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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第三章 旅、それは男のロマン
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お返しのスカイダイビング

ちょっと展開に無理矢理感が……


ごゆっくりお読みください。

  飯を食べ終え、宿屋に戻ってきた俺たち。腹が膨れて眠くなったのか、バロックは早々にベッドに沈んだ……俺のベッドに。


『マスター、今ならイタズラし放題ですよ』


「しねぇよ」


  仕方なくバロックのベッドに腰掛けてハルと他愛も無い会話をする。ちょいちょい今のような冗談を飛ばしてくるから油断ならない。こいつを造ったロード族とやらは随分と個性の強い種族みたいだな。


「ってそういや、ロード族ってのはどんな種族なんだ?」


『一言で説明すると、研究者、です』


「研究者?」


『はい。新たな魔法を創造することから始まり、魔物の強化、私のように無機物に生命を付与すること等、割となんでもやってました』


  それはまた変わった種族なんだな。ハルを造るのは成功してるんだし、頭のいい連中だったんだろう。


「で、今はもう滅びちまったわけか?」


『言わずとも分かりましたか』


「過去形の話し方だったしな。それに、そんな珍妙な種族、話題に出ないのはおかしい。大分前に滅んじまったんだろ?」


『はい。今から約八百年ほど前のことのようですが、私はその頃には迷宮にいましたので、伝え聞いた程度でしか知りませんが』


  八百年か。その間に忘れられちまったんだろうな。


  それとは別に、また一つ気になることができた。


「伝え聞いた、って誰からだ?」


『私の姉妹です。正確には、私と同時に造られたアダマンタイトの生命金属です。私たち姉妹は念話で意思疎通ができますからね』


「なるほど。そのアダマンタイトの奴は何て言ってたんだ?」


『極大魔法陣の形成に失敗して大陸の表面ごと吹き飛んだ、と』


「……なんだそりゃ」


  大陸の表面ごとって、一体何をやろうとしてたんだよ。


『情報をくれた子は生き延びたみたいですが』


「流石はアダマンタイトってところなのか……」


  大陸の表面ごと吹き飛ぶような状況で生き残る。地球ではオリハルコンと並ぶ伝説の金属だと言っていた気がするが、どうやら本当にそうらしい。


「その大陸ってのは、ムサ大陸のことか?」


『その通りです。マスターは察しが良すぎて怖いです』


「嘘吐け」


  軽口には大きなリアクションを返さないのが一番だ。


  しかし、予想通りだったな。その大陸がリオスやリュケイアではないとは、両大陸の自然や文化の発展具合から見ても瞭然だ。また、ノーグラスである可能性もゼロではないが、生き物が定住できないような悪環境だというムサの方が可能性としては高いと踏んだ。魔法の影響でそうなったと言えばしっくりくるな。


  ムサ大陸も異常なところなのだろうと考えていると、一つ思い出すことがあった。


「そうだ。まだゲルグの爺さんからの報酬を受け取ってないから、それも取りにいかないと……」


  一週間で用意できるって言ってたし、戻った時にはもう魔銀貨三枚が待っているはずだ。


  迷宮にももう行きたくないし、すぐにでも街を出てしまうか。亜人娘たちにお土産を持って行くのは……また今度だな。


『マスター、どうしたのですか? 急に黙ったりして』


「ん、明日っからの計画を立ててたのさ」


『そうでしたか。てっきり目の前の無防備なエサをどう食らおうかと思案しているものとばかり……』


「なんでだよ」


  失礼な金属だ。マスターに対する口の利き方じゃないぞ。


  チラッとバロックを見る。気持ち良さそうに寝息を立てて、涎を垂らして。これが最強クラスの怪物だとは到底思えない。


  ふと、怒りが湧いてくるのを感じた。数時間前の出来事がフラッシュバックする。


  あのクズ、バロックに手を出したんだよな……それに、俺のことを殺そうとしてたわけだ……


  迷宮最下層で見た幾つかの人骨。あれの中に、同じ手口であいつに殺された冒険者がいたかもしれない。そう思うと、俺の心がどんどん冷えていく。奴隷に堕ちた時と似た気持ちになる。


