森での出逢いと再びのぶっ壊れ
新キャラ、出ます!
ごゆっくりお読みください。
ドラゴンが目撃された場所を教えてもらい、早速現場に向かうことにした。まだ昼を過ぎたくらいだから時間はあるし、のんびりしてると今度は時間が無くなることもあり得るからだ。
ゲルグの爺さんの話だと、キュボエから北西に三キロ程進んだ位置にある森の中で、ドラゴンが眠っているのが目撃されているとのこと。
「北西っていうと、あっちの方か。ん、確かに森があるな……」
身体をほぐしながら視線だけで確認する。全身のストレッチを終えたところで、森に正対する。
「さてと、行きますかね、っと!」
しっかりと足裏で大地を掴み、抉る程の力で走り出す。ドッ、という音の後は、風を切る音だけが耳に届く。
あんまり速くならないように調整はしたのだが、三十秒せずに着いてしまった。リュケイアを横断走行してたから、力が強くなってるのかもしれん。
この場合、それは好都合だがな。
身体に異常が無いかを確かめて、深呼吸を一つ。
これから臨むのは、普通に考えたら無謀な戦いだろう。けど、退くわけにはいかない。
「……ふーっ。よし、やりますか!」
森の中に足を踏み入れる。ドラゴンがどの辺りにいるか分かっていないのが痛いが、それならいつ襲われても対処できるように警戒しておけばいいだけ。
視覚と聴覚をフル稼働させて周囲を観察する。この辺にはいないみたいだな……
慎重に歩を進めること二十分。微かに呼吸の音がした。それも、人の寝息のような。
……え? なんでこんな場所に人がいるんだよ。ドラゴンがいると言われてんだぞ、ここ。
耳がおかしくなったのかと思いつつも、音のした方に忍び寄っていく。発生源と思しき場所は木が生えていない開けた空間になっている。
一体、誰が……
今いる位置からでは、茂みに隠れてよく見えない。恐る恐る近づいていき、そっと茂みの奥を覗く。
そこにいたのは……
ーーーーー全裸で眠る女性だった。
全力で身体ごと目を逸らす。その勢いに全身が悲鳴を上げるが、それどころではない。
なんでだよ!?
そう突っ込まずにはいられなかった。
何故、ここにいるのか? 何故、全裸なのか? 何故、仰向けになって大の字で寝ているのか? おかげで色々と見えてしまっ……それはどうでもいい。
ともかく、怪しすぎる。
一先ずは彼女を起こしてキュボエにでも連れて行った方がいいのだろうが、生憎と衣服の類は持ち合わせていない。それだと全裸のまま彼女を連れて行くことになって、俺は変態と呼ばれるように……
……あ、俺の服を貸せばいいのか。幸いにも、結構大きめのシャツを着ていたので、一応下まで隠すことはできるだろう。女性だから俺よりも小柄だろうしな。
そうと決まれば即行動。いつドラゴンが来るかも分からない危険地帯でのんびりとはしてられない。
できるだけ裸体を見ないように注意しながら、女性の元に駆け寄る。女性は実に気持ち良さそうに寝ているのだが、こんな所でよく寝れるものだと感心さえしてしまう。
「おい、起きろ」
女性の頬をペチペチと叩く。めちゃくちゃスベスベだな。それに、プニプニしてる……
思わず妙なことを考えてしまっていると、女性はゆっくりと目を開き、のそのそと身体を起こした。
「んぅ〜、もう朝か……? まだ寝足りないんだがなぁ……って、誰だお前?」
間の抜けた声で文句を言って、やっと俺の存在に気づいた。朝じゃねぇよ、昼過ぎだわ。
「俺はそこら辺の冒険者だ。この辺は危険だから、とにかく逃げるぞ」
「むぅ、そうなのか? そんな所では寝てられんな……」
どんだけ寝たいんだよ。カグラか。
「逃げる所に宿屋があるから、そこで寝ればいい。それより先に、こいつを着ろ」
着ていた上着を渡すと、女性はキョトンとした顔をしてそれを見つめた。
「なんで着るんだ?」
……は? 何を言ってんだこいつ。
「お前が服を着てないからだ」
「? 服を着る必要があるのか? 別にこれでも問題無いと思うが……」
言いつつ、その肢体を見せつけてくる。胸が異様にデカイ……って、そうじゃないな。
「大ありだ。服を着てないと、俺もお前も困るんだ」
「む、面倒ごとか? それは嫌だな。分かった、着よう」
ズレてんなぁ……
俺から上着を受け取った女性は、四苦八苦しながらもなんとかそれを着ることができた。慣れてない様子だったが、もしかして、いつも服を着てないのか……?
