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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第三章 旅、それは男のロマン
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久しぶりに

もうルーフィムとはサヨナラです。


ごゆっくりお読みください。

  猛スピードで駆ける馬車が一台。とても馬車とは思えない速度で舗装もされていない道を疾走するのは、額からサファイアと見紛う程に綺麗な青の角を生やした、一頭の馬。


  まぁ、当然の如く馬はブルであり、それに乗るのは俺たちである。


「……おい、まだ五日目だぞ。なんでキュボエが見えてきてるんだ」


「やればできるではないか、馬!」


『マスター、ブルーホーンからの生体反応が弱まってきています』


  ルーフィムの街を出てから五日目の朝。馬車で二週間はかかるはずのキュボエまで、三分の一近い時間で到着しそうだった。


  それもこれも、バロックがブルにプレッシャーをかけて、ブルがそれから逃げようとしているからだ。


  一応、俺とハルは馬車から降りてブルと並走している。ハルが意外に重かったので、俺たちが乗っていてはブルの負担になるだろうという考えからそうしているのだが、横に見えるブルの形相がものすごいことになっていて、こっちまで苦しくなってくる。というか、ハルの報告がその苦しみを表してる。


『およそ三分で到着します』


「見た感じ、後二キロはありそうなんだがなぁ……」


「馬よ、ワタラセに負けてはいけんぞ!」


「ブルルルゥゥゥゥゥウ!!!!」


  ……ブル、すまない。








  目が虚ろなブルを厩舎に置かせてもらってから、ギルドの二階へと向かう。


「おお、お前さんかってルーフィムに行ったんではなかったか?」


「ブルが……預けていた馬が張り切りすぎて」


「……いや、いくらあの馬が魔物であっても、二週間で往復するのはおかしいぞい」


  呆れっぷりが様になってる。その原因は多分に俺にある気がするが、気にしない。


「今日は報酬を受け取りに来たんですが……」


「魔銀貨三枚だのぅ。ちょっと待っておれ」


  そう言うと、部屋の隅にある棚をゴソゴソと漁って……ってステータスプレートもそこに入れてなかったか? その棚はなんなんだ。


「お、あった。ほれ、これが魔銀貨じゃ」


  差し出された三枚の魔銀貨を手にとって眺める。んー、なんつーか、これ……


「ハル、これってミスリルか?」


『……はい、推測通りミスリルです。ただし、それ以外の鉱物も混じっているようですが』


  やっぱりか。なんか兵装魔物に似た色をしてると思ったんだよな。こっちの方が少しくすんでるけど。


「? 今の声はなんじゃ?」


  爺さんが小首を傾げてる。ああ、ハルのこと説明してなかったな。


「今のはこいつのです」


『初めまして、ハルと申します。マスターがいつもご迷惑をおかけしているようで』


「な、ぶ、ブレスレットが喋っておるのか……?」


  右手を掲げてハルを示すと、ハルは丁重に挨拶をして要らんことを宣った。それに対し、信じられないものを見たという表情の爺さん。


「知性を持った金属なんぞ、聞いたこともない。しかもその色、オリハルコンではないか……どこで手に入れたんじゃ?」


  おお、オリハルコンって分かるのか。爺さんも実物を見たことがありそうだな。


「迷宮の最下層です」


「………………もう驚かんわい」


  爺さんは深い溜息を吐く。あんまりにも突飛な話ではあるが、爺さんは信じてくれるみたいだ。呆れというか、諦めが大部分を占めてる気がするけど。


「それで、次は何をするんじゃ? スカイウォールでも征服しに行くか?」


  いや、しねぇよ。なんでそんなことをする必要がある。


「いえ、リュケイアに行きます。会いたい奴らがいるんで」


「……ほほう。それは前に言っておった『守りたい人たち』か?」


「……ええ、そうです」


  爺さんの目がキラリと光った。


「なんじゃ、お前さんも青春しておるではないか! ちょっと安心したぞい。儂も若い時は……」


  マズイ、年寄りの昔話ほどに長いものは無い。校長のスピーチより長いんだから。


「そ、それじゃ、船の時間がそろそろなんで、俺たちはもう行きます」


「それはもう何人もの美人が……ってもう行ってしまうのか。まだまだ序盤なんだがのぅ……」


  いいよ、プロローグで終わっとけ。他人のモテ自慢なんて聞いても得が無い。


  不満そうな爺さんを放置して一階へと下りていく。受付嬢に会釈して外に出ようとした時……


「おい、『屠龍』が来たぞ」

「すげえ、生の『拳神』だ……」

「サイン貰いに行こうぜ!」

「や、やめとけ。機嫌を損ねたら消されるぞ」


  ……そんな会話が聞こえてきた。二つ名が増えてるのは何故だ。お前ら暇なのか?


