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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第二章 家に帰るまでが遠足さ
32/93

幕間 その頃の乙女

御堂視点なんですが、何故か筆が進む………


人によっては不快感を催す表現があります。注意してお読みください。

「勇者様、準備が整いました」


「そう。じゃあ、出発してください」


「あい、分かりやした!」


  異世界「アーク」における最大の人間国家であるマグジェミナ王国の第一王女・シエルの報告を聞いて、御者を務める剣士・リードゥさんに馬車を進めてもらう。


  渡良瀬くんがいなくなってから、一ヶ月近く。私、御堂 栞は本格的に勇者としての訓練を始めることになった。今回は少し遠くの森に行って魔物と戦うらしいが、王や騎士男の言う通りならば、私にとっては赤子の手を捻るのより簡単なことらしい。


  これまでの期間、私はこの世界についての様々なことを教えられていた。マグジェミナの歴史や、戦争の相手である魔族のこと等だ。


  その中で、魔法の使い方なども教えてもらった。地球には無かった技術ではあるが、教師役を任された宮廷魔導師が優秀だったためか、それとも私が魔法を操る才能があったのかは知らないが、すぐに使えるようになった。


  体内を巡る魔力を意識して、決められた唱文(ワード)を口にすることで魔力が魔法に変換される。たったこれだけのことだが、魔力を意識するのは意外と難しいらしい。私には何のことかサッパリだ。


  また、属性というものがあり、人によって得手不得手はあるものの、大概の人は全属性を扱えるらしい。因みに言うと、私には不得意な属性は無かった。全てが一様にハイレベルだとの評価を頂いた。


  この魔法というのは、とても強力だ。魔法の訓練をしている時にクレーターを作ってしまったのは記憶に新しい。その時に使ったのは中級(・・)魔法だったのだけど。


  魔法には階級がある。下から初級、中級、上級、超級、幻級となっていて、初級は誰でも扱える基礎中の基礎で、威力はたかが知れてる。幻級は唱文が失伝しているために実際の威力は不明だけれど、言い伝えでは大陸一つを更地に変える程だという。中級は初級に毛が生えた程度らしい。


  魔法は込める魔力量で威力が変化するが、初級魔法に莫大な魔力を込めて放つよりも上級魔法を適度な魔力量で放つ方が強いとのこと。中級で大地を穿つことが可能だから、私には当てはまりそうもない。


  後、階級が無い魔法も存在する。それは身体強化の魔法だ。この魔法こそ、魔力測定の時に騎士男が言っていた「戦争で重要なのは魔法」というセリフの土台の一端となっている。


  身体強化の魔法をかければ、魔力の消費量を調整することで理論上はいくらでも強化できるらしい。そのため、元の身体能力が低くともあまり関係無いそうだ。運動音痴だった私が立ち幅跳びで十メートル以上跳べるようになったのだから、それは正しいと思う。


  土台のもう一端は、単純に魔法の攻撃範囲の広さだ。


  そんな魔法を一ヶ月学び続けた私は、超級魔法まで使えるようになっていた。試してみた感じ、中級から上級、上級から超級と上がるにつれて、威力が指数関数的に上昇していた。超級魔法は魔族との戦争以外では使わないようにと、王に釘を刺されたくらいだ。


  その代わり、戦争になったらバンバン撃たせてもらうけれど。


  それで今日は、もう十分に訓練できたということで実戦に移ろうとしているのだ。一応の護衛として有能な魔術師であるシエルと、戦闘経験の豊富なリードゥさんがついてきている。


  さて、何故私がマグジェミナに協力するのかというと、単に渡良瀬くんのためである。


  今、馬車の隣の席で使命感に溢れた表情をしている悲恋 (笑) の王女様が彼を奴隷にしてしまった。殺ってしまおうかと思ったが、勇者として戦争に赴けば彼を解放してくれるというので、仕方なく協力しているのだ。


  解放したら、彼は喜んでくれるだろうか? 私を褒めてくれるだろうか? そのままベッドインなんてあり得るだろうか? 子どもは何人がいいかなぁ……


「さ、着きましたぜ。魔物どもがお迎えに来てまさぁ」


  幸せな世界から現実に引き戻される。口惜しいけれど、リードゥさんを責めるのはよそう。彼も仕事なのだ。


  馬車を降りると、森の中から何匹かの魔物が出てきた。薄汚い布を腰に巻きつけた、醜悪な緑色の小人。


「ゴブリンですね。勇者様、初めての魔物との戦闘です。決して油断はしないように……」


「『サンダーボルト』」


  シエルの言葉を遮り、魔法を放つ。本来なら人間一人を感電させる程度の電撃を放つ中級魔法「サンダーボルト」は、私の膨大な魔力によって雷の柱となりゴブリンたちを消し炭にした。


「……無用な忠告でしたね。流石は勇者様です」


  ポカンとしていたシエルだが、正気に戻るとすぐに賞賛を送ってくる。お前に褒められても嬉しくない。彼に頭を、いや全身を撫でてもらいながら褒めて欲しい。違う、撫でるのではなく、撫で回して欲しい。優しく、時に激しく。脳髄が痺れるような刺激を……


「ゆ、勇者様、落ち着いてください。魔力が溢れています」


  ……ちっ、シエルめ。股が寂しくなったからって他人の恋路を邪魔するんじゃない。折角いいところに逝けそうだったのに。天罰が下れ……


  そう思った時、何かが視界に映った。


  その何かはものすごい速さで私の前を通り過ぎ……


「ぶべっ!?」


  ……シエルの顔面に直撃し、吹き飛ばした。空中で後方に二回転を決めた後、無様に地面に這いつくばる第一王女 (笑)。


「だ、大丈夫ですかい! って、何だこれ? 焼いた肉?」


  見事にシエルを打ち倒したのは、食べかけの骨つき肉だった。けど、そのサイズはかなり大きめだ。何かの獣を一匹丸ごと焼いたかのようにすら見える。


  ……なんでこんなものが飛んできたのだろうか?


  怪しい肉を見ていると、何故か下腹部が疼き出した。


  ハッ、渡良瀬レーダーが反応してる! まさか、この肉から……?


  肉の噛みちぎられたような部分を見ていると疼きが強くなってきた。間違い無い、これは渡良瀬くんの食べかけだ!!


「一体何だってんだ……って勇者様!? そんなもん食べちゃいけやせんって!!!」


  リードゥさんの静止も聞かずに、私は一心不乱に肉を貪った。一噛み毎に蕩けてしまいそうになりながら、同時に絶頂へと駆け上がっていく。


  あぁ、幸せぇ…………




 

 

あの肉です。


晋一は召喚直後の時点で、立ち幅跳び百メートル余裕でした。


誤字・脱字の指摘、感想、評価などをお待ちしております。





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