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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第三章 旅、それは男のロマン
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エレベーター

昨日は更新できなくてすみませんでした。


ごゆっくりお読みください。

「そういや、ハルの服はどうするか……」


  現在は人の姿をしているハル。見た目は俺の好みに合わせたとかいう、ちょうどカグラくらいの身長の女の子なのだが、全裸だった。


  俺の服は無い。下はあるが、これを脱いだら社会的に死ぬ。バロックの服は前面が破れていて使い物にならない。


「それなら問題はありません。マスター、手を出して頂けますか?」


「ん? ああ、いいけど……」


「では、失礼します……」


  右手を差し出す。ハルは俺の手をそっととると、少女からマネキンに変化した。その姿のまま少しうねうねとした後、ハルは右手首に巻きついて、虹色のブレスレットになった。


『マスター、聞こえていますか?』


  ブレスレットからハルの声が聞こえた。


「おう、聞こえてるぞ」


『普段はこうしてマスターの側にいますので、必要があれば呼んでください』


  変幻自在ってことか。


「ハル、周りは見えてるのか?」


『はい。オリハルコンは金属でありながら半分は魔力で構成されていますので、非常に魔力感応性が高いです。そのため、周囲の魔力を感知することで状況を把握することができます』


  半分は魔力? なんかよく分からんな。異世界だから何でもあり、で済ませるべき問題だな。


『……マスターは、存在が希薄ですね。触れてなければいるかどうかも分かりません』


  言わなくていい。


  とまぁ、ハルの問題は解決した。なら次の問題だな。


「ハル、転移陣はないのか?」


『ありません。あったとしても、マスターの魔力量では起動さえできないかと』


「そ、そうか。俺の魔力量云々は要らなかったな……」


「むぅ、では階段を登るしかないのか?」


  ハルに心を抉られた。それは置いといても、転移陣が無いのならばバロックの言った方法をとるしかないかもしれん。一階層ずつだとかなり時間がかかりそうだな……


「ハル、ここって何階層なんだ?」


『二百五十階層です』


  …………………………え?


「悪い、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれないか?」


『二百五十階層です』


  ……聞き間違いでは、ないんだろうな。


『? マスターは耳が遠いのですか? ここは虹の迷宮の最下層である、二百五十階層です』


「いや、もう分かった。言わなくていい……」


  二百五十ですか……


「どうしたのだ、ワタラセ? 我はお腹が空いてしまったぞ!」


  いや、知ってるよ。知ってるけどさ、一階層ずつ逆走していったら何時間かかると思ってるんだ?


「……とりあえず、上に行こうか」


  先が思いやられるが、動かなければ何も始まらない。重い足を動かして階段を登る。


  上の階層がどうなっているかを見ようと顔を出して……



  戦車。



  顔を引っ込める。


「ハル。今のはなんだ?」


『先程の魔物はロード族の誇る決戦兵器の一つ、兵装魔物(タンク)でございます』


  あれ、魔物なのか? 決戦兵器って言ったけど、魔物なのか?


  もう一度覗く。透き通ったシルバーのボディは、明らかに戦車だった。よくよく見てみると、砲台のところにギョロリとした目玉が一つ。魔物っぽいのそこだけだな。


『本体部分には純ミスリルをふんだんに使用。老龍の火炎を耐え抜く強度と老龍の鱗を撃ち抜く魔導砲は、一台で一国を滅ぼす戦力になります』


「過剰戦力すぎんだろ……」


  地下に置いとく物じゃない。


「ふむ、老龍の鱗を撃ち抜くと……」


  げんなりする俺を他所に、バロックが戦車の前に歩み出た。


「おい、バロック……」


「見ていろ」


  止めようとしたが、逆に止められてしまった。下手したら死ぬかもしれんのだが……何故か不安にならない。


  戦車の砲塔があり得ない速度で旋回し、バロックを捉える。キィィィィィ……という甲高い音を鳴らしながら、砲身の先に魔法陣が幾重にも展開されていく。


  直後、閃光が迸った。魔法陣を通る度に魔力の光は収束していき、バロックに向かう。


『展開します』


  光がバロックに届く瞬間、右手のハルが俺の前面に薄いシールド状に広がった。こんな形態にもなるのか。


  ジュウッ……という音がして、衝撃が走った。軽く重心を落として十秒程耐えると、光が収まった。


  ハルがブレスレットに戻る。足下の地面が赤熱しているのを見て、その威力が凄まじいものだと実感する。


「そうだ、バロック……」


  目を向けると、そこには……



「ふんっ! その程度で我に挑むとは片腹痛いぞ!」



  仁王立ちしているバロックがいた。バロックの目の前には、青白い光を放つ魔法陣がある。あれで防いだのかもな。


「次はこちらからいくぞ! 『紫電』!」


  迷宮の一階層でコボルト相手に使った雷の魔法。ただし、今回はその規模が全く違う。


  バロックの手から放たれたのは、紫色の一本の柱。刹那の内に戦車に至った巨大な雷は、先ほどの魔導砲を超える閃光を発し、戦車を跡形も無く消し飛ばした。


「ふっふっふー! どうだワタラセ!」


「……すげぇな」


「そうだろう! 我は古龍だからな!」


  自慢気にこちらを見るバロックに、賞賛の言葉を贈る。だが、そんな俺に対してハルが零す。


『マスター、全然すごいと思ってませんね』


「……何故分かった」


『私はマスターの従者ですので』


  理由になってない回答だが、指摘は的を射ているので何とも言えない。


  実際、老龍の火炎というのがどれくらいの威力なのか判然としないし、老龍の鱗を撃ち抜くことがどれくらいの偉業なのかも理解していない。というより、老龍もどきの鱗を素手で破壊した俺はなんなんだ……?


