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セロリ ☆

テロリスト集団ダイダイ壊滅に向けて、次の任務を聞く為に、特畜達は談話室に向かう・・・ ※場面がコロコロ切り替わります。談話室→餡、タテガミ、サエズリ、ムギ、セロリ、陸稲、サゴシ。モニタールーム→キャンディ、典巻、マキ、マコ、若葉。各キャラが発言したら、先述の場所にいるとお考えください。説明台詞長めですが、次の話に繋がる回なので、どうかご辛抱ください。

 兵機庁西灯支部家畜棟

 特蓄用談話室


 サゴシ達は、夏と一緒に入室する。

 黒いソファには、既に餡が座っていた。


 四足歩行のサエズリが餡に飛び付く。

 餡は、彼のモフモフした毛並みに顔を埋めた。


 他の特蓄達も、それぞれのソファに座る。

 夏の指示で、サゴシは緑色のソファに座った。


     ◇◆◇


 家畜遠隔管理用モニタールーム


 マコに案内され、典巻が入室した。


「ご無沙汰しています。典巻警部」

 キャンディがキャンデーを舐めながら言った。


「どうぞ、こちらにお座りください」

 キャンディは一段下にある黒い革製チェアを勧めた。

 典巻はのっそりとそれに登った。


 典巻は正面の大型モニターを見る。

 前回は、サゴシの登場で、家畜を見ることが出来なかった。


 七色のソファが円を描くように配置されている。

 そこに家畜と呼ばれている彼らが座っている。


 小型モニターの一つが、サゴシを映す。

 彼は、他の家畜と同じように白い服を着ていた。

 顔色は悪くないように見え、典巻は少し安心した。


「彼らが特蓄・・・。

 こうやって見る限り、とても家畜には見えない」

 典巻は戸惑う気持ちを隠しきれず、声が少し震えた。


「徐々に慣れますわ」

 キャンディは典巻の隣に立った。


「サゴシと会話がしたいんだが、出来るか?」


「申し訳ありませんが、承知致しかねます。

 特畜管理者以外の介入は控えさせていただきますわ」


 キャンディの発言を前に、典巻はただ黙るしかなかった。


「それでは始めましょう。

 マキ、談話室に映像と音声を繋げて」


     ◇◆◇


 挿絵(By みてみん)


