オワリ
俺はいてもたってもいられずに部屋を歩き回る――
どうすればいいのか分からない……。
ただ分かる事と言えば……俺は恐らく今日中に死ぬと言う事だ。
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
着信音が流れ、すぐに電話に出る。
「…………」
「一体誰なんだ? 何でみんなを殺した?」
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
「クソッ! 言葉が通じないのかよ! お前は一体誰なんだ!」
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
俺は電話を切り、スマホをベッドに放り投げ椅子にもたれ掛かり頭を抱える。
「どうしろってんだ……」
テレビをつけチャンネルを色々変えるが、特に気分を晴らすようなものは無い。
苛立ちと恐怖心が時間が経過するにつれ、ただひたすらに積もる。
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
「いい加減にしろ!」
俺は立ち上がりスマホの着信音に怒りを露わにする。
だが、携帯は鳴りやまない――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
その瞬間だった。
「――――ッ」
目に異常な痛みを覚え、俺はその場に崩れ込む。
目が開かない……。
「クソッ、何だこれ……」
俺が錯乱していると――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
右側から死んだはずの大吾の声で歌が聞こえてきた。
「大吾! そこにいるのか?」
俺は右手を振り回すが何もない。
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
次は左側から死んだはずの理沙の声で歌が聞こえてきた。
「一体何なんだ……」
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
今度は右後ろから死んだはずの理沙の声で歌が聞こえてきた。
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
同じように左後ろから死んだはずの啓一の声で歌が聞こえてきた。
「クソックソッ! 死にたくない!」
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
後ろから知らない女性の声で歌が聞こえてきた――
「誰なんだ、お前は一体誰なんだ!」
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
「クソッ、いい加減にしろ!」
「…………ハズレ……」
その瞬間、俺は体中に痛みが走り体が床に崩れ落ちる。
なんだか身体が冷たくなっていく……そして、声が聞こえる――悲鳴だ。
母さんの悲鳴だ。
だが、その悲鳴も段々と遠くなっていく……。
ああ……俺……死ぬんだ…………。
そんな事を思いながら、みんなと過ごした時間を思い出す。
ボウリングに行ったり、カラオケに行ったり――五人で色々遊んだっけ……。
そんな中、みんなの声が聞こえる。
「早くこっちに来いよ。かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
「ああ、今行くよ……」
次は誰のスマホに電話が掛かるのだろうか?
そんな事をふと思ったがすぐに気にならなくなった。
そして――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
オレモ、コノ歌ヲ、クチズサム――
「カーゴメ、カゴメ。カーゴノ中ノ鳥ハー、イーツイーツデーヤール。夜明ケノ晩ニ、鶴ト亀ガスーベッタ。後ロノ正面ダーアレ」
ツギハ、ダレニ歌ッテアゲヨウカナ?