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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第四章 頑張る人外さん
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第一次リュケイア戦争・前

ま、まさかの前後編……


ごゆっくりお読みください。

 例え話をしよう。


 ある所に、とても力の強い男がいるとする。腕の一振りで山を崩し、脚の一振りで海を割る、そんな男だ。


 ある時、争いが起きた。争いと言っても、腕に覚えがある人同士の殴り合いの喧嘩だったが。


 小規模な争いだったが、喧嘩は止まらなかった。何故なら喧嘩をしているのは両者ともそれなりの実力を持った人であり、介入することが難しかったからだ。


 と、そこに例の男が現れた。


 瞬間……喧嘩は終わった。


 どうしてか?


 例え話の解答としては……男の機嫌を損ねないため、というものが適切だろう。


 超人的な力を持つ男を怒らせてしまえば……明日の朝日は拝めない。


 そんな判断が争いの場に生じるはずだ。まぁ、それが真実となるかは分からないが。例え話だから別に構わない。


 もう一つ、今度は違う例え話をしよう。


 出てくるのは先ほどと同じ男。


 シチュエーションも似通っていて、男がちょっとした争いの場面に出くわすといったものだ。


 ただし、大きく異なる部分が存在する。それは争いに参加する人だ。


 今回はその人たちを「男が愛する、または男を愛する女性」だとしてみよう。


 争いの種は、当然の如く男。


 さあ、この状況。


 果たしてどうなるのか……


 おっと、それを知るいい例がここにあるぞ?


 ちょっと覗いてみよう……って、いつまでこんな茶番を続けてるんだ。


 男というのは俺こと渡良瀬 晋一だ。これは言わずもがなだろうさ。


 で、女性というのは……


「? にゃんのことだー?」

「ゆ、ユリアはまだ知らなくていいかなー……」

「ふみゅぅぅぅ……」

「……私は、もうデキる」

「我もだ! ……まだ実践したことはないが」

「……それを言っちゃ、ダメ」

「そ、そんな技術が……!」


 ……首を傾げる猫耳娘のユリア。赤面しつつも耳だけはしっかり傾けている犬耳娘のエレン。トマトのように赤くなって目を回しているエルフのリリシア。自信満々に薄い胸を張る狐耳娘のカグラ。対極的に零れんばかりに豊満な胸を張るドラゴンのバロック。そして、メガネがズレるのも気にせず食い入るように話を聞く勇者の御堂 栞。


 以上の六名が争いの参加者である。


 では、たった今御堂が聞いている「話」とは何のことか?


 それは、「男」が止めること能わぬ争いを瞬時に解決した功労者による「講義」であり……


「あらあらあら。皆様興味津々で、お教えする私も嬉しくなってしまいます。では、次の手に……」


 ……ありていに言ってしまえば、カグラの母、ヤヨイさんによる「好きな人を悦ばせる百の方法」のことだ。


 目の前で繰り広げられるせい(・・)教育に、俺はそこはかとない身の危険を感じていた。


『マスター、ほんの少しだけ期待してません?』


「………………してない」


『へー、そうですかー』


 ……ないったらない。






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「うおおおお! シンイチではないかーーーーー!!」


 狐人族の里に入るや否や、超ボリューム(何がとは言わない)に迎え入れられた俺は、気絶した御堂を落とさないように担ぎ直した。身体強化の魔法はかけていたようだが、どうにも速すぎて耐えられなかったらしい。なんとなく幸せそうな顔をしているのは気のせいだろう。


