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鉄面皮だった人外

 ゴーン、ゴーン……


 鐘の音が鳴り響く教会の通路を、花嫁衣装を身に纏った六人の少女たちが歩いてくる。


 その六人は、全員が「ヒト」というわけではない。


 一人は、ピンと立った猫耳を。


 一人は、ぺたんと垂れた犬耳を。


 一人は、煌めく銀色の狐耳を。


 それぞれ、頭の上に備えていた。


 残る三人のうち、二人もまた「ヒト」ではない。


 一人は、先の三人とは違って耳が「ヒト」と同じ位置にあるが、「ヒト」とは異なり長く尖っている。


 一人は、特に変わった所は見られないが、実は真の姿を隠しているだけ。


 最後の一人は、紛れもない「ヒト」だった。


 それぞれが違っていながらも、一列に並んでいる。同じ場所に立っている。


 その光景を真っ正面から見れる俺は幸せ者なのだと、思わずにはいられない。


「汝、ワタラセシンイチは……」


 神父が口上を述べる。元の世界と何ら変わる所の無い、ありきたりな文言だ。


 神父の言葉は、誓いの確認だった。


 俺からすれば今更な話。眼前の六人にしても同様だろう。


 ーー彼女らを愛し、共に生きていくことを誓うかーー


 愚問だな。


 そこに肯定以外の意思など、入る余地も無い。


 一人ひとり、ヴェールを外していく。


 この先の展開は……ご想像にお任せするとしよう。






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「イェーイ! みんな、盛り上がってるかー!」


 真っ赤なポニーテールを盛大に振り回しながら叫ぶ少女に、溜息を一つ。


「「「イェーイ!!!」」」


 掛け声に合わせてテンションを跳ね上げる角の生えた集団に、更に溜息をもう一つ。


 楽しんでくれるのはいいけど、今日が何の日か忘れてるんじゃないだろうな?


 そんなことを考えるくらいに、騒がしいのだ。


 と、それは置いておこうか。


 ……あれから。


 世界を暇潰しの道具にしていた女神をぶっ飛ばしたあの日から。


 五年の歳月が流れた。


 この五年間で、この世界は大きく変わったと言えよう。


 まず一番大きなことは、人間と魔族との交流が生まれたことだろう。


 魔族の改革派が壊滅したことにより、アステルドは共生政策に乗り出した。


 と言っても、魔族は一部を除いてアホでノリの良い奴しかいないので、実際に人間との交流を作り上げたのはゾフォンたちトップだけなんだけどさ。


 俺と御堂の計らいもあって、マグジェミナの国王は魔族との共存に首を縦に振った。


 これに関しては、魔族たちの食事の美味さなんかも要因の一つだったりするんだが……細かいことはよしとしよう。


 今では魔族が普通にリオス大陸に住んでたり、逆に冒険者たちがノーグラスで修行したりしている。未だに遺恨はあるだろうが、この調子ならばこれからも上手くやっていけるだろう。


 次に、ムサ大陸へと開拓の手が伸びていることが挙げられる。


 人間と魔族が共同で行っている開拓事業。主導するのはなんと、レイン・ガイストである。


 ことの始まりは、レインが突然俺たちの元を訪ねてきたことだった。


『寂しいですわっ! 何でムサには人っ子一人いないんですのよぉ!』


 急にやって来て騒ぎ出したレインに、適当に放り投げた案が「なら誰かに住んでもらえばいいじゃん」というものであり、それを本気にした結果が開拓に繋がっている。


 因みに、古龍たちが暴れて危ないんじゃないか、という疑問には問題無いと答えられる。


 ムサ大陸は度重なる「実験」によって大きく地形が変わっており、大陸中央部に巨大なクレーターができている。古龍たちにはそこで遊んでもらうことにしたので、外に被害が及ぶことは滅多に無いのだ。それに、レインと人間の魔導師たちの合作である結界が張られてるしな。


