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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第四章 頑張る人外さん
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乙女vs古龍

お待たせしました! 久しぶりの投稿です!


テストも無事に終わったので、これから少しずつ更新していこうと思います。


では、ごゆっくりお読みください。

 ここ最近は驚くことばかりだ。


 奴隷となったはずの渡良瀬くんが私を訪ねてきたり、渡良瀬くんがとても強かったり、一夫多妻だったり、夜の営みの詳細を知ったり、渡良瀬くんが私のパンツを持ってたり……


 今なんて目の前に七体の龍が並んでいる。聞くところによると、この龍たち、つまりはバロックさんたちはこの世界でも最強の部類に入るらしい。


 それを一人であしらう渡良瀬くんは、やっぱり素敵だなぁ。絶対に好きになってもらうんだから!


 っと、それは置いといて、今はこの勝負に集中しないと。






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 七色の古龍が御堂と相対している。古龍たちからは何かを期待するような雰囲気が滲み出ているが、対する御堂は特に緊張した様子も無い。


 ムサ大陸に起こった異変に気がついてやって来たバロックたち。大陸の海抜を一メートルほど下げるという所業に、強きを求めるドラゴンの血が疼いたのか、御堂はディールに決闘を申し込まれた。


 もちろん、カインやジンたちもギラギラとした目を御堂に向けている。好戦的というより、もはや獰猛だ。


 こいつらは何を言ってるんだ、と呆れつつ、迷惑になるだろうからやめさせようとしたのだが……


『……いい、よ。やる!』


 なんと御堂本人が承諾してしまった。どんな思惑があってのことなのか、その目には強い意思が見てとれた。


 いや、御堂がやる気ならいいんだけどさ……それでも、危ないことに首を突っ込んで欲しくはない。いくら御堂が魔力に優れているとはいえ、相手はあの古龍だ。しかも七体同時となると、心配せずにはいられない。


 幻級魔法「堕天(フォール)」があればいけるか、と聞かれたら、そうではないだろう。


 推測ではあるが、あの魔法一発で御堂の保有魔力量の半分が消える。どうやら一度に多くの魔力を消費すると疲弊するみたいだし、もしも「堕天」を撃って外してしまえば、ディールたちに負けてしまうのは確実だ。


 そんな懸念を他所に、魔力を回復させた御堂は自信満々にこう答えた。


『私なら、勝てるよ。渡良瀬くんが見ててくれるもん』


 俺がいることが、何よりも御堂の力となるらしい。実際、魔力を回復させてる間はずっと俺の隣にいた。そのおかげでいつもより早く全快したと言ってたくらいだ。


『それでは、これより決闘を開始します』


 むず痒いものを感じていると、審判役を任されたNo.3の無機質な声が響いた。


 ドラゴンと御堂。対峙する両者の間に、視線の火花が散った。


『……始めっ!』


 No.3が手を振り下ろし、闘いの火蓋が切って落とされた。


『先手必勝ッ! 【龍焔波】!!』


 カインが深紅の顎を大きく開き、灼熱の炎が吐き出された。前面に広がった魔法陣に炎が到達すると、炎の勢いが急激に増して御堂に殺到する。


 その様はまさに、炎の津波。


 御堂とカインの距離は百メートル弱あるが、紅い波は放射状に広がっているため、生身の人間に走って逃げることは不可能だろう。


 生身の人間ならば。


 紅が御堂を包んだ。遠くで怯えながら観戦するレインからは、かなり悲惨な状況に思えるだろう。


 俺は軽く跳躍して真上から俯瞰している。だから分かるのだが……


『障壁、ですね』


 ハルが呟いた。


 そう、今、御堂に炎は届いていない。御堂の前に出現した白い壁が炎を防いでいるんだ。


 何かしらの魔法なんだろう。カインの放った猛威は彼女の綺麗な黒髪を揺らすだけに終わった。


『ケッ! 無傷かよッ!』


 炎の中から涼しい顔をして現れた御堂に、カインが楽しそうに笑う。本当に戦闘狂だよ。


『それじゃ、お次は僕が! 【地龍衝牙】!』


 翼を一打ちして少し浮いたノットが、足元に魔法陣を展開して勢いよく大地に降り立つ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 地響きとともに御堂の両脇の地面が盛り上がり、多数の突起を持つ壁が生まれた。


 トラバサミのように閉じていく壁。


 御堂は一切の抵抗を見せずに挟まれてしまった。


「シオリ様っ!?」


 遠くからレインの悲鳴が聞こえた。


 まぁ、そんな心配するこっちゃないだろう。


 油断せずに臨戦態勢を保つ古龍たちを見れば分かることだ。


 少しして、ドゴンッ!! と土壁が爆発した。青白く発光する薄い膜に包まれた御堂が、両腕を横に突き出して立っている。


『よーしっ、いくよワース!』


『クフフ、楽しみですねぇ』


 汚れ一つ無い勇者。対し、フィトムとワースが同時に飛び立ち、魔法を放つ。


『ちょっと卑怯な感じがするけど……【風塵乱舞】!』


『これも知恵ですよっ! 【氷結陣】』


 以前に俺に使った技だな。


 翠色の旋風が吹き荒れ、同時に絶対零度の風が纏わりつく。


 中にいるものを凍結し、風の刃で切り刻む。普通ならどんな生物も生きてはいられない。


 流石にこれはマズイか?