「久しぶりだな! 寂しかったぞ! 会いたかったぞーーー!!」


「二週間ぶりでこのテンションかよ……ま、久しぶり」


「む、その娘は誰だ?」


 バロックが背負われている御堂に気づいて怪訝な顔をした。


「あー、こいつは勇者……って言って分かるか?」


「……勇者、だと? 言われてみれば、確かに感じられる魔力量が桁違いだ。相当な強者だな。今まで見たことがない程だ」


 お、分かったのか。召喚の儀が伝承になってるというから、以前にも勇者はいたんだと仮定したんだが、当たりだったみたいだな。


「それで、どうしてその娘がここにいるのだ?」


「あー、それについては事情があってな……一旦、カグラの家に行こう」


 狐人族の里、その中でも最も大きな建物へと向かう。


「……シンイチ、お帰り」


「ただいま……で合ってるのか?」


 家の前には既にカグラがいた。ちょっと挨拶が不自然な気もするが、気にしないでいいだろう。


「……? シンイチ、また、嫁……?」


「違う……とりあえず中に入ろう」


 御堂を見てそんなことを仰る狐っ娘の背を押し、家の中へ。俺の部屋として割り振られた四階の一室に直行する。


「そういや、今日はヤヨイさんはいないのか?」


「……族長としての仕事がある、らしい」


「らしい、ね……」


 本当のところは何をしてるのか。


「それでシンイチ。その娘をどうして連れてきたのかについて、我らに教えてくれ」


「了解ですっと。んーと、先ずはだなぁ……」


 ここに至るまでの経緯を掻い摘んで説明する。途中からバロックが首を捻り始めたが、カグラは理解できてるようだった。


「……と、こんな感じだ」


「むぅ、シンイチよ。分からないことがあるぞ」


「ん? どこら辺のことだ?」


「そもそも、何故シンイチがその娘に会いに行く必要があったのか、というところなのだが……」


 あ、そういえばバロックはあの時いなかったんだっけ。


「一応、俺と御堂は同郷なんだ。つまり、俺も勇者としてこの世界に来たってこと。それが理由といえば理由かな」


「なっ、シンイチは勇者だったのか!? なるほど、道理で強いはず……いや、それにしても強すぎるような……」


 あらら、何か考え始めちゃったよ。手持ち無沙汰なので膝の上のカグラを撫でてやると、気持ち良さげに目を細めた。


 俺が勇者だと……正確には異世界の人間だというのは、三ヶ月前にバレた。あれは元奴隷組でエルフの里に集まった時のことだな。久しぶりに全員で遊ぼうか、という


『やあ、晋一くん。それにお嫁さんの皆さんも。ようこそエルフの里へ』

『? しん、いち? 何だか、私たちと族長さんでは、呼び方が少し違うみたいですけど……』


 そんなエレンの疑問から、俺の正体が明らかになってしまった。もちろん、「銀狐様」のスキル大活躍である。


 実は族長さん、過去に俺と似た名前の人と出逢ったことがあるらしい。それが勇者かどうかは分からないが、発音を矯正されたそうだ。その名残が現れてるってわけだな。


 その時の亜人娘たちの反応はというと、とてもあっさりしたものだった。エレンはむしろ、


『それじゃ、私たちがシンイチさんと出逢ったのは……運命、だったんでしょうか?』


 などと言っていたくらいだ。ま、異世界人だからといって忌避される要素は無かったということだろう。


「うぅん……」


「……あ、起きた」


 カグラを撫でたりバロックを撫でたりついでにハルを撫でたり、なでなで三昧の時間を過ごしていると御堂が目を覚ました。


「……? ここは……? 渡良瀬くんは……?」


「おーい、しっかりしろー」


「あ! 渡良瀬くんっ!」


「お、っと」


 状況が把握できていない御堂に声をかけると、急激に覚醒してこちらに飛び込んできた。カグラが落ちないように抱きとめる。


「? 何かある……」


「……くっ、大きい……!」


「えっ、あっ、ごめ……ん?」


 そのせいで俺と御堂の間にカグラが挟まってしまった。何のことか分からないがカグラにしては感情的な声音だ。それを聞いた御堂が戸惑いつつも離れ、止まった。


「……渡良瀬くん。その子……誰?」


 銀の狐耳を指差し尋ねてくる御堂の目には、困惑の色が多分に見受けられる。


「王城で俺が奴隷になった時の話をしただろ? 奴隷だった狐人族のカグラっていうのがこいつのことだ」


「あ、あの子が……」


 実物を見て驚いているみたいだな。艶のある銀の髪と、同色でふさふさの尻尾。眠そうな半目がまたなんとも可愛らしい……そんなカグラをしばらく眺めていた御堂は、にっこりと微笑んだ。


「初めまして、カグラちゃん。私は御堂 栞っていうの。渡良瀬くんとは……えっと、友達? かな?」


 チラチラとこちらを見ながら疑問符を連続させる。よくよく考えれば俺と御堂の関係って微妙だな。他人ってほど離れてなければ、友達とも言い難い。まぁ、こんな奴の友達でいてくれるなら嬉しいけどさ。


「御堂、そっちの紫髪のやつがバロックだ」


「よろしくだ、ミドウよ!」


「ええ、よろしくお願いします、バロックさ、ん……」


「む? どこかおかしなところがあったか?」


「えっ? い、いえ。何でもないです……」


 バロックが手を差し出し、御堂がその手を握る。しかし、メガネ越しの視線はバロックの特徴的な部位に注がれていた。その後、少しだけ自分のと比較して俺の方をチラ見し出した。なんなんだ、俺はそこ(・・)に強い拘りは無いぞ。


「……大丈夫、大きさだけじゃないもん。ところで、カグラちゃんはどうして渡良瀬くんの膝の上にいるのかなー、なんて……」


 気を取り直した御堂がカグラに向き直すが、頬が若干引きつっている。


「……シンイチのことが好き、だから」


 おおう、ストレートなお言葉ありがとうございます。ただ、日本人の御堂からするとその発言は少し危ない。


「へ、へー。それは、妹が兄を想う感じの好き、ってことかなー……?」


 御堂の頬がヒクヒクと動いている。何かちょっと怖いな。下手したら俺のことをロリコン扱いしてくるかもしれない。


 結婚の話をしてないから、御堂には俺とカグラの関係は読めていないんだろう。


 誤魔化すべきかと口を開こうとした瞬間、カグラに先手をとられた。


「? ……何の話か、分からない。私は『妻』として、シンイチのことが好き」



 ビシィッ!!!



 そんな音が聞こえそうな感じで御堂が完全に固まった。辛うじてその唇が言葉を紡いでいく。


「………………『妻』?」


 言い終わると同時に、御堂から魔力とは違う多大なプレッシャーが発された。






 ーーーー戦争が今、始まった。




前話で御堂の魔力が上がっていたことについてですが、あれは「魔力漏れ」の度に少しずつ上昇していたのだと考えてください。


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