「よし、次の階に行くぞ!」


  意気揚々といった感じで俺の腕を引くバロック。後、二百四十八階もあるのか……時間がかかりすぎるな……


  ちょっとアレだが、ショートカットするか。


「ハル、ちょっとお願いがあるんだが……」


『なんでしょうか、マスター?』


「いや、こんな感じに……」


「む? 何の話をしているんだ?」


  不思議そうなバロックを無視してハルに変形してもらう。ハルがその形になったことを確認して、俺は小さく頷く。


「バロック、背中に乗れ」


「む、何をするんだ?」


「特別なことでもねぇよ」


  軽くストレッチしながら、コテンと首を傾げるバロックに答える。


「ただのエレベーターだ」






 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






  俺の名前はドルンク。Cランクの冒険者だ。見た目は三十路超えてるが、これでも二十三なんだぜ?


  生まれたのは小さな村。体が弱えお袋を助けるために、十五で冒険者になった。恵まれた体格と少しだけとはいえ他人より高い魔力量のおかげで特に苦労もせずにCランクにはなれたが……そこでお袋が逝っちまった。まだ四十と少しだっつーのに、あっけなかった。


  その時、俺は二十だった。目的も無くなっちまって、目の前に霧が立ち込めたみてーに行き先が分からなくなった。


  それからは、もう堕ちるだけだ。なかなか上がらねぇ冒険者ランクに苛立ち、酒に溺れて、他人に迷惑かけて……


  そんな生活が三年続いた時、一人の男に会った。いや、俺が喧嘩ふっかけただけなんだが。


  最初の印象は、ムカつくガキだった。Sランク相当のステータスだとか言われても、俺が何を言っても表情一つ変えやしねぇ。ストレス発散に一発殴ってやろうかとそいつに手を伸ばしたんだ。


  が、俺はそこで吹っ飛ばされた。自分より小せえガキに、一方的にやられた。


  悔しかった。情けなかった。


  次の日、俺は奴に仕返ししてやろうと考えた。恥をかかせてくれたお礼に、不意打ちかましてやろうとした。


  そこで見た。幼い亜人の少女たちと歩く奴を。


  俺は動けなかった。どうしても、奴に手を出すなんてできそうもなかった。


  少女たちに向ける奴の目、あれはお袋が俺に向けてくれた目と同じだったんだ。優しくて、力強い、そんな目だった。


  ……はは、そりゃあ勝てねぇよ。


  俺の心はズタボロになった。自分自身の浅はかさや、馬鹿さ加減をはっきりと自覚しちまったからだ。


  けど、と。でも、と俺は思った。


  俺が冒険者になったのは、何のためだった?


  お袋を助けるため……誰かの役に立つためだったじゃねぇか!


  穢れた心が洗われていくようだった。酔いから醒めたみてぇに、スッキリした気分だった。


  ……まだ、遅くはねぇよな。


  俺は酒を飲むのを止め、冒険者としての活動を再開した。一先ず、数多くの冒険者が集まるルーフィムの迷宮に向かうことにした。


  見知らぬ冒険者たちとパーティーを組んで、たったの一週間で仲間と呼べるような間柄になった。共に魔物と戦い、打ち勝つ。仲間のピンチにはすぐに駆けつけて魔物の攻撃を防ぎ、自分がやられそうになったら今度は守ってもらう。


  誰かと一緒にいれることが、こんなに素晴らしいことだなんて。


  今日は酒場で祝勝会をやってる。俺たちの冒険者ランクは平均してBに届くかどうかというところだが、なんとAランク魔物の討伐に成功しちまったんだ!


  その快挙を祝しての会には、周りにいた奴らも混じっている。酒場は大賑わいだった。


  だが、ぐらぐらという揺れで場が静かになる。どんどん強くなってくる揺れでテーブルから食器が落ちた。


  なんだ!?


  酒場にいた冒険者たち全員が一斉に飛び出した。大型の魔物が襲ってきているんだとしたら、ここを守るのは戦える俺たちだ!


  外に出るが、魔物の姿は無い。不思議な現象に首を傾げていると、突如としてドゴン!! という音とともに、地面を突き破って何かが現れた。そこは迷宮のある位置だった。


  何かに目を向ける。


  それは、虹色を纏った人間だった。


  高く飛び上がった虹色が降り立つ。卵の殻のようになっていた虹色の膜が消えると、中から二人組の男女が出てきた。


  一人は、綺麗な紫の髪をもつとんでもねぇ美女。


  もう一人は、いつか見たことのある黒髪の男。


  男は背負っていた美女を下ろすと、大きな溜息を吐いて街の方へと歩き去っていく。それを追いかけて、美女が小走りに駆けていく。


「え、『S』だ……」


  誰かの呟き。その名前は、噂で聞いたことがある黒髪の男のもの。


  一体、なんだってんだ……?


  地面に大きく開いた穴を見て、誰もが混乱するだけだった……

 

 


エレベーターとは……?


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