 クレーターの原因が俺の拳なのは……言わなくていいことか。


 そんなこんなで、現在はムサに拠点を作って活動が進められている。レインが「転送装置」なる物を造ったことで、作業の効率が大きく上がっているみたいだ。


 その他にも、変わったことは多い。元の世界の技術に魔法を併せて大陸横断鉄道を造ったり、亜人たちにも貨幣が伝わったり……


 そして。


 五年が経ったことで。


 俺たちは、一つの区切りを迎えたのだった。


「おめでとう、シンイチ殿」


「……国王様」


 喧騒の中、近寄って来たのはマグジェミナ王国の国王と第一王女のシエル、そして騎士団長だ。


「五年前は、本当に申し訳ないことをした。貴殿をぞんざいに扱った我々をこのような場に招いてくれたこと、深く感謝する」


 初めて会った時よりも皺の増えた国王が、王冠を外した頭を下げる。これまで何度もこうして謝罪を受けてきたので、今になって何を言うこともない。


「……俺が彼女たちに会えたのは、ある意味では貴方たちのおかげだと言えます。それに、この場を用意してくれたのは国王様じゃないですか。こちらこそ、感謝しています」


「……そう言ってもらえると、救われるものだな」


 ではまた。


 そう言い残して去っていく国王。シエルと騎士団長は一礼し、その後についていった。


 戦争が終わってから、彼らには何度も何度も頭を下げられた。会う度に謝られるのは正直ウザいが、それだけ反省しているのだと思うことにした。


 あ、騎士団長を祝うの忘れてたな。


 なんでも騎士団長、王国の魔導師団のトップと結婚するらしい。既に所帯持ちの彼だが、身近に一夫多妻の人ができるのは心強い。


「よっ、シンイチ」


「グロウか。相変わらず怖い顔してんな」


「そう言うお前こそ、相変わらず無表情だな」


 軽口を叩き合う大柄な男は、元違法奴隷のグロウだ。


「お前と初めて会ったのは五年も前なのか……なんつーか、感慨深いもんだな」


「随分と年寄り臭いことを言うな」


「実際、もうおっさんだからな……にしても、あの時の小娘たちとお前がねぇ……人生、何があるか分かんねーもんだ」


「それは俺が一番思ってるよ」


「ははっ、それもそうか」


 異世界召喚なんて、普通に考えたらあり得ない話だからな。


「じゃ、俺は戻るわ。暇があったら遊びに行くよ」


「おう、そっちも頑張れよ」


 手を振り、歩いていくグロウの背中を見送る。


 グロウは今、レインの下で開拓事業に専念している。曰く、誰かの役に立つことが俺の仕事だ、とのこと。あいつほど見た目と中身がそぐわない奴もいない。


「めでたいのう、シンイチよ」


 次にやって来たのは、ギルドマスターのゲルグ。片手に持ったグラスを傾けながら、優しげな眼差しでこちらを見やる。


「同時に六人とは、儂も驚かされたわい。英雄色を好むとは言うが、これは中々……」


「爺さん、その言い方は語弊を生むからやめてくれ」


「くくくっ、間違ってはおらんじゃろう?」


 いつまで経っても元気な爺さんだ。


「お前さんを祝えてよかったわい。次は、子どもが産まれる時じゃな。はぁ〜、長生きするのもいいもんじゃのう」


 ではな、と笑いながら別のテーブルに向かった爺さん。結構な歳だと思うが、その足取りはとても軽い。流石は元Sランク冒険者ってところか。


「ハッハッハ! 楽しんでいるか、シンイチ殿!」

「うう、ぐすっ……」

「もう、いつまで泣いてるのよ……」

「こういう時、男の人は弱いのね」

「いやー、まさか娘の晴れ姿をこの目で見れるとは思わなかったよ。後数百年は先のことかと考えてたんだけどなぁ」

「くすくす。おめでとうございます、シンイチ様」


 賑やかな声に振り向くと、そこにいたのは俺の……そう、俺の、家族たちだった。


 既に酔いが回った顔で愉快そうな声を上げるユリウスさん。涙で袖を濡らし続けるナハトさんと、それを宥めるメイルさん。その様子を苦笑混じりに眺めるローラさん。目を閉じて何度も頷くキリルさんに、ニヤニヤ笑いながらお辞儀をするヤヨイさん。