  ……やるか。


「ハル、一旦離れてバロックを見ててくれないか?」


『了解しましたが、どこに行くのですか?』


「ちょっとしたお遊びにな」


  ハルの質問には適当に答えつつ、一度離れてもらう。ハルが人化したのを確認し、バロックの寝顔を一瞥すると、俺は部屋を出た。


  さて、見つかりますかね……






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「な、なんだったんだ、あいつ……」


  未だに恐怖で震えが止まらない。鳥肌が立ち、嫌な汗が流れる。


「に、逃げなきゃ……」


  自然と、俺の足はルーフィムから遠ざかろうとしていた。馬車も何も無いが、それを調達している時間すら惜しい。そもそも、それを求めて街に戻るのは自殺行為だ。


  紫。


  あれは人じゃない。あんな存在がいる場所には一秒たりともいたくない。


  Aクラスになるまでに、色んな魔物と遭遇した。幼龍ではあったが、ドラゴンにも遭ったことがある。


  あの女の放つ威圧は、ドラゴンを容易く超えていた。あそこまで強い死の色を見たのは初めてだった。


「はぁ、はぁ……」


  もう既に夕暮れの時間。王都へと続く道の途上には誰もいない。


  オレンジ色に染まる馬車道を、ひたすらに逃げ続ける。ここにいてはいけない。ここにいたら殺される。


  迷宮で目覚めた俺は、止まることなく走っていた。だから、もうルーフィムからも大分離れている。


「はぁ……ふぅ……」


  足に限界が来たのか、もう進める気がしない。でも、ここまで離れればもう大丈夫だろう……


「探したぞ、クズ野郎」


  後ろからかけられた声に、ビクッと肩を揺らす。恐る恐る振り返ると、そこにはいるはずのない人がいる。


「な、なんで、生きて……」


「あんなもので死ぬほどヤワな身体じゃねぇんですわ」


  黒髪の男は張り付けたような無表情でこちらに近づいてくる。


  間違い無い。あのトラップに嵌めた男だ……!


「よくもまあ、うちの連れに手を出したもんだ。それで生きてるっつーのも大したもんだがな……」


  肩を竦めて、男は顔を歪める。その様はまさしくーーー



  ーーーーー悪魔。



「ぇ、あ……ぅぐ……」


  声が出ない。あまりの恐怖に頭の中が混乱している。


  何も分からないままに、俺は奴に背を向けて走り出した。さっきまではもう動かない程に疲弊していたのに、今までよりも速く走れている。


「逃げるのは愚策だな」


  だが、俺の目の前には悪魔が待ち構えていた。確かに後ろにいたはずの奴が、どうして……!


「先に言っておくけど、命乞いは聞かない。自分を殺そうとした相手を許せる程、寛容ではないんでね」


  気がつけば、悪魔が俺の腕を掴んでいた。


  そして、気がつけば。



  ーーーーー俺は空を飛んでいた。



「へ、あっ! うわあああああ!」


  どんどん上昇していく。地面が離れていき、ルーフィムの街が一望できる高さまで飛んでいく。


  まだ止まらないのか!


  そう思った時、上昇が緩やかになった。俺はホッとしたが、それは大きな間違いだった。


  人間は空を飛べない。


  勢いを失った俺の体は、逆に勢いを増して落下を始める。


「ーーーーーーーーーーーッ!!!」


  自分が叫んでいるのかどうかも分からない。風を切る音が五月蝿くて、他のことが全く分からない。


  一度は遠ざかった地面が、かなりの速度で近づいてくる。


  落下地点には、あの悪魔が。


  ああ、死んだ……


  俺の意識はそこで途切れた。






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「ふぅ、これでいいか」


  素っ裸で白目を剥いているイケメンを前に、俺は一息吐く。二時間も探し回った挙句、街の外とは。無駄な時間とらせやがって。


  とりあえず自由落下のアトラクションを楽しんでもらったが、まさか気絶するとは。根性無いな。


  俺は、高速で落下してきたクズを受け止めてやった。何も配慮なんてせずにキャッチしたから腰の骨なんかはポッキリ逝ってしまったが、これで済むなら安いもんだろう。


  クズの持ち物は全て没収した。服やら剣やら軽鎧やら、全部一纏めにしてぶん投げておいた。これであのクズは奴隷確定だな。つっても、この場合は「公認奴隷」になるだろうが。


「流石に、殺すのはねぇ……」


  俺は殺されそうになったけど無傷だったし、バロックも特に気にした様子は無い。こいつに殺された罪無き冒険者もいたかもしれんが、よくよく考えたら俺がそいつらの怨みを晴らす理由は無い。


  だから、殺さなかった。


  まぁ、人殺しなんて気持ちのいいもんじゃない。あいつらに嫌われても堪らないしな……って。


「これが好きってことかね……」


  苦笑する。離れていると、その存在の大きさを痛感する。


「あー、ダメだ。明日にでも会いに行こう」


  無性に寂しくなった。なんとも気持ち悪いが、きっとこれで正しい。


「そうだ、サプライズプレゼントを用意してやろう!」


  あいつらを喜ばせてやれるような、とびっきりのやつを。


  ニヤニヤを抑えられない。早くあいつらに会いたいと、そう思う。


  柄にも無く鼻歌なんか歌いながら、俺は宿屋に戻るのだった。
















「ただいまー」


「おおっ! ワタラセ! どこに行っておったぁぁぁぁあ!? どど、どうしたのだその顔はーーー!!」


「マスター、鏡をご覧になった方がよろしいかと」


  一気にテンションが下がったのは言うまでもない。


 

 

晋一くん、100%のスマイルで絶対種を絶叫させる。


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