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騎士の忠誠

一話書き終えたので投稿します。

ご意見・ご感想を頂きました。ありがとうございます。


はぁ…私はついシャーレ様の願いを逃げるように断ってしまいました。


ですが私にはシャーレ様のお側に仕える事など許されません。


私はシャーレ様のお父様、つまり前国王様の時から王国騎士として仕えています。


それは、帝国が国境まで侵攻してきた時でした。

帝国軍を退けるため、前国王であられたシャーレ様のお父様、バルゼ様自ら指揮官として戦場にたたれました。バルゼ様は指揮官として数多くの戦場を指揮してきました。それは、軍神とも呼ばれる程、才能に満ち溢れていました。


しかし、軍神と言えども数の暴力の前には意味を成しませんでした。


こちらの兵が5,000なのに対し、帝国は20,000の兵を率いていたのです。


結果など目に見えていました。ですが国のため、ここで退く訳にもいきません。皆決死の覚悟で迎撃にあたりました。


背水の陣ということわざがありますが、あれは本当ですね。こちらの兵は皆鬼神の如き戦いぶりでした。


そんなさなか、指揮をしていたバルゼ様に一人の帝国兵が近づいていました。

私がその事に気づいた時にはもう手遅れでした。

私が見たのは帝国軍の兵がバルゼ様の背中を斬りつけた瞬間でした。

私は即刻その敵方の兵に近づき、ためらいなく切り捨てました。

そして、バルゼ様に近づき容体を確認すると傷は深く、息も絶え絶えといった様子でした。


「バルゼ様、一旦引きましょう」


と私が進言すると、


「嗚呼、皆を連れてそうしてくれ」


許可を頂けました。


「バルゼ様は私がお連れします」


「いや、かまわん」


「何故です、お怪我をなされているではありませんか」


「いやなに、私の傷は相当に深いものなのだろう」


「…っ、え…えぇ」


「やはりな、長くは保たんのだろう」


「ですが今から戻ればまだ間に合うかもしれません」


「それではこの場はどうする。…今退けば帝国の軍が王都に侵攻する、そうなれば国の民に被害が及ぶ。…私にはそちらのほうが悔やまれる。だから私の最後の力、《秘伝》を使う。…あれは最後を飾るに相応しい。だが、味方にも被害が及ぶやもしれん。だからお前は皆を連れ王都に戻れ。これは私の、王としての最後の命令だ」


「…っ、わ…わかりました」


「すまんな、何分生粋の軍人なものでな、机に向かっての政務より戦場の方が自分を出せる。それに、死に場所は戦場と決めていたのでな。…お前には迷惑をかける」


「……ほんとに身勝手ですね」


「さて、そろそろ《秘伝》を使うぞ」


「では、皆を下がらせます」


「……頼んだ」


私は皆を王都にまで撤退させました。

撤退する間際、バルゼ様が最後の力で《秘伝》を発動させました。

バルゼ様の《秘伝》の効果は使用者(バルゼ様)を鬼神と化しますが、代わりに効果が尽きれば使用者の命を刈り取ってしまいます。なのでバルゼ様は自らの命が長く保たないとわかったいま、《秘伝》をお使いになられたのでしょう。


ですが私はこの時、後悔していました。


バルゼ様をお守りする事のできなかった自分の無力さに。


私と兵士達は王都に無事戻りました。

そして、王都の守りを固めました。


しかし、三日経っても帝国の軍は侵攻してきませんでした。なので、私は数名の兵を引き連れてあの戦場に向かいました。

するとそこには、夥しい量の帝国の兵の屍でした。これは全て《秘伝》を使用したバルゼ様が成したことなのでしょう。引き連れてきた兵達も唖然としていました。

私も《秘伝》の効果に驚きましたが、目的は帝国の兵が撤退したかの確認とバルゼ様の亡骸の確認です。

どうやら帝国の兵はバルゼ様に恐れをなして逃げ出したのでしょう。少し遠くに野営の跡地がそのまま残っていました。

そしてバルゼ様の亡骸を確認しました。


バルゼ様がお亡くなりになられた事をシャーレ様にお伝えしました。するとシャーレ様は泣き崩れてしまわれました。私はかける言葉がありませんでした。いえ、言葉をかける資格などありませんでした。