 談話室の置かれている薄型テレビの電源が入り、キャンディの姿が映る。


『これより、ダイダイの調査結果報告と、任務の説明をします。セロリ』


 セロリは円の中心辺りに移動した。

 テレビと向かい合うように立つ。


 彼女がスッと右手を上げると、黒い瞳が赤く光りだした。


 照明は暗くなり、室内中央に光が集まりだした。

 浮かび上がったのは、ダイダイのシンボルマーク。

 串刺しにされた灯のと列島が、立体映像として現れた。


「スゲー・・・」

 プロジェクターも使用せず、室内に現れた光の集合体。

 情報の化け能力という未知なる力にサゴシは感嘆した。



 普段、化け能力を目の当たりにしない典巻も目を見開いた。

 モニタールームでは大型モニターを2分割し、監視画面とダイダイマークを表示した。


     ◇◆◇


「調査目的は、テロリスト集団ダイダイの正体を探ることでした。

 しかし、結果は失敗に終わりました。

 理由は、あることが予想されるからです」

 セロリは淡々と説明を始めた。


「うずしお本社ビル襲撃事件他、ダイダイが実行したと思われる事件を全て分析しました。

 しかし、どれも正体の特定までに至りませんでした。

 どの情報も突き止めようとすると、姿を変えたり、消えたり、移動したりしました。

 つまり、何者かが意図的に、情報の操作をしています。

 それも大量の情報を同時に、全く異なる方法で処理しています。

 私は女主人ミストレスに報告し、推測を立てました。


 ダイダイには、情報の化け能力者がいます」



「情報の化け能力者だと?!」

 典巻は思わず声を出した。

 しかし、それは談話室に届いていない。


 驚いたのはマキ達も同じらしく、キャンディだけが無言のままモニターを見つめていた。



「能力者と言っても、実力は私に比べて遥かに劣ります。

 しかし、一般的なプロハッカーやエンジニアでは相手にならないでしょう。

 私が本気を出せば、奴の処理能力を上回ることが出来ます。

 ですが、そうすると能力者の存在をダイダイに知らせてしまいます。

 ミストレスの判断で、正体を掴まれない程度で調査しました」


 セロリはフッと右手を下から上へ振った。

 すると、今度はうずしおの企業マークが現れた。

 渦巻きと魚が描かれた有名なマークだ。


「次に、ダイダイ正体の特定に繋がる手掛かりについて説明します。

 一つは、ダイダイと関連疑惑のある企業。

 もう一つは、実行犯チームです。


 企業の方は、警察公安部が捜査していますので、ここでは簡単に報告します。


 襲撃事件以降、うずしおの株価は著しく下降しています。

 被害者側ではありますが、事件後、様々な噂がマスコミを騒がせています。

 卸業が主体のうずしおは、漁業発展の為に、独自の方法で漁師や市場の支援を行っています。

 その一つが、適切な漁業を行っているか監査し、公表するという事業です。

 事件以降、この事業での収賄疑惑が浮上しています。


 うずしお株価の下降により、競合企業以外でも、上昇した或いはメリットを得た企業が判明しました。

 これがそのリストです」


 立体映像は、うずしおマークから、羅列した企業名に変わった。


「このリストを作ったのは、公安部のシンバル班です。

 わずかな期間で、ここまで調べあげています。

 非常に優秀な捜査班と言えるでしょう」



「これは、ウチの捜査資料じゃないか?!」

 モニターを見ながら、典巻は声を荒立てた。


「だから、何も用意せずにお越しくださいとお話ししたのです」

 キャンディは静かに言った。


「まだ未公開の資料を、しかもわしに無断で・・・!?」


「お許しください。これが彼女のやり方です。

 ただ情報を機械的に収集・分析しているだけ。

 彼女は家畜なのですから」



 典巻の困惑など、談話室には伝わらない。

 セロリは話し続ける。


「ミストレス、この捜査班に伝えてほしいことがあります。

 このリストの中で、優先的に捜査すべきはこの企業です」


 浮かんだ羅列が次々に消え、三つの企業名が残った。


「いずれも、世界各地に拠点を置く、企業売買を得意とする投資関係の企業です。

 この三つは、別のダイダイテロとの関連性も見られます」


『分かったわ。私から公安に報告するわ』

 キャンディは言った。


     ◇◆◇


 談話室では、他の家畜達が、ジッとセロリの話を聞いていた。

 タテガミだけが、少し飽きてきたのか、自分の鬣の先をチリチリ指でいじり始めた。


「もう一つの手掛かりは、うずしお襲撃事件実行犯です」


 セロリが手を降ると、立体映像は企業名から、八人分の顔写真と文字に変わった。


「現在、実行犯は全員、西灯留置場にいます。

 彼らはほぼ毎日、取り調べを受けていますが、有力な情報は得られていません。

 そして、この八人の内、三人が自殺しています」


「マジかよ!?」

 サゴシが思わずソファから立ちあがった。


 しかし、セロリは一瞥もせずに話を続けた。


「自殺の件は、警察内部でも、まだ公表していません。

