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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第四章 頑張る人外さん
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青色の女性

新キャラ登場です。


ごゆっくりお読みください。

「素晴らしいっ! 何が素晴らしいのかと聞かれたら上手く答えられないけれど、素晴らしいっ! (わたくし)、感動しましたわっ!!」


 青色の麗人が捲し立てる。その勢いに俺はちょっと引き気味だ。


「シンイチ様! 私、貴方のことが気に入りました! 是非、是非に……」


 両手を組んでの上目遣い。


 そこから、彼女の「おねだり」が始まる。




「解剖させて頂けませんことっ!?」




 ……おねだり、なのかなぁ?






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「親、だって?」


 御堂を見送った後、珍しく真面目なハルからお願いを伝えられた。内容は「親のところに連れていって欲しい」ということ。


「それってロード族のことだよな? 八百年前に滅びたっていう話じゃなかったか?」


『そのはずなのですが、以前話したアダマンタイトの姉妹から念話が届いたのです。私たちの親が見つかったと』


 ? 妙な話だな。滅亡したと思われてたけど、実は生きていたとかいうのか? いや、エルフじゃないんだから八百年も生き続けることはできないだろうし……


「気になるな。よし、確かめに行ってみようぜ」


『ありがとうございます、マスター』


「……なんか調子狂うな」


 こいつがまともに感謝してくるなんて、普通じゃあり得ない。親に対して何か思うところがあるのかもな。


 ヤヨイさんの講義に全力で耳を傾けている嫁たち(ユリアとリリシアを除く)に出かけてくる旨を告げ、狐人族の里を出る。


 山を下りて平地に立ち、北へ向けてやり過ぎないように力を調節して跳ぶ。瞬きの間にリュケイアから海上へと躍り出た俺は、戦闘機かと思うような速度で飛翔していく。


 そんなに時間はかからず、ムサ大陸を視界に捉えた。ぐんぐん距離を詰める陸地に恐怖心は一切無く、ハルを展開して速度を殺し、しっかりとした着地を決める。高度五百メートルは階段の段差一つと大差ないな。


 一月ぶりくらいに降り立ったムサ大陸は、対古龍戦の時と殆ど変わっていなかった。オブジェクトの数やクレーターの形なんかは変わってるかもしれないな。


 しかし……


「ハル、そもそもアダマンタイトの生命金属ってどこにいるんだ? 前に来た時は見なかったが」


『あの子はロード族の研究所跡地にいます。場所は大陸の北端にあったと思います。随分と前のことなので、ハッキリとは覚えていませんが……』


 ふーん、確かにそっちの方には行ったこと無いな。見たことが無いのも当然……それに、ハルが何百年も迷宮にいたせいで今のムサがどうなっているかに疎いのも、同じく当然。


「ま、とにかく行ってみますか」


 なんとなく嫌な予感がするが……気のせいだろう。こっちに来てから嫌な予感の的中率が高くなってるのも、きっと気のせいだ。そう思うことにしよう。


 ジョギング気分で音を置き去りにし、ものの数分で大陸を縦断する。大分人間離れしちまったなぁ。日常生活に支障が無いのだけが救いだ。


 立ち止まって辺りを見回す。障害物の類が全くと言っていいほどに無いから遠くまで見えるが、特に何があるわけでもない。


「ハル、跡地ってのはどこら辺なんだ?」


『少々待ってください。今、連絡をとりますので』


 そう言うと、ハルは黙り込んでしまった。アダマンタイトの子に念話を繋いでいるらしい。


 ガコン!


 一分ほど経っただろうか。何かが外れるような音と共に地面が揺れた。


 その現象に疑問を抱いた瞬間、目の前の地面に正方形の線が刻まれ始めた。一辺が百メートル弱ほどの図形が形作られた後、急にその正方形が沈み始めた。しばらくして、今度は白い何かがせり上がってくる。


「……ロード族ってのは、相当面白い種族なんだな」


 思わずそんな言葉が漏れた。


 いや、仕方ないだろ?


 突如として巨大なビルが生えてきたんだから、驚きもするさ。


 そう、正方形の穴から出てきたのは巨大なビルだった。元の世界でもよく見かけたものだが、まさか異世界でも見ることになるとは思わなかった。あまりにも場違い過ぎる。


『思い出しました。研究所はこんな感じでしたね。引きこもり期間が長すぎて忘れていました』


 ジンを軽く凌駕する高さ。何でできているのかは知らないが、見た目はコンクリートのようだ。


 ビルこと研究所を見上げていると、正面にあった扉が横にスライドした。自動ドアまで備えているなんて……


 明らかに俺たちを誘うように開いた扉を、特に遠慮することなく潜る。ほんの少しだけ警戒はするがな。


 文明の進度が異常に発達した研究所の中に足を踏み入れると、ヒンヤリとした空気が肌を撫でた。外の空気は少しじめじめして温かったから、これは建物内で起きた風だ。もしやエアコンがあるのか……?