バルゼ様がお望みになったこととはいえ、シャーレ様のお父様を見殺しにしてしまったのですから。


それから国の王にシャーレ様が着くことになりました。

あの時、戦場にいた兵達の多くは兵の職を離れました。私も騎士の職を離れる気でいました。

しかし、シャーレ様は、「お父様が信頼をおいていた、そして私の世話を昔から焼いてくれた貴方には私の側で、私を支えてほしいのです」と仰ってくださいました。


私は国王様をお守りする事が出来ませんでした。そんな私でも、シャーレ様は私の側で支えてほしいと仰ってくださいました。

ですが、シャーレ様のお父様、国王様をお守り出来なかった私に国に仕える資格などありません。私は一度断ってから逃げるようにその場を去りました。


お城から逃げ出してしまった為、今更戻る事など出来るわけがありません。

私はトボトボと歩いていると神秘的な場所につきました。

なんだか心が落ち着く気がします。


おや、あんな所に小屋があります。煙突から煙りが出ているので人はいるのでしょう。それになんだか良い香りがします。グゥ…


そういえば、今日は朝から何も食べていませんでした。丁度お昼頃ですね。それはお腹もすきますよね。…はしたない事だとは思いますが食事をとらせて頂くことなどできないでしょうか。

少々、交渉してみましょうか。


「すみません、どなたかいらっしゃいませんか」


「はい、いらっしゃいませ」


やはり人がいましたか。いたのは良いのですが、見たところ少年ですね。それと、いらっしゃいませと言ってきたのでここは料理店なのでしょうか。しかし…。


「あの、親御さんなどはいらっしゃらないのですか」


見渡してみても、この少年な親御さんに当たる人が見当たりません。気になったのでこの少年に訊いてみることにしました。


「ええ、私一人で営業しておりますが」


すると、驚いた答えが返ってきました。

見たところこの少年は、まだ親と一緒に暮らしているくらいの年齢だと思います。ですがこの少年は親も居らず、街からも離れた人気のない場所に料理店を開いているそうです。

そのあと、私は一人で寂しくないのかと少年に訊いたところ、一人でも時々お客さんが来てくれるので寂しくはないと答え。私が何故このような場所で営業してるのかと理由を訊いたところ、驚きの答えが返ってきました。


どうやらここは心に傷を負った人尚且つ、心の清らか人でないとこれない場所なようです。正確には空間から違うらしいのですが…。しかし特定の条件に合った人だけを転移させる魔法など聞いたことがありません。いえ、空間を転移させるだけでも相当高度なのですが…。

何故そのよな事ができるのか、少年に訊いてみたところ、自分がやっている訳ではないため解らないと答えました。どういうことでしょうか?

先ほどは一人だと答えましたがやはり親がいるのでしょうか。

その事を少年に訊いてみたところ、凄く難しそうな顔になりました。そして、親ではない、親はいない、そして説明が難しいと答えました。

なんだかそれ以上踏み込まない方がいいのだろうと感じました。

それから少年が、とりあえず何か食事しますか?と訊いてきました。

……、そういえば、食事を頂けないかというのが本来の目的でした。私は考える事は置いといて料理を頼むことにしました。


しかし…

「メニューなどは無いのですか?」


(料理店だとすれば)店内を見渡してみてもメニューらしきものが見当たりません。


「なるべくはお客様のご要望にお応えします。それか、私の気まぐれでその日のメニューを決めております」


うーん、特別にこれが好きというものが無いので、

「では、気まぐれの方でお任せします」


「かしこまりました。本日の店主の気まぐれメニューはオムライスになります。少々お待ちください」


オムライスですか。…そういえばオムライスなど子どもの頃に母が作ってくれたものを食べて以来、食べていませんでしたね。私の母はソースにトマトのソースを掛けていました。しかし、ご家庭によってはデミグラスソースを掛けるところもあるようですが、私にとってのオムライスはトマトソースですね。そういえば、母は玉子もふわふわにしたのと固めにしたので好みが分かれると言っていました。ちなみに私は固めにしてた方が好みです。

さて、ここのお店、いえ、あの少年のオムライスはどのようなものなのでしょう。




…しばらく待っていると


「お待たせ致しました。店主流昔ながらのオムライスと取れたて野菜のサラダのセットでございます」


少年が料理を運んできました。

これは偶然なのでしょうか。先ほど私がオムライスの好みについて述べましたが、見た目が母が作ってくれた時のものと同じなのです。私は少年にこのオムライスについて少し訊いてみました。


