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思い出の味

料理の描写がとても少ない(ほぼゼロ?)です。ゴメンナサイ。

俺ぁ~盗賊をやってるんだがよぉ、最近こんな事してていいのかと疑問に思っちまってんだ。


俺の親父は、王国の騎士だったらしいんだけどよ、俺がまだ小さな頃に戦の中で討ち死にしちまったらしい。

だから、俺の母ちゃんは、一人で俺を育ててくれたんだ。だから俺は、母ちゃんに恩を返す為に工房で働いてたんだ。


今思えば、あん時が一番順風満帆だったんだよな。

工房では、それなりの役職に就いてたし、結婚して妻と子供もできた。それに、何より母ちゃんに親孝行出来ているのが嬉しかった。

…だがな。そんな幸せも長くは続かなかったんだよ。


あれは唐突にやってきた。ほんっとうに唐突だった。

いつも通りに工房で働いてたら急に「魔物の群れがこっちにやってきたぞ」そんな声が聞こえたんだよ。


一瞬何の事か解らなかった。唖然としていたんだ。

そしたらよ、外からいきなり悲鳴が聞こえてきたんだよ。一つや二つじゃねえ。まさに、阿鼻叫喚だった。それで俺達も逃げなくちゃなんねえって事に気が付いて、工房の外に出たんだ。


外に出てまず見えたのは、魔物の群れと逃げ惑う人達だった。俺も逃げ惑う人達に紛れて魔物の群れから逃げたんだよ。


逃げてる時にな、一匹の魔物が俺の右目辺りを引き裂いたんだよ。一瞬の事だったから俺は構わず逃げたんだ。


そして、魔物の群れが見えなくなるくらいまで逃げてきたんだ。そしたらよ、今までの疲れがどっと出てきたんだ。まあ、最初は右目辺りの痛みからだったな。

俺は安心感から、引き裂かれた右目辺りの事を思い出した。右目辺りの事を意識しだした途端、顔の主に右半分に焼ける様な痛みが訪れた。あまりの痛みに手で顔を押さえたんだ。そしたらな、べとっとした感触がしたんだ。その時は混乱していてよ、なんだっと思って手をみたら、血が着いてたんだよ。それを見たら余計にパニックになってな。痛みと混乱から、おかしくなっちまって、意識を闇に落としたんだ。


それから意識を取り戻した時にはもう日付が変わってたんだよ。そん時にはもう右目は殆ど使い物になんなかったんだよ。


俺は、暫くぼうっとしていたんだがよ。ふと、家族の事がどうなったのか知りたくて、村に戻ったんだよ。


…まあ、地獄絵図だったの一言だけに留めておくか。その地獄絵図の中に俺の妻と子供、母ちゃんもいたんだよなぁ。


そん時、全てを失っちまった。


俺は生き残ったが、家族や母ちゃんがいないのに生きていく意味があるのかと、自問自答する日が多く続いた。当然新しく仕事を探すなんてこともしなかった。まさに廃人そのものだな。そして…そのなれの果てに盗賊に身を落としちまったというわけさ。


まあ、今更止めるわけにもいかねぇ。止めたところで俺が今まで行った悪事や罪は消えるわけじゃねぇ。もう、戻れねぇところまで来ちまったんだよ。


今日も盗賊家業に勤しむしかねぇ。


だけどよ、ここはどこだ?こんな場所来たことねぇ。来たことねぇが、ちょうどあそこに小屋があるな。人がいるかはわからねぇが。行ってみるか。




※─────




「…………だからね」


どうやら人はいるみたいだな。

よし、いっちょ襲撃してやりますか。


「おらぁ、おめぇら死にたくなかったら、金目のものをさっさとよこせ」

俺は盗賊をやってるが金目のものを寄越す奴らなら、命までは奪わねぇ。これは俺のちょっとしたプライドってやつだ。さすがに人の命まで奪っちまえば、俺は人に戻れなくなっちまう。ただし、抵抗したり、殺しにかかってくるやつは気絶させるか、息の根を止めてやったりするが、それは最終手段だ。