  くそ、気にしたら負けだ。どう呼ばれようと気にしてはならない。


  今は昼前なので、船の時間が迫っているのは本当だ。駆け足で船着場へと向かう。足取りが軽いのは、気のせいではないな。






「……ワタラセよ」


「ん? どうしたバロック?」


  リュケイア行きの船の中。またしても俺とバロックは同部屋なんだが、ちょっとバロックの様子が変だった。


「……楽しそうだな」


  むくれてるというか、なんというか。ぷくっと頬を膨らませている。


「そうか? まぁ、楽しみなのは間違い無いな」


  二週間程度しか離れてないが、もう長い間会ってないような気さえする。ユリア、エレン、リリシア、カグラ。皆は元気にしているだろうか?


「……むぅ」


「本当にどうしたんだ? なんか気に障ることでもあったか?」


  唇を尖らせて恨めしそうにこちらを睨んでくるバロック。どっかで変なこと言っちまったのか?


「……よく分からんが、胸の辺りがモヤモヤする」


  ……? 気分でも悪いのか?


『……マスター、クズですね』


「えー……」


  バロックはそっぽを向いてしまうし、ブレスレット形態のはずのハルからは軽蔑の視線を感じる。これは何かやらかしちまったみたいだ。


  気まずい雰囲気のまま、海の上を行く。結局、バロックが機嫌を直したのは夕食の時だった。






  リュケイアに大陸の玄関口、港町ロニエに着いた俺たちは、先ずはシームンに向かうことにした。


「バロック。走っていこうと思うんだけど、大丈夫か?」


「むむっ、我が負けるとでも思っているのか?」


  大丈夫ってことかね。


「んじゃ、ちゃんとついてこいよー」


「遅れるわけがないだろう!」


  ロニエから西に向かって駆け出す。最初は早歩きぐらいのペースで時速五十キロくらいか。


「ふっ、その程度かワタラセ?」


  隣のドラゴンさんは余裕のドヤ顔を披露している。そりゃこんな速度で音を上げるわけないよな。


「この程度だったらまだいいんだがね……」


  駆け足ペースまでギアを上げ、時速百キロを超える。


「ふふっ、我はまだまだいけるぞ。もしやこれが限界か?」


  隣の絶対種さんのドヤ顔は健在。こんな程度で限界にならないのは当然か。


「なら一気にいくぞー」


  駆け足から長距離走に、時速三百キロまでスピードアップ。


「ふ、ふふっ、よ、余裕だ、よゆー」


  ちょっとドヤ顔が崩れてきた。それでも口を動かすだけの余力があるんだから、全然平気そうだ。


「じゃ、もう一段階上げてくぞー」


「わ、ワタラセ。いくら我にいいところを見せたいからといって、強がらなくとも……」


  バロックが何か言ってるが、スルーして時速六百キロくらいに。とは言っても、実際にどれくらいの速さかは分からないんだけどさ。なんとなく倍くらい速い気分。


「ーーーーーーーッ!」


  おや? 隣にいたはずの古龍さんが見当たらないぞ? チラッと後ろを見ると、全力疾走している姿が確認できる。


  ……遊ぶのはやめるか。


  既に目の前に目的地があるため、突っ込まないようにブレーキをかける。


「のわぁぁぁああ! き、急に止まるなぁぁぁあ!」


「よっ、と」


  勢いを殺せずに突っ込んできたバロックを、回転するようにしてできる限り優しく受け止める。


「ッ! ……ほへ?」


  衝撃に備えて身体を緊張させていたバロックが、間の抜けた声を上げる。


「悪い、ふざけすぎた。大丈夫か?」


「……あ、ああ、大丈夫、だが、その、あの……」


  抱き止めたバロックが真っ赤になっていく。近づきすぎちまったか?


「ワタラセは、その、今のは本気ではなかったのか……?」


  と思ったが、変なことを聞かれた。今更こいつに隠すことでもないし、素直に答えよう。


「正直言って、準備運動と変わらなかったな」


「そそ、そうか……それで我より速いとは……」


  一瞬悔しそうに顔を歪めたバロックだが、すぐに惚けた顔になる。何故に。


「やはり、ワタラセは強かったのだな……」


「そこいらのドラゴンよりはな。ほら、立てるか?」


「あ、う、うむ……」


  突然しおらしくなってしまったバロックを放して、猫人族の町シームンへ。


  さあ、待ってろよユリア。たっぷり遊んでやるからな!




おや、バロックの様子が……?


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