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おにいちゃんvs義兄

「せしるくん、あーそーぼー」


 私の可愛い可愛い弟は、何故か義兄であるジルより赤の他人であるセシル君になついています。それは、末弟のミストにも言える事でした。


 ルビィの誘いで我が家にやってきたセシル君。ミストにも挨拶しようとミストの部屋に行ったら、一目見たミストは笑顔で駆け寄ってくるのです。

 きゃー、と笑いながらセシル君の脚にしがみつくミストといったら愛くるしいのなんの。これをジルが見たら笑顔を引きつらせそうですね、自分には攻撃するので。


「こんにちはミスト、元気にしてたか?」

「うん!」


 熱烈な抱擁を受けるセシル君は慣れた手付きでミストの脇を下から持ち上げるようにして高い高い。はしゃぐミストにセシル君も穏やかな笑みを浮かべています。

 ……アデルシャン家の男性陣は皆セシル君大好きというかなんというか。ルビィは言わずもがな、ミストも、そして父様も何だかんだでセシル君お気に入りですからね。


 本当に馴染んでますよねえ、と笑う私にセシル君は視線を感じたらしくちょっと照れ隠しにそっぽ向いています。……今更隠さなくても子供好きなのは知ってますよ?


「セシル君って本当にお兄ちゃん気質ですよね」

「誰がそうさせたんだろうな」

「ルビィですね」

「どの口がそれをほざくか」

「いひゃいー」


 どうやら私の反応がお気に召さなかったセシル君がミストを下ろして頬を引っ張ってきて、抗議するもののミストが「おねーちゃ、へんなかおー」とけらけら笑うから色んな意味でショックです。

 ぼくもぼくも、とせがむミストにセシル君も乗ったのか抱えてミストにまで頬ぐにぐにの刑を試させるから、もうセシル君には紅茶とかお茶請け出さないでやりますもん。……多分ルビィが持ってきますけど。


「何してるの、ミストに姉様」

「……何しているのですか、セシル様」


 噂を(脳内で一人で)すれば、赤い髪をふわふわと揺らしながら紅茶入りのポッドを乗せたトレイを持ったルビィの登場です。ジルも一緒にやってきたらしくて、片手で扉を開け、片手でクッキーの入った皿を持っています。

 この辺りの用意を使用人に任せなかったのは、ルビィの意向とジルの染み付いてしまった従者の癖なのでしょう。


 ミストはジル……の持っているクッキーの載った皿を見て瞳を輝かせて「おやつ!」と嬉しそうに笑うのですが、ミスト、頬引っ張ったままです痛い痛い。


 これにはセシル君も助けに入ってくれて、やんわりミストの手を剥がしつつ抱っこから下ろしてやっています。……最初からつねらせないでくれた方がありがたかったのですよ?


「ありがとうございます二人共。……これはそもそもセシル君が悪いのですよ?」

「何で俺なんだよ。そもそもお前が変な事ぬかすからだろ」

「まあリズですから……」

「ジル、そこで納得しないで下さい。何で染々頷いているのですか。私はセシル君がお兄ちゃん気質だなって言っただけですもん」


 ジル、然り気無く妻に失礼ですからね。私をどんなイメージで見ているのですか。


「それは誰のせいだろうなって言ったんだよ、俺は」

「それは姉様じゃない?」

「ですよね、リズが大半の原因ですよね」

「何でですか!?」


 じ、ジルにルビィまで……! わ、私、そんなにうっかりさんだったのですか? これでもしっかりしていたつもりだったのに……!


「……リズは、慣れるととても甘えん坊でうっかりさんでしたから」

「そうだな。しっかりしてるようで気を許せば甘えてくるしうっかりとんでもないミスを仕出かしたりな。後片付けに走るのは俺達だったりするんだぞ」

「ご、ごめんなさい……」

「そのお陰で俺は色々と後処理が得意になったな」

「……申し訳ありません……」


 ……言われてみればそうですし、私は詰めが甘いらしくて何かしらヘマをしたりする事も多いですし、否定出来ません。


 で、でも、元々セシル君も何だかんだ面倒見良い性格でしたし、子供好きも生来のものだったかと。ルビィの存在もその性格に磨きをかけさせてると思うのです。お兄ちゃん気質に関しては、決して私だけが悪い訳ではない筈。


 私が抜けてるというのはまあ事実でも良いのですが、セシル君のお兄ちゃん気質については元来持っているものでしょう、間違いなく。


「まあ姉様がうっかりなのはいつもの事だとして」


 ルビィ、かなり今の刺さったのですが。


「兄様が面倒見が良いのは本当に思うよ。姉様に聞いた昔の兄様から随分と丸くなってるよね」

「やめろ黒歴史を掘り返すな」

「あの頃はツンツンしてましたよねセシル君。やっぱり丸くなりましたね」

「誰のせいだと思ってる」

「私のせい、ですか? でも、セシル君が優しいのは元からですよ」


 和解したら普通にちょっと素直じゃない男の子でしたし、気遣いとかは見てとれましたから。それに、元から優しさがないとルビィの対応とかも素っ気なくなると思うのです。

 でも、セシル君はルビィに最初から優しかったですし、兄貴分を発揮していたというか、良きお兄ちゃんであろうとしていたので、やっぱり元々優しいし面倒見が良い人だったのには間違いありません。


 昔からセシル君が優しかったのは知ってますもん、と微笑むと、バツが悪そうに視線をやや逸らしてしまうセシル君。頬がほんのり赤いのは、多分照れているからでしょう。


「せしるくん、やさしーよ。あそんでくれるし、だっこしてくれるもん!」


 後押しのようにミストがクッキーを頬張りながらにっこりと屈託のない笑顔を浮かべるので、セシル君はとうとう反撃を諦めたのか小さく嘆息して、しゃがんではミストを撫でています。

 ……やっぱり子供に弱いですよねセシル君。


 ただ、そんな光景にジルは「私も遊んでるし抱っこも肩車もしているのですが……」と微妙に引き攣った顔で嘆いているので、こればかりは仕方ありませんよと凹んだ旦那様を宥めます。


「ええと、ジルも充分お兄ちゃんですよ? 私、小さい頃はジルの事お兄ちゃんみたいだなって思ってましたし」

「……それは喜んでも良いのでしょうか」

「だって小さい頃ですもん。私の年齢一桁の頃ですから」


 その頃から異性として見て下さいって方が無理がありますし、そもそもその頃はまだ主従愛でしたもん、お互い。だから、お兄ちゃんって存在で良かったのです。


 でもジルとセシル君ってお兄ちゃんでもタイプ違うんですよね、ジルがどろどろ甘やかしタイプならセシル君面倒見の良い兄貴肌ですし。うちの家系は……多分セシル君タイプと相性が良いんだろうなあ、とかジルには言えませんが思ったり。や、ジルも好きですよ、少なくとも私は。


 ミストは相変わらずセシル君になついてますし、こればかりはセシル君の人徳なのかな、とほっこりです。


「……私達の子供も親そっちのけで彼になつきそうで怖いですね」


 ……さ、流石にないと思いますよ。そんなまさか。多分、その場合ジルが悲しい事になるのですが、想像するとちょっと泣けそうなので光景をイメージするのは止めておきました。

転生したので次こそは幸せな人生を掴んでみせましょうの四巻の情報を活動報告にアップ致しました。表紙のリズの表情は必見です!

発売日は4/28です、是非手にとって頂けたらなあと思います。


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