「遂にこの時が来たのだにゃ! 私も喜ばしい限りだ!」

「くうっ、し、シンイチ君! 娘をよろしく頼む!」

「まったく……シンイチさん。あの子を幸せにしてあげてください」

「私からもお願いします……なんて、言わなくても大丈夫かしら?」

「あの子のことだから、色々と大変だとは思うけどね」

「うふふふ。シンイチ様のことですもの、昼夜問わずして……」


 ストップだ。ヤヨイさんには時と場所を選んだ発言をして欲しい。


「約束しますよ。絶対に、あいつらを幸せにしてみせるって」


 胸を張って、言える。


「私たちの願いはそれだけではにゃいぞ」


 ユリウスさんが告げる。


「私たちは、君の幸せも願っているんだ、シンイチ殿!」


 それは、不意打ちのようなもので。


「……そう、ですね。分かりました。俺とあいつら、全員で幸せになってみせます」


 声が震えてしまったのは、そのせいだったのだろう。


 滲む瞳で俺の家族たちと別れる。


「シンイチィ! 飯が足りねェぞ飯が!」


 良い雰囲気をぶち壊すような言葉を飛ばしてきたのは、カインだ。


「あ、おめでとう。ッて、んなことよりも飯が足りねェんだよ! ジンの奴が殆ど平らげちまうしよォ!」


 カインが髪を逆立てて怒る原因に目を向けると、五人のドラゴンがテーブルを挟んで互いに睨み合っていた。辺りに魔力を振りまいているせいで、近づける人が誰もいない。


「……お前らよ、周りに迷惑かけんのはやめろよな」


「ならもッと飯よこせッ!」


「はぁ……厨房の人に言え。俺に言っても仕方ないだろ?」


「ハッ! クソ、そッちか! 早速行ッてくらァ!!」


 アホかよ。いや、アホだな。


 皿を片手に走り出そうとしたカインが、ふと足を止めてこちらを振り返った。そして、真剣な顔でこちらを見てくる。


「……バロックの奴と、仲良くやれよ!」


 走り去っていく。


 ……これもまた、不意打ちだな。


「い、行きましたの……?」


「なんで俺の後ろに隠れてんだ」


「だってあの人怖いんですもの!」


 ふわりと浮かぶレインが、涙目になって叫ぶ。


「貴方の交友関係は謎すぎますわ。まぁ、それはそれとして、おめでとうございますわ、シンイチ様」


 優雅に一礼。作法とかについてはキッチリしてるのになぁ。


「失礼なことを思われた気がするのですけれど……」


 なんで分かんだよ。


『私の母ですからね』


「心の声に反応すんじゃねぇよ」


 変な母娘だよ、本当に。


『マスターも遂に、遂に、遂に! 大人となる日が来たのですね……』


「感慨深そうに言ってんじゃねぇ」


「あら、まだでしたの?」


 余計なお世話だ。


「必要な時は、私を頼ってくれていいんですのよ? 夜の生活をサポートする物も沢山ありますので」


『私を遊戯に使うのはナシですからね』


「どっちも使わんわ」


『わー、マスターが怒ったー。逃げろー』


 ピューっと逃げていくハルと、気がつけば遠くで料理を食べようとしてるレイン。


 本当に何をしに来たんだ、あいつらは……


「シンイチー! ウチの話を聞けー!」


 また面倒臭いのが来たよ。


 さっきまで離れた席で騒いでいたマリナがこちらに飛んでくる。後を追って来るのは申し訳なさそうな顔をしたゾフォンだ。


「ご、ごめんシンイチ! 大人しくするように言ったんだけど……」


「パーティーと言ったらウチだからな! で、今日は何のパーティーなんだ?」


 忘れてやがる。


「本当にごめんね、シンイチ。それと、僕からもおめでとう。全魔族を代表して、僕らのヒーローに祝福を送るよ」


「ヒーローってほど、大したことはしてないんだが……ありがとな。そっちも忙しいだろうが、頑張れよ」


「うん、ありがとね」


「あー、ハルだー! 今度こそ決着をつけるぞー!」


「あっ、もう! じゃあね、シンイチ!」


 ハルをターゲットしたマリナが飛んで行き、慌ててゾフォンが後を追いかける。


 ……きっと先代魔王の二人も、こんな風に過ごしていたんだろうな。


「もう一人の魔王」となったゾフォンの背を見て、同情する気持ちでいっぱいになった。