この小屋にいるのは、ガキが二人か…。なるべくなら殺したくねぇ。だから、さっさと金目のものを出してくれよと俺は思いながら、持っていた斧を構えて脅し文句を言った。


「おや、いらっしゃいませ」


…おい、今このガキなんつった。いらっしゃいませ、だと。俺が脅しているとわかってないのか。


「俺は、客じゃねぇぞ。いいからさっさと金目のものよこしやがれ」


「まあまあお客さん、とりあえず座ってくださいよ」


俺が再度脅してみたが、このガキ。あくまで俺を客とみているらしい。

これには呆れっちまった。なんだか、馬鹿らしくなってきた。

馬鹿らしく思った俺は、気づくとカウンターの席に腰掛けていた。

…あっちの嬢ちゃんは俺の事を警戒しているが、あれが普通だよな。…でも、恐怖感は感じねぇ。

だが、あのガキが嬢ちゃんに話しをすると、嬢ちゃんまで警戒を緩めちまった。どういうことだ。


すると、ガキが。


「何かお食べになりますか?」


と、聞いてきた。いきなりの事に戸惑った俺は、

「あ…あぁ…」

と返事をした。

返事を聞いたガキが俺の事をジッとみてきたので、なんだと思っていたら。


「お出しするものは、こちらで決めさして頂いても宜しいでしょうか」


と、言ってきたので。

「あぁ…、構わねぇ」

と、言ったら。


「少々お待ちください」


と、おしぼりと冷たい水を出して、奥の方にいっちまった。あのガキがいなくなったところ。あっちの嬢ちゃんが再び俺の事を警戒し始めた。

…あーゆうのが普通なんだよな。あのガキがイレギュラーなんだよな。というかあのガキ、つかみどころがねぇ。





※─────

(駄女神様視点)


その男は突然現れて「金をだせ~」って脅してきました。賊でしょうか?

まあ、私は女神なのでいざとなれば身を守る事ができます。

ですが、優さんは戦う力はあるとは思えません。なので、私は優さんを守れるようにこの賊に警戒をあらわにします。

ですが、当の優さんは何時もののんびりとした調子です。

それどころか、「いらっしゃいませ」とお客さんとしてみているようです。

私が警戒しているのが伝わったのか優さんが私に話しかけてきました。


「大丈夫ですよ。ここで争いごとや他のお客様の迷惑になる行為を行った場合、二度とこの空間に立ち入れない、言わば出入り禁止にしますので争いごとはご遠慮ください」


この言葉を聞いた時、この店に二度と来れなくなるのは嫌だったので、おとなしくしてる事にしました。

…但し、警戒を解きはしませんが──




※─────

(盗賊視点)

暫くするとさっきのガキが戻ってきた。


「おまたせいたしました。当店特製懐かしのポトフでございます」


正直今は物を食う気がねぇ。

全てを失ってからというもの、何食っても味を感じねぇんだよ。どうやら味覚がおかしくなっちまったらしい。

でもまあ、出されたもんだし食うには食うがよぉ。


「んじゃあ、いただきます」


俺は、幼い頃から母ちゃんに食事をする前には、食べ物に感謝しろ。そして、命を頂くのだから「いただきます」は、ちゃんと言え。と、厳しく躾られた。

だから今まで「いただきます」を欠かしたことはねぇ。

これは盗賊になってからも…だ。


ただ、どうせ食べても味なんざ感じねぇだろと半分諦めが入りながら俺はとりあえず一口だけ食べてみることにした。……パクッ。


……っ?!


