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判明した理由


 そう言えばクラウスさんって何で連れ去られたんだろう、と本人の話を聞いていて思ったのです。


 私はジルとはぐれてしまって、そこを狙われた訳ですが……あの時のクラウスさん、私みたいにふらふらしてた訳でもなさそうなのに。子供なら誰でも狙う訳ではないでしょう、誘拐組織も無差別に狙う訳ではありませんから。

 私は多分ふらふらしてたのと見掛けが良いとこの子だったから、マリアは獣人で愛玩用か肉体労働。じゃあ、残るクラウスさんとリリーさんは、という疑問になってしまいます。


「俺は、その頃から自覚なかったけど微弱に魔力はあったらしいので。噂を聞いて連れ去ったのでは?」


 本人に聞いた所、こういう解答が返って来ました。私もあの時気付けたら良かったのですけど……まだあまり多くない魔力を判別出来る程感知能力なかったですし。

 でも、貴族なら魔力持ちなど幾らでも……は言い過ぎですけど、結構な数居ます。その質はさておき、単純に魔力を持った人間が欲しかったなら貴族を拐えば良い筈です。


 それに、どうして魔力持ちを欲しがったのでしょうか。微弱な魔力なら、失礼ながらあまり魔術は使えないと思うのですよね。まあ今クラウスさんは充分な魔力持ちに成長してますが。


「恐らく、隣国に売られる手筈だったと思います」

「……隣国?」

「リズ様は外に出る事はないので分からないかもしれませんが……馬で十日程の距離に、別の国があるのですよ」


 首を捻る私に、ジルはうっすら苦笑しながら教えてくれます。

 近いのか遠いのか、よく分からない距離ですが、外には魔物も居るそうですし商人さんも大変でしょうね……。幾ら街道に魔物避けがされてあっても絶対じゃないですし、街道がない所もありそう。


「その国には魔力持ちが殆ど居ません。魔術が貴重なのですよ。代わりに剣術が発達しているのですが」

「へー……じゃあさぞかし魔導師って重宝されるのでしょうね」

「そうですね、国交の度に魔力持ちを寄越せと言ってくるくらいですから」


 下手すればリズ様も隣国に売られる所だったのですよ、と昔を思い出してはお説教モードに入りそうだったジルを笑顔で誤魔化しつつ、何だか面倒そうな大人の事情に嘆息。

 いつの世も子供は大人の判断に左右されるのですよね。まあ未遂だったから構わないのですが。あのまま売られなくて良かったと心から思いましたよ。


「我が国は断り続けてますし、あまり仲は良くないのですよ。魔術国とも言われる我が国にとって、魔導師は資源とも言えますし、そう易々と渡す訳にもいきませんからね」

「もし、略奪を目的とした戦争とか仕掛けられたら?」

「何でそんな危険な発想に至るのですかね……。戦争は簡単には起こりませんよ、というか何の策もなしに戦争仕掛けて来て勝てる程我が国は弱くないですよ」

「……私達騎士団も居るし、ヴェルフ様も居る。そう易々と明け渡す訳がない」


 ジルとロランさんは、絶対な自信をもって私に語ってくれます。……まあ、此処に万能騎士様に最強の破壊兵器(と う さ ま)、無駄に強い従者に威力ならジルにも負けないセシル君やら休職中ながら父様に見初められる程の実力持ちな母様が居たり、色々負けそうにないラインナップ。我が国ながら色々人間兵器居て怖いですね。

 戦争って個じゃなくて軍で勝負が決まるのでしょうが……時に、個は軍を圧倒してしまうと思うのですよね。特に父様とかジルが本気で破壊を撒き散らした場合。

 私が敵を圧倒出来るかは、分からないのですが……その時は、ちゃんと守らないと。そんな時が来ない事を祈るのですが。


 私の不安を見抜いたのか、ジルはふわりといつもの柔らかい笑顔で私の手を取ります。

 やっぱりこの笑顔は安心してしまうなあ、なんて小さい頃からの刷り込みなのかジルの人徳なのか、素直そう思ってしまいました。


「もしそうなったとしても、リズ様は私がお守り致します」

「ぼくも姉さま守るよ!」

「……ありがとうございます。でもルビィにはまだ早いですから、私が守ってみせますよ」

「ぼくも守るのー!」


 ぎゅむ、と抱き付いて何だかやる気に満ちた眼差しのルビィ。弟にまで守られるなんて情けないですし、私もルビィを守れるようにならないと。ジルの事だって、背中を守れるように。守って貰うだけなんて、嫌ですから。


「……砦は硬いな」

「父様も居ますし、何か負ける気しないですよね、最強の布陣過ぎて」

「そういう意味じゃないが、まあそういう意味でもあるか。色々大変だなあ」


 クルツさんの言った大変が、私ではなく、且つ特定の人間に向けられているものでもないと、何となくですが分かりました。でもジルがぴくっと動いていますし、ジルに関係があるような気もしますね。


「まあ、リズ嬢ちゃんは知らない方が幸せかもなあ」


 よく分からないですけど、知らぬが仏ならそれで良いのでしょうか。




これで丁度100話目になっております。

皆様の応援のお陰で此処までやってこれました、ありがとうございます。


活動報告に100話記念でIFとして甘めの小話をupしています。


下のアンケートもまだまだ募集しておりますので、ご協力頂ける方はどうぞ。


これからも「転生したので次こそは幸せな人生を掴んでみせましょう」を宜しくお願いします。

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