『やあやあ、久しぶり』


 ふと、どこからかそんな声が聞こえた。辺りを見回すが、誰もいない。


『こっちこっち、上の方だよ』


 聞き覚えのある声に従って視線を上げると、そこには光球がふわふわと浮かんでいた。


「もしかして……最高神か?」


『わ、忘れてたの? ひどいなぁ……まぁ、気にしないけどね。それより、おめでとう、と言わせてもらうよ』


 最高神から直接の祝福を受けてしまった。こいつを信仰してる奴からしたら卒倒ものだぞ。


『同じ神として、これからも仲良くやっていきたいからね』


「俺は神じゃないぞ」


『いや、ステータス的には神の領域に五十歩くらい足を踏み入れてるんだけど』


 それを言わないでくれ。


『この間、お礼をするって言ってたよね? だから、僕から君に、幸せな将来をプレゼントするよ!』


 この間って、五年も前のことじゃねぇか。神になると時間の感覚も狂うらしい。


 で、折角の提案なんだが……


「悪いな、遠慮しておく」


『え、どうしてだい?』


 決まってる。


「俺たちの将来は、俺たちで幸せにしてみせるからな」


『……これは無粋なことを言っちゃったかな?』


 光球が揺れた。


『君たちなら、自分の足で進んでいけるか。それなら、僕は君たちを見守るだけにするよ。じゃあね』


 光球はそう言って、宙に消えていった。後には何も残らず、たぶん、誰も最高神に気づいてはいない。


 ……相当恥ずかしいことを言っちまったな。


 嘘偽りの無い気持ちだから、取り消しも訂正もしないがな。


 最高神が消えた後を見ていると、視界の端にピョコピョコと動くものを捉えた。


「シーンイチー。にゃにを見てるんだー?」

「ぼーっとしてたようですけど、体調でも悪いんですか?」

「シンイチに限ってそんなことあり得ないわよ」

「……そう。シンイチは、強い」

「我が認める男なのだから当然だが……それならどうしたのだ?」

「ミステリアスな晋一も格好いいと思うなぁ」


 ぞろぞろと、六人の花嫁たちが集まってきた。


「……ん、何でもない。それより、もう挨拶は終わったのか?」


「はい、一通り回ってきました」


 少し赤くなった目で微笑むのは、茶色の犬人族であるエレンだ。恐らく、挨拶の最中に泣いてしまったのだろう。


「にゃー、お料理って好きに食べていいのかー?」


「大丈夫だぞ。服とかは汚さないようにしろよ」


 やったー! と近くにあった皿に手を伸ばしたユリア。以前と比べると背丈も随分と大きくなったが、性格は相変わらず。


「わ、私もあの肉を……ハッ! ななな、何でもないわ!」


 リリシアが目の前の大きな肉に目を奪われていたが、即座に手をブンブンと振った。食べたいなら食べていいんだがな。


「……ん、歩き疲れた」


 そんなことを言って俺の膝の上に座るカグラ。三本に増えた銀の尻尾がくすぐったい。


「む、ズルイぞカグラ! 我も、我も……座る所が無いぞ!」


 バロックが一人で愕然としている。仕方ないから隣に椅子を置いてやると、飛びつかんばかりに座ってきた。


「じゃあ、その反対側は私がすわろうかな」


 御堂……もとい、栞がバロックの逆側に陣取った。さり気なく俺の手を握ってくるので、優しく握り返す。


「ふふっ、私は後ろをもらいますっ!」


「あー! にゃらユリアは上だー!」


「えっ? ちょ、ちょっと、それじゃ私の場所が……って、別にその、くっつきたいわけじゃないけど!」


 背中に抱きついてくるエレンに、器用に頭の上に飛び乗ってくるユリア。ごちゃごちゃした俺の周囲を見て、リリシアはまた一人で慌てていた。


「……お前ら、少し落ち着けよ」


 ワイワイと賑やかになった空気に、内心で苦笑する。


 この六人と。


 この世界で最も大切な六人と。


 俺は今日、結ばれることになった。


 五年前、突然に召喚されたこの異世界で、俺は彼女たちと出逢った。まぁ、栞は元の世界で会ってたけど。


 奇妙なものだと思う。


 この世界に召喚されなければ、俺は栞に気を向けることも無かっただろう。


 シエルの企みによって違法奴隷にならなければ、亜人娘たちと知り合うことも無かっただろう。


