に訪ねた。


「篤さんは浮気するの? 女の子がいる店にも行くのでしょう?」


 夫は困った顔をして、上尾洋子に答える。


「それは、仕事に必要なら行くよ。でも、お金がかかるから嵌ったりしないな」


 あまりにも正直に言いながらキスをしてくる夫を感じながら、上尾洋子は夫の浮気の心配はないと思った。


 こうして、結婚記念日6年目の年は過ぎていった。

 

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