 ほんの僅かな焦りが生じるも、次の瞬間には安心させられる。


「……『ゲイル』『ゲイル』『ゲイル』『ゲイル』『ゲイル』……」


 極寒の暴風から、微かにそんな言葉が聞き取れた。いや、唱えすぎじゃないか?


 そう思ったとき、突如翡翠と純白の螺旋が掻き消え、水色の竜巻に上書きされた。


 一つ、二つ、三つ……


 竜巻はその数を徐々に増やしていく。幾重にも重なった竜巻は、遂には二十を数えた。


 それらが互いにぶつかり合い、融合し、あまりにも巨大な颶風の柱となった。


『ちょっ、何これ、きゃーーーっ!?』


『くっ、クフフ、ッフゥーーー!?』


 二体の龍が巻き込まれ、上空に消えていった。ワースの悲鳴キモいな。


『……ぬぅ、この娘も規格外か』


『いや、あそこまで強力な魔法を使ったんだし、今がチャンスだよ。【蒼々流々】!』


 翼を広げたディールの眼前に生じた魔法陣から、全てを飲み込まんとする蒼の奔流が飛び出した。


『まだまだ! 【蒼刃】!』


 蒼い波は御堂に防がれた。しかし、脇に逸れていった水流から五十を超す水の刃が襲いかかった。


 水の檻。


 逃げ場が無いかと思われたその攻撃を、御堂は一言呟いて無効化した。


「『コキュートス』」


 御堂から同心円状に波動が生まれ、次々と蒼色の凶刃を凍らせていく。


 後に残ったのは、氷の檻だった。


『ええっ!? ワース以上の氷系魔法!?』


 芸術の域にまで達しているそれを見て、ノットが驚きの声を上げる。


「まだ余裕かな……『トールハンマー』」


 信じ難いセリフを吐き、片手を天に翳す御堂。『堕天』と同じように魔力を放射していくと、上空に黒い雲が集まり出した。


「……落ちてっ!」


 瞬間、閃光が目を焼いた。


 轟音が響き、大地が揺れる。ピリピリとした感覚が伝わってくる。


 目をやると、カイン、ノット、ディールが倒れていることが確認できた。細かく痙攣しているように見える。


 ……今のって、雷か?


 しっかりと見えた訳ではないが、光の柱がカインたちを飲み込んだように思えた。天から降ってきたあれは、恐らく雷だったのだろう。


『ぬぅぅぅぅぅうっ!!』


 倒れた三体を超えて飛び出したのはジンだ。あの魔法を耐えたのか。


 巨体に似合わぬ速度に面食らったのか、御堂はジンの体当たりをまともにもらってしまった。


 だが。


『グハァァッ!!』


 吹き飛んだのはジンだった。


 浮いてしまったジンの下方に、人影。もちろん御堂なのだが、いつの間に移動したのか。


 膝を曲げた御堂が拳を突き出して跳躍する。


 バキバキッ!


『ガッ……!』


 何か硬いものが砕ける音がして、ジンが海老反りになった。苦悶の声を漏らして地に落ちた黒龍はピクリとも動かない。


『……流石はシオリ、だな。以前の勇者でもここまで強くはなかった……気がするぞ』


 気がするだけかよ。


 締まらない言葉とは裏腹に、最後に残るバロックの表情は固い。ドラゴン形態だからよく分からないけどな。


「バロックさんとは一対一でやりたかったんだ」


『我もだ! 見てろ、シンイチ! 我の実力を!』


「絶対に負けないからね!」


 ……お前ら、相手に目を向けろよ。なんで二人揃って俺を見てんだよ。


『いくぞ! 【紫閃覇雷】!!』


 バロックの頭上に大規模な魔法陣が現れ、その中心から紫色の球体が出てきた。バチバチと凄まじい音を鳴らすバスケットボール大の球体は、ゆっくりと御堂に向かい……ん?


『ま、マスター。何故でしょう。あんな魔法を見たことがある気が……』


「……奇遇だな、俺もだ。大陸の四分の一くらいが攻撃範囲になりそうだよな」


 顔が引きつったのが自分でも分かった。


「本気でいく! 『ラース・インパクト』!」


 御堂の背後に、バロックのものを半分にしたサイズの魔法陣が展開され……どんどん大きさを増していく。


 遂には元の四倍以上の大きさになった魔法陣が、淡く発光する。


『えっ、な、なんなのだソレ!?』


 予想外だとでも言うようにバロックが焦り出す。


「これが、私が渡良瀬くんを想う気持ちだよっ!!」


 魔法陣から半透明の衝撃が走った。


 真っ直ぐに突き進むそれは、バロックの雷球と接触し、弾き飛ばす。紫の閃光が辺りを染め上げる。


『わわ、我だってシンイチのことがだいす……ぐわぁぁぁ……!!』


 何か言いかけて、衝撃に押されて彼方まで飛んでいったバロック。生きてるよな……?


「これが愛の力だよっ!!!」


 バロックが消えていった方を見て拳を握るメガネ少女。


「……絶対に違いますわね」


 ふと耳に入った呟きに、俺は全力で賛同するのだった。




バロックが御堂の雷魔法を耐え抜いたのは、バロックの雷に対する親和性が高かったからです、多分。

もしくは愛の力です。


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