紫色の告白
今回は内容が雑になってます。
ごゆっくりお読みください。
「ふむ、なるほど。君は偶然バロックと会って一緒に行動していて、彼女の頼みでここに来たんだね」
「まぁ、大体そんな感じだな」
新たにやって来た古龍たちに軽く状況の説明をした。同時に、それぞれの名前も教えてもらった。
「君も物好きだね、シンイチくん」
ふむふむと頷きながら俺を観察しているのは「蒼龍」のディール。群青色の髪に紺碧の瞳。落ち着いた性格の常識人。
「人間を見るなんて、何年ぶりかな〜」
のんびりした口調で人懐っこい笑顔を見せているのは「黄龍」のノット。黄というよりも黄土色の髪に同色の瞳と褐色の肌をもち、マイペース。
「…………」
一言も喋らずに腕を組んでいるのは「黒龍」のジン。黒髪の大男で、気難しい性格なのかこちらを見向きもしない。
「クフフフフフフフフフ……」
怪しい笑みを溢しているのは「白龍」のワース。肩まで伸びた白髪を無造作に垂らしたアルビノっぽい優男。名前を言ってからずっとこの調子で笑い続けていてキモい。
「うーん……弱そうだけど」
ジーっと俺を眺めながら首を傾げているのは「緑龍」のフィトム。透き通る翠色のセミロングの髪に同じく綺麗な翠瞳。ユリアと変わらないくらいの低身長な少女。
「見た目はな。こいつ、やるぞ」
紅い目を爛々と輝かせているのは「紅龍」のカイン。血を思わせる赤黒い短髪の男で、闘争心が見え隠れしている。というか見え見えだ。
で、カインを除いた五人は、未だに一糸纏わぬ姿である。ノット曰くむしろ服を着ているのが珍しいとのこと。カインはビジュアル系みたいな格好をしているが、これはカインが強そうだと思ったから着てるだけで、別に服飾に興味は無いらしい。
因みに言っておくが、俺はもう慣れてしまった。できるだけフィトムを視界に入れないようにしてはいるがな。
「それで、話というのは何だい? あのバロックが随分と真面目なようだけど」
「……今から話す」
ディールが本題を催促すると、バロックはいつになく真剣な面持ちで俺の隣に並んだ。
「えー、集まってくれてありがとう。今日は皆に、言いたいことがあってきたのだ」
古龍たちの視線がバロックと俺に集中する。バロックは一度深呼吸をして、その場を凍りつかせることを言い放った。
「わわ、わ、我は、こっ、ここにいるワタラセに、ほほほ惚れてしまったのだ!」
……噛みまくりで。
シーンと静まり返るスカイウォールの頂上。風が吹き抜ける音だけが残った。
「き、緊張したぞ……」
ふぅ、とやり切った表情で脱力するバロック。そうか、ここに着いてから妙に大人しかったのは、緊張してたからなのか。
一人納得しつつも、唐突な展開に驚きを隠せない。今ここでそれを告白する理由があるのか? 古龍たちの間に取り決めでもあるとか、そういう類の。
「ワタラセ。お前があの娘たちと過ごしている時、我は苦しい気持ちで一杯だった。だが、こうして隣にいると、どうしてか心が安らぐ気がするのだ。きっと、これが『好き』ということなのだろう?」
バロックが俺に向き直り、見つめてくる。
「我もお前を想っているぞ、ワタラセ。これで、我とお前は『対等』なのだな……」
そっと目を閉じ、胸に手を当て、囁くように言った「対等」。
それに対し、俺は反応することもできずに、頭の中で何を言うべきか考えていた。
その時。
六体の古龍から、物理的な重さを感じるほどのプレッシャーが放たれた。
「……対等、と言ったか?」
ジンが口を開き、地の底まで響くような声で確認するように問う。
「ああ、そうだ。我とワタラセは対等な関係だ」
バロックの芯のある返答を受けた古龍たちは、一斉に俺をターゲットした。
「バロックが惚れて〜……」
「しかも対等なんて言うなら……」
「クフフフ、それが示すのは一つだけですねぇ……」
「あァ、こんなに分かりやすいこたァねェぜ!」
「ええ、それはつまり……」
一拍の後に、ディールが紡ぐ。
「あなたが、バロックと同等以上に強い、ということ……」
ノットのマイペースな笑みは崩れ、その薄い唇から鋭い牙を覗かせている。フィトムの翠の髪が逆立つように蠢く。ジンはその顔に小さな笑みを浮かべ、ワースは舐めるような視線に仄かな敵意を織り交ぜ、カインは興奮したようにギラギラと目を輝かせる。
そしてディールまでもが、紺碧の瞳から知性の光を捨て、ドラゴンの野生を映している。
……そういやこいつら、全員ドラゴンなんだよな。強さを基準に物事を考えるような奴らなんだった。カイン以外はそんな素振り無かったから忘れちまってた。