 研究所の一階は、特にこれといった物は無かった。エントランス、としか言いようが無い。無駄な装飾なんかが悉く省かれているから、ちょっと殺風景だ。


『ようこそ、第一魔法研究所へ』


 俺とハル以外は誰もいないはずの部屋に、無機質な女性の声が響いた。振り向くと、いつの間にか女性型で全身真っ黒のマネキンが後ろに立っていた。


『私は研究所の案内役を担当する、生命金属No.3でございます。No.1から聞いているとは思いますが、アダマンタイトの生命金属です』


「はぁ、どうも……」


 恐ろしく丁寧なお辞儀をしてくるアダマンタイトに、こちらも礼を返す。


「えっと、No.3さん、でいいのか? 聞きたいんだが、No.1ってのはこいつのことか?」


『その通りでございます』


 右手のブレスレットを掲げると、No.3は確かに頷いた。


『ではこちらへ。所長がお待ちになっております』


 慇懃な態度で案内を始めたNo.3についていく。階段横に設置されたパネルを操作したかと思えば、すぐ隣の壁が開き、直方体の箱が姿を現した。もしかしなくてもこれ、エレベーターだ。


 もはや驚くこともなく乗り込み、ちょっとの間懐かしい感覚に浸る。


 最上階に着いたエレベーターを降りた俺たちは、No.3の先導でとある部屋に向かっていく。


「なあ、No.3。所長ってのは生きてるのか? ロード族って滅んでるんだよな?」


 その道中に最も気になったことを訊いてみるが、


『……どう、なのでしょう。申し訳ありません。適切な表現が見つかりません』


 というよく分からない答えをもらった。ゾンビにでもなってるのか?


 何にせよ、軽く警戒しておこう。


『こちらでございます』


 一つの扉の前で案内が終わった。No.3が重そうなその扉を静かに引き開けたその刹那、僅かな隙間から一本の針が飛んできた。


 狙い違わず俺の眉間へと迫ったその針は、刺さることなく跳ね返って床に落ちた。この程度の攻撃で一億を超える耐久値を貫けると思ったら大間違いだ。


 しかし、物騒なことをしてくれる。速さもなかなかだったし、明確な害意を感じる。


 そんな出来事もお構いなしにNo.3が扉を開き切ると、一人の青い女性がゆったりと歩み出てきた。


「ふふふっ。私特製の麻酔針を使えば、あのクラーケンでさえ一撃で仕留められる……」


 目を閉じ、芝居がかった口調でそう言う女性は、半透明(・・・)の体で奇妙なポージングをする。


「例え虹の迷宮を制覇した者といえど、抗うことは不可能! 私の頭脳が生んだ最高傑作ですもの、当然ですわ!」


 大仰な振る舞いで縦ロールの髪を払った女性は、ゆっくりと目を開いていき……


「さあ、存分に見せてもらいましょう。ロード族の試練を潜り抜けた、そのお身体をぉぉぉぉぉおうっ!? なんで平然と立ってるんですの!?」


「いや、まぁ、なんつーか、俺だから」


 ……芸人顔負けのリアクションを魅せてくれた。


「はぁ!? 当たりましたわよね!? さっきの針!!」


「刺さんなかったけどな」


 青色の艶美なドレスの上から白衣を羽織った奇妙な女性は、俺の言葉に膝をついて嘆き出した。


「そ、そんな……私の最高傑作が……」


「な、なんか悪いな。大丈夫か?」


 手を差し伸べると、女性は俺を見上げて申し訳なさそうな顔をした。


「あ、ありがとう……なんて言うと思いまして! 隙ありですわあべしっ!?」


 そんな表情は一瞬だけ。差し出した手に向けて懐から取り出したナイフを突き出してきた女性に、俺はハルを纏った手でビンタをかました。最大限の手加減はしたから、死んではない。


「ふ、ふふふっ、ここまでやるとは……ふふっ、ふふふふふふふふふふふふふふ……」


 うわ、打ち所が悪かったのか。狂ったように笑い出した女性は、のそりと起き上がると、急に笑うのを止めて、ガバッと顔を上げた。


 二つの青い瞳を無邪気に輝かせ、彼女はこんなことを言った。


「素晴らしいっ! 何が素晴らしいのかと聞かれたら上手く答えられないけれど、素晴らしいっ! (わたくし)、感動しましたわっ!!」


 ……こうして、冒頭に戻るわけだ。




はい、何とか彼女を出すことに成功しました。無理矢理感が否めないのは気のせいです。


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