アト2タリ
夜、啓一に電話を掛けたが電話には出なかった。
朝になりまた電話を掛ける――
三回目にやっと啓一と繋がった。
「何だよ……」
「大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろ……」
「電話には出たか?」
「出るわけないだろ……出るから死ぬんだ! きっとそうだ!」
「ああ……そうだな……」
根拠のない考えだ。
だが、そうでも考えないと恐怖心が消えない……いや、実際にはどんな事を考えても恐怖心は消えないだろう……。
「とにかく気をつけろよ……」
「あ、ああ……」
安否を確認した後、適当に相槌を求める。
沙知、理沙の件を見ても死からは逃れられない……そして啓一が死ねば次は俺の番だろう…………。
啓一で止まればいいのだが……。
「朝よ! はやく食べに下りてきなさい」
「そんな気分じゃないからいらないよ」
階下の母親にそう言うが、事情を察していないのですぐにまた呼ばれる。
仕方なく朝食を食べようと一階に下り、椅子に座り朝食を食べようとするが、食事が喉を通らない――当たり前だ。
昨日の理沙と沙知の死を目の辺りにいてるのだから……。
仕方なく牛乳だけ飲み干し学校へ向かうふりをする。
その途中、寺がある事に気付いた。
昔からある古い寺だ。
「もしかしたら厄払いとかで――」
藁にもすがる想いで俺は急いで階段を駆け上がる。
そして寺の住職の所まで行き、事情を説明した。
だが、住職は笑いながら――
「そんな噂に惑わされてはいけませんよ。何か理由があって自殺したんでしょう」
そんな事を諭される……なら沙知の死は? 理沙も大吾も自殺なんてするような奴じゃない……。
俺は諦め啓一の家に行こうとするが、昨日の沙知の件が頭から離れず足が止まる。
何処に行くもなく――ただ漠然と歩を進める。
行きついた先は河川敷だった。
その時、着信音が鳴る――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
「なんで……」
俺は急いで啓一の家へと向かう。
啓一の家では警察や救急隊が来ていた。
啓一のおばさんが玄関先で泣き崩れている。
俺は啓一の部屋の窓を見て状況を理解した――
窓には血がべっとりとついていたのだ。
沙知の時のように悲惨な事が起きたのだろう。
そんな中、またも――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
俺はスマホを取る事もせず、ただ窓を眺めていた――
家に帰り扉を開けると母さんが俺を見て不思議そうな顔をする。
「早いわね、どうかしたの?」
「うん、ちょっと気分が悪くて……」
「そう、ズル休みじゃないわよね!」
「そんな訳ないだろ?」
こんな他愛もない会話が少しうれしく思った。
部屋に戻りまたも携帯が――
「かーごめ、かごめ。かーごの中の鳥はー、いーついーつでーやーる。夜明けの晩に、鶴と亀がすーべった。後ろの正面だーあれ」
俺は意を決してその電話にでる。
「……アト1トリ」
「お前は誰なんだ? 一体何でみんなを殺したんだ!」
俺は怒鳴るがすぐに切れてしまう。
電話の声は間違いなく啓一の声だった。