新発想
短めになってると思います。
ごゆっくりお読みください。
御堂の圧勝で終わった決闘。(俺への)愛の力をバロックに見せつけたチート勇者は、俺の元に駆けつけるや否や倒れこんだ。どうしたのかと心配したが、ただ魔力を使い過ぎただけのようだった。レイン曰く、最後の魔法には異常な魔力が込められていたそうだ。
「あれ、『堕天』と同じくらいの魔力量でしたわ」
それを聞いた俺は、光に追いつかんばかりの速さでバロックの元に走った。そんな高威力の魔法を食らったら、無事では済まないだろう。
そんな予想は大きく外れていた。というよりも、バロックを舐めていたと言うべきか……
「うああああああ!! 我の方が、我の方がシンイチを好いているのだあああ!!」
……地べたに転がって手足をバタつかせているバロックを見て、安心した。悔しがってるところがズレてるのは置いといて、元気そうだった。
色々とマズイことになっているバロックを極力見ないようにして連れて帰った。戻った時の御堂の目が怖かったが、一体なんでだろうなー。
ともあれ、その時には吹き飛ばされていたワースとフィトムも帰ってきていた。
『アハハ、世界を一望してきたよー……』
『と、とても美しかったですよ、クフフ……』
ぐったりした様子で乾いた笑いを零す二人には、かける言葉が見当たらなかった。
強いて一つだけ言えば、上空から見下ろすこの世界は神秘的だよな、ということだろうか。
で、気絶していたカインたちが起き上がったのが今、というわけだ。
『……シンイチくんもだけど、シオリくんも大概な強さだね』
体が痺れているのか、腹這いになって言うディール。ノットも同じように思っているのか、何度も首を縦に振っている。
『いくら勇者だと言ッても、こいつァ狂ッてんぜ……』
『何度も言うが、規格外だな……』
カインとジンはもはや呆れた感じさえある。四ヶ月ほど前に見たような目だ。
古龍七体を同時に相手して勝利をもぎ取った御堂。カインの言う通り、傍らで俺を見上げるメガネの少女は歴代の勇者と格が違うのだろう。それこそ、狂ってるほどに。
でも……それを言ったら、俺はどうなるんだ? 御堂よりも強い自信があるんだが……
やっぱり不自然だ。御堂についても違和感があるが、レイン曰く「個人差」で済むらしい。それを踏まえて、俺は異常だろう。
どういうことなんだ……?
「? どうしたのだシンイチ? 何やら怖い顔をしているが……」
考え込んでしまった俺を心配そうに見てくるバロック。隣の御堂も不安げな表情だ。
「……なんでもない。気にするほどのことでもねーよ」
軽くバロックと御堂の頭を撫でて誤魔化す。視線が御堂に固定されているのはお察しだ。
『……怖い顔? いつもと変わッてねェように見えッけど……』
『多分、あれが愛の力だよ』
『ぬぅ……?』
ディール、適当なことを言うんじゃない。
『私はマスターについて行きます。従者ですし、面白いですし』
相変わらず余計な一言を付け足すハル。
「いいのか? 折角親と会えたのに」
『今更、という感じですね。私も母も不死身ですから、会おうと思えばいつだって会えます。それならマスター弄り……もといマスター観察を楽しみたいです』
「私も同意見ですわ。シンイチ様という珍妙な方の側にいた方が、ハルも楽しめるでしょうし」
「……そ、そうか」
怒るべきか、怒らざるべきか。
バロックたちが「もっと遊んでくる」と言って去って行った後、俺はハルの今後について聞いてみた。その結果がこれだった。
ハルはレインの元に残るのかと思ったが……妙な理由で俺と一緒にいることにしたらしい。ハルらしいといえばハルらしいけどさ。
俺としては、ハルがついてきてくれるのは地味に嬉しかったりする。なんだかんだ言って、こいつがいないと物足りない感じがするからな。
まぁ、それは置いといて。
「何をしようかね……」
「?」
御堂が首を傾げる。声に出てたみたいだ。
「なんつーか、やらなきゃいけないことが無いなって思ったんだよ」
簡単に説明をすると、御堂は納得したようだった。
幻級魔法の実験の時にも考えていたことだが、これからの予定が無い。もとい、やるべきことが無いのだ。
「そういえばそうだね。私も王国から連絡が来ない限りは自由だな」
「どうしたんですの?」
気になることでもあったのか、レインが首を突っ込んできた。中身が伝わらない会話だったからか。
とりあえず、レインがバラバラになっていた時のことを軽く教えておく。具体的には人間と魔族の戦争についてとか、だな。
「それはまた、妙な話ですわね」
「ん? 戦争が、か?」
話の途中から眉間に皺を寄せて唸っていたレインが、気にかかる発言をした。
「いえ、随分と古い知識にはなりますが……私の知る限り、魔族は魔王に逆らうことなんてない種族なんですのよ」
「逆らわない? じゃあ……」
「派閥が二つあることがおかしい、ってこと?」
「そうですわね。あ、逆らわない、というよりも『逆らえない』と言った方が正しいのですけど……ともかく、魔王の意思が魔族全体の意思になるんですの。それに反抗するのは、いても極々少数だったはずなのですけど……」
時代が違うから何とも、か。どうして魔族にそんな詳しいのかは聞かないでおく。だってロード族だしな。
レインの記憶が正しいとすれば、確かに妙だな。
とある町で出会った魔族のゾフォンが言うには、魔王派と改革派で意見が分断してるらしい。
あいつが嘘をついた可能性もゼロではないが……そんな奴には見えなかった。どこか抜けたところがあったし、人を騙すようなことは思いつきもしなさそうだった。
なんだろう。
違和感。
俺のステータス、熊型の魔物、ロード族の滅亡。
これらに通ずる違和感がある。
「人間は魔族が攻めてくるまで動けない、と……」
「うん、そういうことみたい」
レインと御堂が話す傍らで思考に耽る。どこかに共通点があるのか……?
「……人間はアホですわね」
「え?」
不意に、そんな言葉が耳に届いた。一度思考を中断して、俺も会話に参加する。
「どういうことだ?」
「何故、わざわざ待つ必要があるんですの?」
さも当然の如く告げるレイン。
「だからそれは、人間には移動の手段が限られていて……」
「それは人間の話ですわよね?」
「? そうだけど……それ以外に何が……」
不思議そうな御堂。
彼女とは違い、俺は気づいた。そして、どうして今まで気づかなかったのか疑問にすら感じた。
「それって、まさか……」
言い終わる前にレインが大きく肯定した。
「ええ、お察しの通りですわ。要は……」
一拍。
「貴方たちが魔族の国に乗り込んで、改革派を潰してしまえばいいんですのよ」
戦争? 何それ、おいしいの?
いやー、何と言えばいいのか……
実は、第四章、次回で終わります。
よく考え直してみたら六章のストーリーが矛盾していたので、無理やり五章と混ぜたんです。そしたら……四章が。
その分、話の流れが少しだけ綺麗になったので、ご容赦を。
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