「んむむ、少しキツイな……」
……そっと視線を外す。いや、だってさ、あの盛り上がり方はおかしいって。そりゃキツイよ。
そこは置いといて、こいつ以外と背が高いから丈の長さが少し不安だな。秘すべき部分が見えそうになっている。手で押さえれば大丈夫か……?
「よし、着れた! 早速宿屋に向かうぞ!」
「……はぁ。そうだな、ついてこいよ?」
勝手に歩き出しそうな女性を先導して歩く。ドラゴンに対して警戒は怠っていないのだが、森は静寂を保っていて、なんの危険も察知できない。もしかしていなくなったのか?
疑問に思いつつも、森を出るために歩く。女性は何を言うでも無くついてきていたが、急に声をかけてきた。
「なぁ、お前。名前はなんて言うんだ?」
「……いきなりどうしたんだ? 俺は渡良瀬 晋一だ」
「ふぅん、ワタラセか。変な名前だな」
「失礼な奴だな。あんたはなんて言うんだ?」
「我か? 我の名はバロック! 覚えておくがいい!」
「はいはい、バロックね。あんまり大きい声を出すなよ、危険だって言ったよな?」
「む、そうだったな。すまない」
……こいつ、アホだ。間違い無い。
呆れてしまうが、足は止めない。
三十分かけてやっと森の外に出た。道中で何度もバロックがフラフラとするから手間取ってしまった。
「ワタラセ、宿屋はどこだ?」
「あっちに町が見えるだろ? あそこまで我慢しろ」
「む〜、我はもう歩きたくないぞ! ワタラセ、連れて行け!」
「子どもかよ……」
「早く〜!」
モデル体型の美人。それが地べたに座って駄々をこねている。なんだこれ、ユリアでももう少し大人な気がす……しないわ。
「分かったよ。背負ってやるから」
「うむ、苦しゅうないぞ!」
俺が背を向けてしゃがむと、バロックはあろうことか飛び込んできやがった。ぶっ壊れ筋力のおかげで体勢を崩すことは無かったが……
むにゅんっ!
柔らかい感触が襲ってきた。
俺はあまり性的なことには興味が無いが、それでも男である。故に、意識するものはしてしまうのだ。
背中に押し付けられている二つの誘惑は、バロックが俺の首に腕を回したことによってさらに潰れていき、徐々に俺の理性を削ぎ落として……
「ふっ!」
「ふぎゃっ! こら、ワタラセ! いきなり何をする!」
サッと立ち上がり、バロックを引き剥がす。突然の行動で尻餅をついたバロックは、ブーブーと文句を垂れる。許せ、これは男の問題なんだ。
「悪かったな。連れては行くさ」
適当に謝って、唇を尖らせていたバロックを抱きかかえる。リリシアにもやったお姫様抱っこだ。今回は似非だがな。
「おおっ!? またいきなりか!」
腕の中でプンプンと怒っている残念美人をスルーしつつ、負担をかけない程度に駆け出す。自分を抱えたまま走る俺に驚いたのか、紫根の瞳を大きく開くバロック。
「っ! こいつ、もしや……」
「ん? 何か言ったか?」
「……いや、何でもない。もっと速く走れー!」
「変な奴だな……ま、了解ですよっと!」
何か言われた気がしたが、風の音に掻き消されて聞き取れなかった。スピードを上げろとのご注文に、足に込める力を増やして応える。彼女の深紫の長髪がたなびいて、尾を引く。
「ふっふっふ。愉しい、愉しいぞ!」
喜々とした表情で笑い出す。もしかして絶叫系のアトラクションが好きなタイプなのか?
