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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第四章 頑張る人外さん
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メイド嫁

タイトルが流れを考えてない感満載。


ごゆっくりお読みください。

 ハルとレインの関係がハッキリしてわだかまりが無くなったところで、俺はハルを置いて狐人族の里へと戻ってきた。親子の時間を作るのと同時に、未だヤヨイさんに毒されているだろうエレンたちを家に帰すつもりだ。


 お約束となった幻影魔法を全力に近い指パッチンで掻き消し、カグラの家に向かう。道中で会った狐人族から「英雄」とか呼ばれたが……リオスに広まらないことを祈るばかりだ。どうしてそんな渾名がついてるのか……


 肩を落としながら大きな屋敷の、これまた大きな扉を開く。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 閉める。


 よし、一旦落ち着こうか。


 たった今、俺の目には何が映った?


 最初に、フリルが付いたエプロンドレスが視界に入ったな。紺と白を基調とした、派手さの無い……メイド服だ。ユリアの家で見たのと似てる気がする。


 次に、流れるような黒髪。後頭部の少し高い位置で一つに纏められたその髪型は、所謂ポニーテールというやつだろう。


 そして最後に、メガネだ。真面目そうな雰囲気にマッチして、「デキるメイド」といった感じになっていた。


 んー、知り合いに似てるな、さっきのメイド。ほんの数時間前に別れたばっかりの知り合いにとてもよく似てる。


 まぁ、見間違いだろう。もしくはヤヨイさんが作った幻影だ。カグラの目には映らない、魔法による幻影だろうさ。


 そうと決まれば気にすることはない。普通に扉を開けて、普通にお邪魔すればいいんだ。


 さて、早いことユリアとリリシアをヤヨイさんの魔の手から救わなくちゃ……


「あ、渡良瀬くん……似合わなかった、かな? ごめんね……」


「いや、似合ってる。だから泣くな」


「そ、そうかな! えへへ、やったぁ……」


 うん、これ幻影じゃないわ。どこからどう見ても御堂本人だ。目尻に涙を溜めてしょげていたので咄嗟にフォローしたら、すぐに恥ずかしそうに微笑んだ。涙? そんなものは消え去った。


「二つほど、聞きたいことがあるんだが……」


「す、スリーサイズ、とか?」


 なんでだよ。何かを期待するような目は止めなさい。


「違う。どうしてここにいるのか、ということと、何故メイド服なのか、ということだ」


「なんだ、そんなことか」


 そんなことって。


「ここにいるのは、国王に許可を貰ったからだよ。通信用の魔導具を持ってるなら渡良瀬くんの側にいていいって!」


 細長い八面体の結晶を見せる御堂。色々と気になる部分がある発言だったが、深く考える必要は無いか。


「この服は、元の世界の友達が『男の子はメイドが好きだ』って言ってたのを思い出して、ユリアちゃんの家から借りてきたの」


 くるり、と一回転してみせる。膝上丈のスカートがふわりと舞って、太ももが露わになった……って何を見てるんだ。


 軽く頭を振ってそんな思考を追い出し、腕に抱きついてくる御堂を引きずりながら一度自室に向かう。御堂から聞いたところ、エレンたちはそこにいるらしい。


 部屋のドアを開けると……


「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」


 ……メイドがいた。


「? にゃんだー? あ! シンイチだー!!」


 丁寧に頭を下げるエレン、カグラ、バロックに首を傾げていたユリアは、俺を見つけるや否や飛びついてきた。メイド姿で。


「ご、ごしゅ、ご主人、さ……〜〜〜っ! む、無理! なんで私がこんなこと言わなきゃいけないのよ!」


 リリシアは顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。当然の如く、メイド服を着用して。


「むぅ、あまり反応しないぞ」


「……可愛すぎて、言葉も出ない?」


「そんな、シンイチさん。可愛いだなんて……」


 エレン、確かに可愛いけど、言ってないぞ。冷静になるんだ。


「……はぁ、とりあえず、皆着替えてきなさい」


 愛しい嫁たちは、着実に変な道に進んでるようだった。






「え、もう帰るんですか?」


 残念そうな声を上げるエレン。


「もう一日帰ってないんだから、そろそろ親御さんたちが心配するだろ?」


「それは、そうですけど……」


「もうおわかれかー?」


 まずいなぁ、エレンが既にヤヨイさんに毒されてる。本当に、本当にあの人は、厄介な人だ……


「……なんて、思ってらっしゃいませんか、シンイチ様?」


 何故バレた。


「とにかく、今日は解散だ。会おうと思えばまた会えるだろ?」


「……分かりました。その代わり、今度二人っきりでデートしてくださいね?」


「ああ、分かった……ん?」


「なぁっ! ズルいぞ、エレン!」


「……これは、巧妙」


「エレンちゃん、流石……!」


「あらあら、私の教えた技をもう……」


 またあんたか。自然な流れで挟まれたから意識できなかったよ。これは曲者だな。姉弟子(?)であるバロックたちも驚く程の手際だったようだ。


 まぁ、そんな技を使わなくても、デートするのは吝かではないけどな。寧ろ大歓迎だ。


「それなら、一人ずつ全員としようか。もちろん、御堂もな。それでいいか?」


 エレンだけ、っていうのは不公平だもんな。一応御堂も加えておいて、これで平等だろう。


「……シンイチ、欲張り。でも、好き」


「おおっ、それはいいな! 二人っきりは久しぶりだぞ!」


「わわ、渡良瀬くんからのお誘い!? こ、これは乗るしかない!」


「でーとー? どんにゃあそびだー?」


「私も!? やった……っ! い、今のは違くて……その、あの、違くないわけでも……」


「ふふっ、皆喜んでますね。そんな優しいシンイチのことが大好きです!」


 眠た気な目のカグラが小さく微笑む。手放しで喜ぶバロックは、この中の誰よりも子どもっぽい。御堂は妙に張り切ってるけど、ユリアはキョトンとしてるな。リリシアはガッツポーズしてから慌てて誤魔化そうとして、エレンは可愛く笑ってさり気なく想いを告げてくる。


