幕間 とある誰かさんの独り言4
ごゆっくりお読みください。
白。
どこまでも白に覆われた世界で、一人の女性が狂乱の最中にいた。
「ああああああああ! もう、どういうことなのっ!?」
ふんわりとしたウェーブのかかるハニーブラウンの髪をぐしゃぐしゃと掻き乱し、地団駄を踏む。
「もー! なんで壊れちゃったのー! これじゃ何も分かんないじゃーん!」
ドンドンと真っ白な大地を踏みつけながら怒る彼女の傍らには、木っ端微塵と形容するのが正しいだろう、完全に壊れた何かがあった。
女性はそのまま、かなりの時間暴れまわっていた。
しばらくしてふと、何かに気づいてポンと手を打った。
「あ、そうか。壊れたなら直せばいいんだよね!」
そう言うと、大破する何かに向けて手をかざす。少しの集中の後に手から光が溢れ、壊れたものを包み込んだ。
すると、まるで時間が巻き戻ったかのように破片が元の形に戻っていく。
そこに現れたのはパソコンのようなものだった。
「……ふー、疲れた」
一息ついてパソコンの前に座る女性。ボタンを押すこともなく起動したパソコンを見つめて惚けている様は、それでも尚、あまりにも美しかった。
「あれ……もうこんなに経ってたの? あちゃー、二ヶ月分は長いなー……まぁ、見るけど。それしか楽しみないしね!」
一体誰に向けて放った言葉なのか。
紛うことなき独り言を割と大きめの声で言う女性は、早送りで再生される映像を眺めている。ディスプレイに映るのは一人の少女。そして、角と翼の生えた人型の生物たちが集まっている場面。
「うーん、どっちもそんなに進展無いな……魔族の方も、もっと強硬手段に出ればいいのにー」
つまらない、といった感じで呟く女性だが、映像にとある人物が現れたところで表情を変えた。
「えっ、この子生きてたの!? 全然気づかなかった……ていうか、えええ!? ナニ!? どうなってるの?」
彼女が驚きを見せたのは、メガネの少女を連れて人智を超えた速度で動く少年に対してだった。
「あ、そういえば身体強化なんてあったわね……他人にまで付与できたかは知らないけど、こっちの子のおかげかな?」
それが勘違いであるとは知らず、彼女は面白そうに唇を歪めた。
「うわ、修羅場だよ修羅場! この子の記録も見ておくべきだったかなー!」
とある一室で繰り広げられる睨み合い。女性はその場から瞬時に消えた少年のことなど気にもせず、狐耳の少女と紫髮の麗人に対峙するメガネの少女の様子を見て腹を抱えている。
その後もディスプレイの前でニヤニヤと笑い続けていた女性の顔が、一気に赤く染まった。
「ちょ、え、これ何してんの! うっわ、手の動き……腰が……え!? そそ、そんなところまで……?」
食い入るように画面を見つめる女性がゴクリと喉を鳴らした。どんな場面を見ているのかは、ご想像にお任せしたい。
「…………………………」
朱色に染められた頬を押さえ、何も言わずにぼーっとしている。その目には何も映ってはおらず、先の映像で受けた衝撃の強さが見てとれた。
「………………はっ! そうだ、まだ最後まで見てないんだった」
やっと我に返った女性が適当に早送りして、新しいシーンの鑑賞を始めた。
そして三度目の驚き。
「へ? ここ、魔王城……あれ!? なんで? 戦争は!?」
疑問符を大量に浮かべて叫ぶ。
「……こ、こんなの面白くなーい! 折角色々と頑張ったのにー! こうなったら……」
ピッ、と女性が指を振ると、何も無い空間に突如として亀裂が入った。
最初は小さかったその亀裂は徐々に大きさを増し、遂に人が一人通れるくらいのサイズになった。
そこから覗くのは、草木の殆ど生えていない荒野と、そこに聳え立つ大きな城。
「……こうなったら、私が直接出向いてやるー!」
女性が亀裂の中に身を躍らせる。
人ならざる存在。
彼女が自分以上の異常を認識するまで、もう少し……
木っ端微塵になった理由はご想像にお任せします。
どこかの誰かさんが何かを投げたせいかもしれません。
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