結局一分と少しでキュボエに着いてしまった。ドラゴンの討伐に出てから一時間も経ってないぞ……
「到着だ。ほら、降ろすぞ……」
「宿屋まで連れてけー!」
「はぁ? っておいっ! 暴れんなよ! ったく……」
町の入り口で降ろそうとすると、バロックはジタバタして拒んだ。あまり動かれると俺の精神衛生上よくないことがあるのだが。
仕方なく、そのまま宿屋に向かう。周りの人たちからの視線には、バロックに見惚れるものと俺を訝しむものとの二つがある。
「おい、『S』が女連れてるぞ……」
「めっちゃ綺麗だな、あの人」
「え、『S』ってドラゴン討伐に出かけたんじゃないのか?」
くぅ、こうなるから降ろしたかったんだよ。ただでさえ注目を浴びる容姿なのに……
「……ワタラセよ。お前、ドラゴンと闘おうとしていたのか? 一人で?」
「ああ。まぁ、ドラゴンの代わりに変人を見つけちまったけどな」
「む、変人とは我のことか!」
「さて、どうでしょうね」
やっぱりドラゴンと一騎打ちしようってのは無謀なのか。それでもやるけどな。
変人扱いにご不満の様子のバロックだったが、気づけばジッとこちらを見上げている。なんか観察されてる気がするぞ……
「……なんだ?」
「……ワタラセは、強いのか?」
唐突だな。
「それ程でもない、と思う」
「? どういうことだ?」
「俺は魔物の強さとか、冒険者の平均的なステータスとか、そういうのを知らないからな。俺より強い奴もいるかもしれないのさ」
「……むぅ、はっきりしないな」
それは俺も思ってるよ。今のステータスってどれくらいになってんだろうな? ゲルグの爺さんに頼んでステータスプレートを使わせてもらうか。
そうこう考えてる内に宿屋に着いた。中に入ると店主のオバさんから胡散臭いものを見るような目を向けられた。それでも対応してくれるのだからありがたい。
とりあえず一人部屋二つを一日分だけ借りることにした。
部屋に向かい、まずはバロックをベッドに投げつける。
「のわっ! おい、もっと丁寧に投げろー!」
投げるのは構わねぇのかよ。やっぱりズレてるな。
「そんじゃ、ごゆっくり。寝るも何も好きに……いや、もう寝てんのか」
お早いこって。スースーと寝息を立てている。
起こさないようにそっと部屋を出て、俺はギルドに向かう。ドラゴンを見つけられなかったことの報告と、ステータスプレート使わせてもらうためだな。
……? なんでだか、周囲の視線が突き刺さる。バロックは置いてきたし、もう注目されるようなことは無いはず……あ。
「服、着てねぇ……」
新しい服を購入し、ギルドに戻ってきた。バロックは金を持ってないみたいだし、後で下着とかも買っておくか。
なんて思いつつ扉を開くと、一斉に冒険者たちがこちらを見た。
「うおー! もう戻って来たぞ!」
「早すぎだろ! ドラゴンすら相手にならねぇのか?」
「いや、傷一つついてないのはおかしいぞ。もしかしたら逃げてきたんじゃ……」
「馬鹿野郎! 聞かれたら殺されるぞ!」
聞こえてるわ。なんだよその認識。本当に殺してやろうか?
ざわつく彼らをよそに勝手に二階に昇っていく。
「誰じゃ、許可も無く……て、お前さんかい。随分と早いのではないか?」
「それについて話があって来たんですよ」
ソファに座って一息つく。こいつには癒されるぜ……
「で、どうしたんじゃ? まさか一時間で老龍を狩ったとは言うまい」
っと、リラックスしてる場合じゃないな。爺さんの目が細められる。
「ええ、狩るどころか、会うことさえできませんでした。それ以前に、森が平穏そのものといった様子で、ドラゴンがいるとは思えないくらいでした」
実際にドラゴンがいたらどうなるのかは知らないが、町の騒がしさを鑑みれば予想はつく。
「ふむ、逃げたのかもしれんの。楽観的かもしれんが、できればそうであってほしいのぅ……」
爺さんもそう思うのか。大人しく巣に帰ってくれてると嬉しいんだがな。少なくともリュケイアに向かってないことを祈るだけだ。
一応報告は終わり。次の目的に移るか。
「今回はその報告と、一つお願いがあって……ステータスプレートを使わせてもらえますか?」
「構わんが、そんなに変わってないと思うぞ? ステータスは一定の高さまでいくと上がりづらくなるからのぅ」
言いながら、部屋の隅にある棚から一枚の板切れを取り出す。そんなとこにしまってんのかよ、雑だな。個人用なのか?
「ほれ、こいつを使え」
ステータスプレートとともに、ナイフを渡される。こいつで血を垂らさなきゃいけないんだよな。
痛いのは嫌なんだがなぁ、と少し渋りつつも、刃を指先に当てて動かす。しかし、痛みを感じない。
あれ? ビビって失敗したのか? もしそうなら情けないな。
もう一度、今度は強めに切ろうとするが、ナイフは俺の指の上を滑るだけだった。力を変えて何度も試してみるが、傷がつかない。
「変だな。ふっ……あっ」
覚悟を決めてギュッと押しつけたら、ナイフがパキッと折れてしまった。ゲルグの爺さんが口を開けっ放しにして驚いている。俺もだよ。
ナイフが使えなくなったので代わりに歯で噛みきろうとすると、普通に痛かった。口に鉄の味が広がって気持ち悪いな。
とりあえずステータスプレートに血を垂らしてみる。とんでもない数値が出てきそうな気がするが……
ぼんやりとした文字が、次第に鮮明になっていく。
俺のステータスは、
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名前 ワタラセ シンイチ
種族 人
年齢 18
性別 男
ステータス
・体力 108000
・魔力 10
・筋力 ?¥;&¥:92(?;&;"/):&&,9(!,)?5,
・耐久 1726200
・知能 34500
スキル
・完全言語
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案の定ぶっ飛んでた。
出ましたよ、乳キャラですよ!
名前は相変わらず適当です。
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