「あの、店主さんこのオムライスは…」


「こちらのオムライスは家庭の味を意識して作りました。ですので、ごはんはケチャップライスを玉子は固めに焼き、ソースにはケチャップを掛けております」


なるほど、トマトのソースはケチャップっと言うのですね。

さて、それではさっそく一口、


「」パクっ


…っ、何故でしょう一口食べた瞬間懐かしさが溢れてきます。味付けが子どもの頃にお母さんが作ってくれたオムライスの味です。懐かしい味…です。


………

「お母さん、今日のごはんな~に~」


ニコッ「あなたの大好きな、お母さん特製オムライスですよ~」


「わーい、やった~お母さんのオムライスだ~」

………


…っ、今なんだかとても懐かしい光景を見ていたような気がします。


「あの、お、お客様どうかなされましたか」


「…っ」


気が付くと私は瞳から涙が零れていました。


「いえっ、なんだか…懐かしい、光景を…思い出した…様なので」


私には、食には特に好きな物などない、ただ食べられればいい。と思っていましたが、私にも好きな物はちゃんとあったようです。


暫く、この懐かしき味のオムライスを食べながら余韻に浸りましょう。


私がオムライスを食べ終わる頃に少年はコーヒーを淹れてくれました。…なんだか至れり尽くせりですね。


すると、食べ終わるまで話しかけてこなかった少年が話しかけてきました。


「さてと、私としてはここからが本題ですが、お悩みが有るならば私に相談しては頂けませんか」


「えっ、何故私が悩みを抱えていることがわかったのですか」


「最初にここのことを説明した事をお忘れになったのですね…」


「あっ」


そういえば、ここは心が傷付いた人しか来れないのでしね。


「まあ、それだけ料理に満足して頂けたのならばよいのですが…」


あまりに料理が美味しかったもので…


「…すみません」


「あぁ、いえ…こちらこそすみません。それで何か相談事などがあれば相談に乗りますし、話したくない内容であれば話して頂けなくてもかまいません」


「えぇと、私は自分に仕えてほしいという上司の依頼を断ってしまったのですが、どうしても申し訳なさが込み上げてきてしまいます。…ですが私にあの方のお側にいさせて頂く資格などありません。私はどうするべきなのでしょうか。」


「その方についてはどう思われているのですか」


「あの方は今はお若いですが、いずれご立派に皆を統べ、民を導く存在になると思います。そして、出来ることなら一生支えていきたいと…」


「…そうですか。ならば何故悩むのですか?まだ誰かがお側で支える必要があるのてしょう。ならばお側にいて支えてあげればよいではないのですか?」


「…私はその方のお父様をお救いする事が出来ませんでした。そしてその方も悲しみに暮れてしまいました。

私は主君をお救いする事が出来ず、あの方も悲しませてしまいました。

私は騎士失格です。そんな私があの方にお仕えすることなど出来ません」


すると少年は少しの沈黙の後、


「やはり貴方はその方に側でお仕えするべきでしょう」


「…何故でしょうか?」


私は聞き返していました。


「その方は貴方に側にいてほしいのでしょう。誰しも独りで生きていけるほど強い人などいないはずです。貴方だってそうでしょう?貴方はその方に支えてもらった事もあるはずです」


私その時に幼少の頃を思い出していました。

私は昔から父が王国の近衛兵だったため城に入る事もありました。

私が初めて城の中に入った時にシャーレ様と出会いました。歳が同じだった事もありシャーレ様とは一緒に遊ぶ事も多かったのです。そのため、バルゼ様とお会いする事もありました。バルゼ様も私の事を実の娘のように接してくれました。

…そして、父が騎士として王を守り散ったときは、父の勇ましかった姿を、バルゼ様は私に語ってくださいました。本来王であるならば見せてはならないような、部下であった父に敬意を払うように語っていました。

私の母が病に倒れてしまっ私が悲しみに暮れてしまった時にもシャーレ様とバルゼ様は、私の側で優しく慰めてくださいました。


…私はいつもお二人に支えられてきたのですね。




「人は支えあってこそ生きていけます。その中でも特別な存在であるならば、ずっと側で支えてほしくなるものです。その方にとって、特別な人は貴方しかいないのでしょう。それに、自らの父を亡くしてしまったその方にとって心を許せる人は貴方しかいないのです」


「…っ、しかしあの方には支えてくれる人など数多くいるでしょう」


「…その方は貴方に側で仕えてほしいと言って、そしてそれを貴方が断った時、その方はどんな表情をしていましたか」


「えっ、…とても……悲しそうな…顔を…」


「やはり…、ならばその方にとって特別な人は貴方以外いるはずがないのです」


「…」


「それと貴方は誰かに背中を押してもらいたかったのではないですか?本当は自分の中でこうしたいと思っていても罪の意識があり、自分から仕えることが出来なかった。だから、誰かに背中を押してもらうことで決心を付けたかったのでは…」


「それはっ、」


「少々説教じみてしまいました」


「いえ、ありがとうございます。私、決意しました、もう逃げる事は止めます」


「そうですね。逃げていては何も出来ませんから」


「今から、あの方ともう一度仕えさせて頂けるようお願いしてみようと思います」


「はい、いってらっしゃいませ」


「あっ、あとまたこちらに来ても宜しいでしょうか」


「いつでもお待ちしております」


「お代のほうは」


「いえ、結構ですよ。お客様の笑顔で十分ですよ」


「ありがとうございます」


私は自然に笑顔になっていました。

私はもう一度シャーレ様にお仕えするために王都に向かい歩き出しました。

読んでみるとほのぼの成分が少ない事が判明致しました。失礼致しました。

流れが決まったため前半と後半に分けず、一話完結に致しました。但し、テイクアウトだけは別で投稿致します。

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