「シンイチくん、僕たちと勝負してくれないかな? もちろん、嫌とは言わせないよ?」
そこは言わせろよ。
「あー、できればやりたくないんだが、どうしても闘わなくちゃダメか?」
「う〜ん、ダメかな。だって古龍に認められるほどの強者だよ? ここで見逃したら惜しいよ〜」
「そうそう。バロちんと対等なら、私たちとも互角なわけだし!」
「久々に手応えがありそうですねぇ。クフフフフフ……」
「男たるもの、よもや逃げるなどとは言うまいな?」
「やろうぜェ、シンイチよォ。オレはいつでもいけるぜェ……!」
……ですよねー。やらなくちゃいけないですよねー。分かってたけどさ、面倒くさいんだよな。
「ワタラセ……我はお前と一緒にいたい。ダメか……?」
不安そうなバロックだが、よくこの状況で続けられるな……
「バロック、お前の気持ちは分かった。けど、それを伝えるのになんでここに来る必要があった?」
別に告白するだけならどこででもできると思う。それをわざわざスカイウォールでする理由が分からなかった。
「む……それは、我の仲間たちに教えたかったからだ。我に好きな人ができたと」
「……そうか」
なんとも言えねぇ……否定するも肯定するも微妙な理由だ。その気持ちは理解できなくもないが、事後報告でもよかったと思う。
『……マスター、勝負を受けてみては如何ですか?』
見目麗しい女性から好意を向けられる傍らで、戦闘狂からは狂気の視線を向けられている。そんな混沌としたシチュエーションの中で、ハルがそんな提案をしてきた。
「一応、理由を聞こうか?」
『……バロック様の方は、後でも対応はできます。今はディール様たちを処理してからの方がいいと考えました。それに……』
短いタメの後、俺にだけ聞こえる声で言う。
『……マスターなら勝てますよね?』
無機質だが、確信している。そんな声だった。
「それはどうだか……けど、確かにハルの言う通りかもな」
バロックが本気だというのは分かる。ならば、それに適当に答えてはいけないだろう。俺にも少し時間が欲しいところだから、先に古龍たちの相手をしてしまった方がいいかもしれない。
「バロック、返事は待っててくれ。ディール、勝負は受ける」
「ワタラセ……」
「よくぞ言ってくれた、シンイチくん。それじゃ、舞台を移そうか」
ディールがそう言うと、六人全員がドラゴンの姿になった。紅、蒼、黄、緑、黒、白の六色のドラゴン。
『さぁ、行こうか』
ディールが蒼い鱗に覆われた背中をこちらに向けるので、それに飛び乗る。バロックはフィトムに乗った。すると、翼を一打ちして離陸したディールは、急加速して飛び立った。
降下していくディールの背に捕まって数分。飛行速度が緩んだかと思うと、ディールは静かに着陸した。
『ここが勝負の舞台だよ』
ディールの背から降りて辺りを見回す。スカイウォールの頂上と変わらぬほどに何も無い……わけでもない場所。所々に変なオブジェクトが立っていたり、何故か地面に凍っている部分があったり。
「ここって、ムサ大陸か?」
『ええ、僕たちの遊び場、ムサ大陸。ここなら邪魔するものも無くていいだろう?』
……あー、そうか。ムサ大陸が「生物の定住に適さない」って、ドラゴンが暴れまくるからか。
『結局勝負つかなかったよね〜』
『あれはワースが逃げに走ったからだよー!』
『クフフ、遠距離攻撃は立派な戦術ですよ』
『ふん、力の無い臆病者めが』
『おや? 力しか無い愚か者が何かをほざいているようですねぇ……』
『なんだと……?』
『君たち、今は彼がいるだろう?』
ジンとワースが睨み合いを始めた。それを俺を使って収めるディール。それを見計らってこちらの要望をぶつける。
「えっとさ、勝負するのはいいんだが、一対一でいいか? 流石に一対六っていうのはな」
『構わないよ。元よりそのつもりだったからね』
よし、その条件さえあればいいんだ。それさえあれば大きな問題は無い。
「ワタラセ、本気でやるのか?」
人間形態のバロックが、心配そうに、だけどどこか期待した目をして尋ねてくる。
「そりゃそうだろ。なんせ相手は最強のドラゴンだからな」
「……死ぬなよ?」
口調はいつも通り。でも、懇願するようなバロックに、軽い調子で返す。
「俺が死ぬと思うか?」
バロックが何かを言う前に、ディールたちに向き合う。
さぁ、力比べの始まりだ。
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