美貌の旦那様と子供達
結婚して片手では数えられない年月が経過しているのですが、ジルは年齢を重ねる事にどんどんと綺麗になっている気がするのですよね。正しくは、凛々しいというか、ダンディになっているというか。
今ジルは三十路を越しましたが、結婚した当初よりも男性的な魅力に満ちています。
若々しいのは変わらないのですが、落ち着いた美貌というか、兎に角美形だと思います。夫だから贔屓目が入っているかもしれませんが、それでもやっぱり素敵な殿方には変わりありません。
……まあ、社交界では昔よりもモテていらっしゃるので複雑ではありますが、私達の間に入る隙がないので、何ら心配はしていません。
「……なんだい、そんなに私の顔を見て。楽しいかな?」
「楽しいというか、見るのは飽きませんよ。素敵な旦那様だな、と」
「本当にどうしたんだ? ……まあ、褒められるのは嬉しいけどね。そういうリズも美しくなったと思うよ」
ソファで隣り合っていたジルは穏やかに微笑むのです。ついでに私まで褒められてしまいました。
まあジルからすれば多分一番綺麗に見えてるんだろうな、と愛情補正度が高そうな旦那様に苦笑しつつ、でも褒められた事は素直に嬉しいのでジルにくっつきます。
そういえば、セシル君や殿下にも綺麗になった、と前言われました。女性は愛されると綺麗になる、というやつなのでしょうか。母様譲りの顔立ちがあってこそだとは思いますけどね。
……そういう二人は色気が増して半端なく格好よくなってるんですけども。
「ジルもお上手ですね。褒めても何も出ませんよ?」
「そうだね、照れる顔は見れるかもしれないよ?」
「もう。……それくらいで照れたりはしませんよ。今まで沢山あなたから賛辞を送られていますから」
「おや、慣れてしまったかな。……久し振りに照れる顔も見たいのだけどね」
「閨に引きずり込むのは止めてくださいよ」
ユーディットとエミルも居て子育てに忙しいですし、仲良くするのも吝かではありませんが、もう少し落ち着いてからが良いです。決して嫌という訳ではないんですけどね。
今は丁度時間が空いていたルビィが二人の面倒を見てくれているので、こうしてゆったりと過ごせていますが……普段は二人のお世話でてんやわんやです。
少し身構えてしまった私にジルは「子供達で忙しいだろうし、当面はお預けだろう」と朗らかに笑っています。
その笑みが艶っぽくなると大変なのでこの話題はこれくらいにしておきつつ、そういえば、と可愛い子供達を思い浮かべて。
「……ユーディットもエミルも私似ですよね」
「そうだね。ユーディットなんて行動もあなたそっくりだよ」
「……私そんなにおてんばでしたかね」
あの頃の私は寧ろ同年代より落ち着いていた筈、と零すと、ジルは笑って。
「優雅に紅茶や刺繍より土いじりや木登り大好きだったり暴走してお付きの者を振り回すのはリズに似ているよ」
「……それは忘れて下さい」
一体いつの話をしているのですか。そりゃあ小さい頃は木登りとかしましたけど、今はしませんもの。……土いじりはしますけどね。
今は年相応の淑やかさはある筈です。走り回ったりはしませんし、基本は家で子育てしていますから。
からかわないで下さい、と唇を尖らせると、ジルはくすくすと楽しそうに笑って宥めるように口付けを落とします。もう、それでご機嫌がとれると思って。
「いいんだよ、ありのままのリズで。そんなリズが好きだから」
「……それはありがとうございますですけど」
「話は戻るけど、ユーディットを見てるとリズを思い出して微笑ましくなるんだよ。あんな事もあったなあと微笑ましくなるから。作物の品種改良に無自覚で手をつけ始めた時は、リズの再来だと思ったよ」
リズそっくりでどうなるか将来が少し不安だけど、と眉を下げて笑っているジルに、ちょっと嘆息しつつも笑みを浮かべます。
「私達の子なら、何があっても乗り越えられるとは思いますよ」
「……そうだね。ユーディットもエミルも、優秀な子になりそうだし、リズの子だからね」
「ジルの子でもあるので、きっと自分だけではなくて大切なものも守り抜ける子に育ちますよ」
きっと、可愛く、格好よく、強く、優しく育ってくれると思うのです。惜しみなく愛情を注いで健やかに育ってくれたら良いな。さぞ可愛い子に育つ事でしょう。
ジルが格好良いという話から脱線してしまったものの、きっと子供達もジルに負けないくらい素敵な子になるのだと想像すると楽しくて、自然と頬が緩みました。
「ところで、二人ともリズ似だから、私似の子も欲しいな」
「……それは天運任せという事で。……こら、ジル、めっ」
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