表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/184

始まりは0歳から


 輪廻転生という物を御存知でしょうか。

 英語で言うならばリーンカーネーション、サンスクリット語で言うところサンサーラ。色々端折って噛み砕いて言うならば、まあ生まれ変わりというものです。こっちの方が分かりやすいですね。

 死んで新たな生を得る。そういった事があったとしたならば、どうしますか。




「だぁ」


 此処まで理解出来ない事は初めてです。


 現状把握の為に放った第一声が、言葉に芯の通らない喃語。思うように声が出ない。

 更には明らかに小さな手に、動かしにくいったらありゃしない体。というか殆ど動かないのですが。自発的には上手く動かせません。


 こうなると、誰だっておかしい事に気付きます。

 だってそうでしょう。今まで大人として人生を歩んで来た自分が、気付いたら赤ん坊に逆行していたら、自分の頭を疑います。言葉が自由に発せられたならば Oh, Jesus!って嘆きたいくらいですよ。


 それにしても、おかしい。

 赤ん坊になったのもおかしいのですけれど、そもそもの話私は死んだ筈なんですよね。

 何てことのない、車に轢かれて事故死。信号無視した車に突撃されて、あっという間に黄泉の世界に旅立った訳です。突然過ぎて死ぬ程痛かった事くらいしか覚えてません。笑えない事に、現に死んでますけど。


 つまりあれですね、私は生まれ変わりというものを果たしたらしいです。


「あなた! リズが笑ったわ!」

「本当か!」


 自由に体が動くのならば、私の頬は盛大に引き攣っていた事でしょう。

 私を抱き上げたのが、どうやら私の両親らしいのですが……二人が、どう考えても、日本人ではなかったから。


 一般的な醜美の観念から言えば美人の部類なカップルなのですが、その髪色や瞳の色からして色々突っ込みたいです。自分の父親が、大阪のおばちゃんもびっくりな、赤色の髪をしているのですから。

 但し人工的なそれではなく、自然で綺麗とすら思える程の深みのある色合い。顔立ちとぴったり合っていて、違和感はないです。


 母親はと言いますと、色素の薄いアイボリーカラー。これはこれで似合っています。まず日本では見られないですが。


「リズ、父さんだぞ~」


 父親らしき人が、紅の瞳を近付けて、これまたでれでれとした表情で頬擦りします。取り敢えず私はこの人の娘……娘ですよね? 息子じゃないですよね? 子供だという事は確定しました。

 どうやら私の名前はリズというそうです。日本人ではない事も確定しましたね。激しく嫌な予感はするものの、まだそれが現実に証拠となって現れていないから何とも言えません。


 第二の父親は爛々と輝く眼差しで私を見詰めて来ます。恐らく、望まれて生まれたのでしょうね、私は。愛されるべく生まれてきたのが、私。

 ……少し両親が可哀想な気もしますけどね。こんな、中身が大人の子供を持って。勿論内密にはしておきますけども。


「おっ、俺の事分かったのか?」

「だぁう」

「セレン、リズは俺の事父さんだって分かってくれたぞ!」

「うちの子は賢い子ね!」


 親バカになるんでしょうね、この人達。現段階で親バカなのもわかりますし。溺愛されそうです、子供らしくしていれば。


 その子供らしくを実行しようと表情を緩めてきゃっきゃと笑うと、これまた両親は幸せそうに笑うのです。

 本当に、愛されて生まれてきた、子供なのでしょう。


 ……なら、私はその愛情に応えてあげたいと思います。例え私という自我の成人年齢が歳食ってても、この人達は私を生んだという事実は変わりません。

 彼等が私の事を大切にしてくれる分、私も彼等を慕う事でしょう。


「それにこの潜在魔力量……この子なら私達の後を継いで宮廷魔導師になるのも夢じゃないわ」


 ……うん、何か明らかに異常な単語が飛び出たような気もしますけど、知りません。私は可愛らしい赤ん坊なのです、そんなファンタジックな事なんか分かりません。知ーらない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