 女神によってステータスを弄られなければ、バロックと共に過ごすことは無かっただろう。


 もしかしたら。


 何も無くとも栞と付き合っていたかもしれないし、奴隷にならずとも亜人娘たちを救えたかもしれないし、人外の身体でなくともバロックが側にいたかもしれない。


 全てが偶然の結果だ。


 その結果が……俺には、奇跡のように思える。


 それはこの六人だけに限らない。


 強面なグロウも、ゲルグの爺さんも、ユリウスさんたちも、ハルも、カインたちも、レインも、ゾフォンやマリナも……ついでに国王たちも。


 全員が、偶然の下で、今この場に集っているんだ。


 本当に……不思議なもんだよ。


「皆様、少しよろしいでしょうか?」


 急なレインの呼びかけに、俺は回想するのをやめて視線を向けた。


「ふふふ。実は私、この日のためにある物を造ってきたんですの!」


 自信満々に胸を張るレイン。碌な物じゃないんだろうな……


 なんていう予想は、果たして裏切られることになった。


「それは……これですわっ!!」


 レインがどこからか取り出したのは、元の世界でしか見たことのない……所謂、カメラだった。


「なんと! これを使うことによって、一瞬の風景を半永久的に保存することが可能なんですの!」


 パシャ、と音が鳴り、フラッシュが焚かれた。カメラの周りに魔法陣が現れ、驚く会場の様子が写された一枚の紙が出てきた。魔族たちを筆頭に、この場の全員のテンションが上がっていく。


 ……改めて思うが、魔法ってのは便利なもんだな。


「それでは皆様、本日の主役を真ん中に集まってくださいませ!」


 レインの掛け声に応じて、俺たちの周りに集まってくる……俺の友達や、家族たち。


 六人の嫁たちがすぐ側に。ユリウスさんたちがその横に並び、カインたちがバロックの後ろをとる。ハルがちゃっかり俺の前でポーズを取っている。グロウや爺さんも入り、魔族たちもも加わってギュウギュウだ。よく見ると、端の方に国王たちがいる。


「皆様、顔をあの魔導具に向けてくださいませ。それではいきますわよ……ハイ、チーズ!」


 集団に入ってきたレインがそう言い、カメラを遠隔操作しながらお決まりの言葉。


 ハイ、チーズ……なんて、こっちの世界にもあるのかよ。


 大切な人たちに囲まれる幸せの中、俺はそんなくだらないことで思わず頬を緩めてしまった。同時に、フラッシュの光。


「撮れましたわね。どれどれ……よし、しっかりと全員が写ってえええええええええええええっ!!?」


 カメラから出てきた写真を確認したレインが、顎が外れるんじゃないかと思うほどに大口を開けて絶叫した。


「ここここ、これこれこれ……」


 もはや言葉になっていない。


 レインが渡してきた写真を、皆が覗きこんだ。俺は少し出遅れてしまって、写真が見えない。


 一体何が写っているんだ……?


「「「「「……えっ!?」」」」」


 突如、驚きの声とともに、全員の……そう、比喩ではなく全員の目が俺に突き刺さった。


「し、シンイチさん。これ……」


「あ、あああ、はうっ……」


「し、シオリ!? 気をたしかに!」


 恍惚とした様子で気絶した栞をリリシアが支えるのを尻目に、エレンが震える手で差し出した写真を見る。


「……何も変なものなんて、写って、ない……?」


 違和感を覚えた。


 もう一度、写真の中にいる俺の顔を注視する。


「……ははっ、マジかよ」


 そうして、俺は皆が驚いた理由を察した。


 だって多分、俺自身が一番驚いているんだから……
















 写真の中には、沢山の人がいる。


 人間、亜人、魔族、そして人外。


 様々な種族が入り乱れて楽しげな笑顔を見せている。


 その中心には、一人の青年。


 六人の花嫁に囲まれた青年。


 その青年の顔には、どこか呆れが混じったような、それでいて最高に幸せそうな。




 ―――――柔らかな笑みが浮かんでいたのだった。




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