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シブサワくん家で午後五時にお茶を  作者: 浦出卓郎
第七章 『仮面』の告白

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第七章 『仮面』の告白(4)

 驚いたことに四人はそのまま校舎に残っていた。車が着くとその周りに駆け寄ってくる。

 「龍、実はね……」と由良が慌てて近付いて来た。

 「一体どうしたんだ、先に帰っててくれてもよかったのに」

 「それが……三年に自殺未遂者が出て」

 「何だって? 誰がだ」

 「日置先輩よ」

 手芸部の日置春菜だ。今現在手芸部は活動していないらしく、部室は閉め切られていた。あのような事件があった後だ。仕方がない。

 「三年の教室で、首を吊ろうとしたの。運良く通りかかった柴田先生が見付けて、助かったのよ。土倉さんがそれを聞いて慌てふためいちゃって、校庭まで下りてきて騒いでいたところを何とか取り押さえたんだけど」由良が言った。

 「柴田先生が?」

 「うん、なんか偶然見かけたらしくって」

また夜の学校を徘徊かよ。怪しげな先生だな。しかし、それで命が助かったのだから、悪口も言っていられない。

 「しかし、驚きだな。いかにも見捨てそうな先生なのに」

 「流石に私でも目の前で首を吊ろうとしてる生徒を見かけたら救いますよー」

 うわっ。

 ビックリした。

 何度目だ。柴田先生がいつの間にか後ろから忍び寄ってきて、ぬっと顔を出したのだ。

 取り敢えず、僕らは保健室に向かうことにした。

 日置先輩は首の周りに赤い縄の痕を痛々しく残して、ベッドの上に寝ていた。

 「取り敢えず、一命は取り留めたさね」と式場先生。「ただ、目が醒めたら病院には連れてっておやり」

 土倉百恵は身体を震えさせて椅子に座っている。

 「土倉、一体何があったんだ?」

 「日置先輩が、私の目の前で……何度も止めたんですが……」とまで言って土倉は黙った。

 「それは辛かっただろうな」と声を掛けてやった。少し前の僕ならそんなことしなかっただろう。

 「伊木先輩があんな姿になって、見ていられなかったんです」

 「だって伊木は自業自得でしょ」と由良は言った。

 土倉は由良をキッと睨み据える。

 「あんな姿! 裸になって飼育小屋の中に入れられているのに、誰も助けようともせず素通りするんです。伊木先輩はこの学校で飼われている猿として扱われているんですっ! 話す言葉は、『天城、片桐、建部』の三つだけ。とても苦しそうな声で仰います。伊木先輩はもう十分罰を受けました。殺された三人も伊木先輩になら本望でしょう。三島先輩が悪いんですっ、日置先輩は伊木先輩の姿を見るのが耐えられなくなって、とうとう、うっ、うわあああああああっ!」

 と言って土倉は泣き始めた。多少大袈裟だと思ったが、幾ら殺人をしでかした伊木先輩でもあのような非人間的な環境に追いやられるのは間違っている。

 校庭の隅にある飼育小屋は何度か通り過ぎたことがあるが、とても臭かった。

 伊木先輩が入るようになってからは幸い行っていないが……。

 「まあ、今日は皆さん帰りなさいなー」柴田先生は出来るだけ穏やかに言ったつもりなのだろうが、かえって不気味さが増している。

 「私は日置先輩を病院まで連れて行きます」

と土倉は言い張る。

 仕方がないので僕らは帰ることになった。

 「確かに三島のやり方はなっちゃいない」

 「そうですわっ! もういい加減声を上げるべきなんですわっ」

 「でも、どうやって?」と矢川。流石に鋭い質問だ。 

 「種村が倒す」とは呟いたものの、ちょっと自信なさげに目線を路上に彷徨わせていた。 ともあれ、目指すのは我が家だ。五人揃って。

 あれっ、なんかおかしいな。

 僕らの家は本来別々のはずだ。

 にも関わらず五人で帰ろうなんて、ついに僕自身が思ってしまった。だが、変な充実感も感じ始めていた。

 

 

 こんな夢を見た。

 今度は子供時代ではなくて、いつも通り僕はベッドの上で眠っていた。

 金縛りって経験あるだろうか。目は覚めているのに、身体は動かせない。

 そんな状態に陥っていた。

 何か綺麗な金色が眼の隅へと垂れ下がってきている。

 煙草の香りもそれと共に感じた。

 三島由綺がベッドに両手を突いて、僕の顔を見下ろしていたのだ。

 とても悲しそうな顔だった。何か大事なものを失ってしまったかのような。

 顔に手が当たるのを感じた。

 撫でられている。動こうにも全く動けない。どうなっているのだろうか。

 顔が下りてくる。その薄い唇の色が見える。口紅すら塗っていない。

 しかし三島はそのまま暫く動きを止めて、僕の眼を見詰めていた。

 接吻キスされる!

 そう思い、ビックリして飛び起きたのだった。

 金縛りの夢。何だかよく分からず変んてこな気分だった。

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