一口食べた時、衝撃が走った。そして、気づけば俺は涙を流していた。

久しく食事に味を感じていなかったのだがこのポトフは味があったのだ。いや、この味を覚えていたが正しいかもな。それは、味覚がおかしくなって久しく、忘れかけていた母ちゃんの味だった。


そして、子供の頃のことを鮮明に思い出した。


─────

───


「かあちゃん、今日の夕飯な~に~」


「今日はあんたの大好きな母ちゃん特製ポトフだよ」


「やった~」


「すぐできるから座ってまってな」


「うん!」


※~~~~~


「おいし~」


「ふふ…あんたはほんとに美味そうに食うねぇ」


「かあちゃんの料理はおいしいんだもん」


「ごめんねぇ、おまえにも貧しい生活させちまって」


「おれ、かあちゃんと一緒なだけで幸せだよ」


「…っ、おまえはほんっとうにいい子だねぇ」


「かあちゃん、おれおおきくなったらかあちゃんに楽させてあげるね」


「ふふ…ありがとね。でもね、母ちゃんはおまえが幸せであってくれるだけで嬉しいんだよ」


「じゃあ、おれは今幸せだからかあちゃんも幸せなんだね」


「そうだねぇ。母ちゃんは今とっても幸せだよ」


─────

───



「うっ………かあ…ちゃん……」


俺はただ一心に、嗚咽を交えながら匙を動かし、ポトフに貪りついた。これを母ちゃんが見ていたら間違いなく「もっと行儀良く食えないのかい」なんて言うんだろう。だがごめんよ母ちゃん。俺は懐かしい─もう二度と味わうことの出来ないと思っていた─この味を強くかみしめたいんだ。今日だけは許してくれ。


俺が落ち着いた頃には皿の中のポトフはなくなっていた。

…なんだ、もうなくなっちまったのか。

するとガキが尋ねてきた。


「いかがでしたか? 当店のポトフは」


「ああ…とてもうまかったよ。……なんでだろうなぁ、ただ飯を食っただけなのに涙が出るんだよ、……飯ってこんなに…美味かっ…た…んだな」


俺は話しながら、また泣き出してしまった。


「俺にはかあちゃんがいたんだよ。優しいかあちゃんがな……だがよ、俺は盗賊なんかに身を落としちまった。こんな俺を見てかあちゃんはどう思ってるんだろうな。失望してんのかな」


こんなガキに何話してんだろうな。だが俺はそんなこと気にせず話し続けた。

するとガキが、


「たぶん、あなたのお母さんはあなたのことをづっと見守っているとおもいますよ。…それもあなたの言う昔みたいに優しく」


と言ってきた。

だから俺はガキに問い返した。


「そう思うか、ボウズ」


「ええ、親は子供のことは変わらず愛しい存在ですから。

あなたのことをづっと見守ってくれていますよ、きっと」


そう言うとガキは微笑んだ。その微笑みは一瞬ではあったが母ちゃんの微笑んだ顔と面影が似ていた。

そして、ガキのこの言葉に微かな希望が胸に宿った。


「なら、今からでもやり直せるのかなぁ」


「はい。寧ろ人生はこれからですよ」


「……じゃあ、頑張ってみるかな。自分のために。そして、母ちゃんのために」


「はい、それがよろしいかと」


「ありがとな、ボウズ。おかげで一からやり直す決心が出来た。それとお代はいくらだ」


「いいえ、お代は結構です。お客様が元気になって頂ければこちらとしてはそれが充分なお代ですから」


…俺は、このやり取りで一からやり直そうと決意した。そして、席をたち、入口の扉を開きながらガキにこう尋ねた。


「なあボウズ、また迷った時はここに来ていいか?」


「はい。当店は味を変えることなくお客様のまたのご来店をお待ちしております」


その言葉を聞いてから俺は歩き出した。


そして、大分歩いてから振り返るとその小屋は見えなくなり、いつもの森がそこにあるだけだった。


「……もしかしてあそこに導いてくれたのは母ちゃんだったのかい」


俺がそう呟くと優しい風がそっと俺の頬を撫でた──

人物の心情を表現するのが難しいな~と感じる今日この頃。

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