 公安は現在、実行犯の記憶を見る為の準備をしています。

 対象動物は、襲撃事件のリーダー、ヴァランです」


 八枚あった顔写真の内、一枚だけを残し、他は消えた。

 鋭い目をした雄トラの写真だった。


「取り調べの中で、七人は既に脳を操作されていると、公安は判断しています。

 唯一、支離滅裂な発言もなく、黙秘を続けているのがこのヴァランです。

 三人目の自殺では、かなり警戒していたにも関わらず実行されました。

 このままでは供述を得る前に、全員自滅すると予測し、公安は記憶操作の申請を行いました。

 緊急を要するとして、異例の速さでそれは通り、二日後に実施されることが決定しました」


「だったら、そのまま警察公安に任せて良いんじゃないか?」

 座りなおしたサゴシは言った。


「これは公安も知らない情報ですが、ヴァランの脳には神経破壊装置が仕込まれています」



「何だと!? それでは・・・」

 典巻は言葉を失った。

 ヴァランの記憶操作を進めていたのは彼自身だったのだ。



「事件の数日前に、ヴァランが無許可の脳医療機関で何らかの施術を受けている可能性があります。

 その医療機関の経歴を調べたところ、過去に幾度も記憶テロを行っていることが分かりました」


※この世界では、化け医療の一つの分野として、脳医療がある。

 「記憶操作」「記憶のたね」といった、記憶の抽出・注入を専門とする医療である。

 それを応用し、相手を操ったり、催眠状態にしたりすることもできる。

 記憶テロとは、病院等にいる動物達に対して、一斉に脳医療を施し、記憶を混乱させる行為である。


「この医療機関であれば、化け医者に気付かれにくい装置を取り付けることが可能です。


 この破壊装置は、警察や軍で使用している記憶操作機器に反応する仕組みになっています。

 記憶操作の際、動物の脳を保護し、作業を容易にする為に、脳全体を高レベルの鎮静状態にします。

 それが、破壊装置の発動条件です」


「つまり、公安は有力な情報を得ようとして、逆に自分達の手でそれを潰しちまう訳だ」

 サゴシの発言に、セロリは頷いた。


「私は動物の脳や記憶を見ることができません。

 よって、この情報は推測の域を出ません。

 しかし、これまでのテロと異なり、はっきりとダイダイを名乗り、ビル襲撃を実行した。

 全員が、記憶操作や催眠にかかった状態では、不可能です。

 つまり彼だけは自意識を保ち、ダイダイ上層部と接触しているはずです。

 他メンバーが自殺していくことで、ヴァランの記憶操作をさせるよう促したのです」


「推測である以上、公安も簡単に止めろとは言えない。

 どちらにせよ、装置があるかないか調べるだけでも、脳を鎮静状態にさせるしな」

 サゴシは、足を組み替え、上体を前に出した。

 口元には笑みを浮かべていた。


「脳を鎮静させずに記憶を掘り出すことができるのは、化け能力者だけだ」


     ◇◆◇


『報告は以上です。

 これより、任務の説明をします』

 キャンディが言うと、セロリは青色のソファに戻った。


『明日、サゴシの能力で、ヴァランの記憶からダイダイに関する情報を入手しなさい』


 キャンディの発言に、特畜達はテレビ画面の方を見て、背筋を伸ばした。


「ちょっと待て、少佐。

 ヴァランをここまで運ぶのか?

 それとも、どこか別の場所を用意しているのか?」

 サゴシは尋ねた。


『いいえ、そのような準備はしていません』


「だとすれば、困る。

 俺が特任だった頃の活動内容は大まかに二つだ。

 一つは、催眠や簡易的な記憶操作で敵を騙して、敵地に侵入し情報を得ること。

 もう一つは、別の特任が捕まえた敵の記憶を深部まで探ること。

 

 元帥から情報を得ている少佐なら、ご存知のはずだ。

 他者の記憶を探る時、俺自身は外部情報を認識できなくなる。

 つまり、眠ってしまうんだ。


 奴の記憶を見たけりゃ、ここまで持ってくるんだな」


 サゴシは立ち上がり、テレビに向かって言った。


『サゴシ、貴方は何の為に特畜隊にいるの?』

 キャンディはキャンデーをペロリと舐めた。


『既に脳医療機関へ運ぶことが決まっている動物を、直前に留置所から外に出す訳にはいきません。

 それに、貴方達の存在を目立たせてしまう可能性もあるわ。

 ヴァランの記憶は、その場(・・・)で探るのよ』


「だけど、それじゃあ・・・」


『サゴシ、同じことを何度も言わせないで。

 貴方が身動き取れない間は、特畜達が貴方を守るわ。


 任務の説明は以上です。

 詳細は後ほどたねを配布するので、忘れずに植え付けるように。

 解散!』

 

 テレビ画面はプツリと消えた。

 特畜達は一斉に立ち上がった。


留置所を担当している→警察。ダイダイ事件を捜査・取り調べしている→公安。どちらも警察庁の中にあり、それぞれ役割が異なるだけで、同じ警察です。読者様の世界で言う日本とは、これらの構造・管轄等、色々異なります。ややこしくて申し訳ございません。

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