渉の超能力
気づくと自分は立ててあるベッドに寝かされていた。手足に鎖を付けられた状態で。映画「デスノート」にもこんなシーンがあった。ミサミサが同じようにベッドに貼り付けられ監視されているシーンだ。あのシーンは...とても好きだがそれが自分となると状況が違ってくる。さっきとは違った広い部屋で目の前には廊下ですれ違ったあのかわいい女性が椅子に足を組んで座っていて、ガタイのいい男数人が自分を取り囲むようにして立っている。こうなってくると不穏な未来しか見えなくなる。
『俺はこれから殺されるのか...?』
『あら、渉くん。起きたのね。そうね...。殺されることはほぼ無いわ。』
不思議な部屋で聞いた女性の声だった。そして、また、不思議と緊張することはない。
『ほぼってなんだ...。ともかく、俺の超能力がなんなのか教えてくれないのか。』
『今からそれについて説明するわ。』
やっとだ。渉は固唾を飲んだ。第1話「能力の発現」から気になっていた自分の超能力がやっと聞ける。ここまで読んでくれた読者諸君もありがとう。気になっていたことだろう。作者からも感謝する。作者のユーモアが炸裂し、雰囲気にのめり込んでいた読者の気持ちを台無しにする。渉はそんな作者を気に留めず、女性の次の言葉を待った。
『あなたの超能力は...超尿力よ。まだ仮称だけど。』
この女の人は滑舌が少し悪いのかな。渉はそう思い聞き直した。
『超能力?』
『いや、超尿力。』
『超能力?』
『いや、超にょう力。』
もしかして、自分の耳が悪いかなと思い、あと数十回聞き直したがどうやら超尿力らしい。なんだそれ。ギャグセン低すぎ。
『とにかく、あなたには超能力者の適性があるようね。殺されることはないわ。安心しなさい。それと、これから実演だから。ここからは私の管轄外よ。頑張ってね、渉くん。』
ためいきのような返事をした渉は、またガタイのいい男に移動を促される。手足の鎖が小さな音を立てて外され、それが部屋に反響した。