「まあまあ、私もでしょうか? 仕方ありません、ここは親子ど……」


「ヤヨイさんは結構です」


「あら、残念」


 今何て言おうとしやがった。冗談だとは思うが、本気で狙ってる可能性を否定しきれないのがこの人の怖いところだ。


 これで納得したのか、エレンは帰ることを了承した。俺の方も彼女たちを送る準備をしておく。


「そんじゃ、行くぞ。御堂、頼む」


「うん。『ホーリーガード』」


 御堂の手に集まった白い光が宙に浮かび、パンッと破裂してキラキラと降り注いだ。


 御堂によれば、この『ホーリーガード』なる魔法は、光を浴びた者の耐久値を上げる効果があるらしい。実際の効き目がどれくらいのものかは知らないが、御堂が使うと数値が数百から数千倍になるとのこと。それでも全力ではないというのだから驚きだ。俺もだが、御堂も大概だ。


 で、この魔法を使った理由は……


「まずは、リリシアからだな」


「ひゃあっ! い、いきなり持ち上げないでよ! びっくりするじゃないやぁぁぁぁ……!」


 お分かりだろうか? 俺はリリシアをお姫様抱っこして、走っているのだ。風圧や速度に耐えるために、御堂の手を借りたというわけだ。


「は、速ぁぁぁあああああ!! 変態っ! 人間ーーー!!」


 懐かしいな、その罵倒。


 狐人族の里を高速で走り抜け、リュケイア大陸を超速で走り抜ける。


 これを後二回繰り返すだけの簡単な仕事だ。


 ……楽しんでくれたのはユリアだけだったけどさ。エレンとリリシアにはお説教されました。耐久値が上がっても怖いのは怖いんだな……






 そんなこんなで亜人娘三人を送り帰し、俺は再び里へと戻ってきた。すると、バロックが唐突にスカイウォールに帰ると言い出した。


「むぅ、少し体を動かしたくてな」


 要するに、長い間戦ってなかったから体がウズウズしているのだ。


「なら、俺も帰るか。ムサにハルを残してるからな」


「……寂しく、なる」


 カグラの尻尾が萎れた。いつも元気なわけでもないが、殊更萎れてる。


 なので、元気を出せるように頭を撫でておく。


「また来るよ。それまで良い子にしてろよ」


「……分かった。色々、学ぶ」


 うん、その「色々」にヤヨイさんの講義が入ってないといいんだが……


「……なんて、思ってらっしゃいませんか、シンイチ様?」


 何故バレた、二回目だぞ。


「そ、そういや、御堂はどうするんだ? ついてくるか?」


「えっと……うん。渡良瀬くんと一緒!」


 ヤヨイさんをチラ見しながら、某番組のタイトルのようなことを言う。バロックの時も思ったが、あの講義には中毒性でもあるのか?


 ヤヨイさんの妖しい笑みに末恐ろしいものを感じながら、バロックたちとともに里を出る。最後の最後まで幻影魔法が立ちはだかってきたが、今度はバロックが小さな紫電で打ち砕いた。


「では行くぞ! ーーー『龍化』」


 黒紫色の閃光が迸り、深紫の巨体が現れる。それを始めて見た御堂は驚いて口が開きっぱなしだ。


『よし! 背中に乗るがよい!』


 背を向けるバロックに、御堂を抱えて飛び乗る。


「あ、そうだ。御堂、身体強化をしておいた方がいいぞ。少し強めに」


「え? う、うん。分かったよ」


『飛ぶぞー!!』


 御堂が頷くのとほぼ同時に、バロックが翼を打った。直後、凄まじい速度で上昇。一気に神樹の頂端付近まで翔けていく。


「っ、きゃぁああ!!」


「おっ、とと……大丈夫か?」


 悲鳴を上げて抱きついてきた御堂を受け止めてやる。俺は足だけでもバロックにしがみついていられるが、御堂には難しいだろう。


 そこで、御堂が小さく震えているのに気づいた。


「御堂、もしかしてだが、高所恐怖症だったりするか?」


 もしそうなら悪いことをした。


「うん……で、でも大丈夫だよ」


 顔を青褪めさせつつも、御堂は笑った。


「だって渡良瀬くんがいるもん……」


 絶対の信頼を置いているかのように、笑った。


 ……これは、俺が陥落するのも早いかもな。


『ひゃっほーぅ!! たっのしいぞー!!!』


 ごめんバロック、空気読んで。






 そんな感じでムサに着いた俺たち異世界人組は、バロックたちが暴れ出す前に研究所へとやってきた。


「あら、シンイチ様。もう戻ってきたんですのね……! 貴女っ! 素晴らしいわ!!」


「えっ、わ、私?」


「ええ、ええ! 貴女ですわーっ!!」


 レインの部屋に入り、刹那の間を置いて彼女の目が御堂をターゲットした。


 突然の出来事に目を白黒させている御堂に、レインは一瞬で詰め寄ると、その肩をがっちりと掴んだ。実際にはすり抜けているがな。


「私の実験に付き合ってくれませんことっ!?」


「え、え、え? どうしよう、渡良瀬くん……?」


 鼻息荒く迫ってくるレインに怯え、戸惑ったようにこちらを見つめてくる御堂。


 どうやら、第一印象は悪くなりそうだ。




ヤヨイ「親子ど……」


これがやりたかっただけです! 申し訳ありませんでした!


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