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人外さんの異世界旅行記  作者: 洋風射手座
第二章 家に帰るまでが遠足さ
31/93

人外の決断

ごゆっくりお読みください。

  晴れて世間からロリコンの称号を受けることを許された日、またしても狐人族の里はどんちゃん騒ぎ。


「『銀狐様』の命を救いし狐人族の英雄が、その夫となった。皆の者、今宵は宴だ!」


  そんなことを宣ったのは誰だったか。男衆からは祝福とやっかみを、女衆からはうっとりした視線を、全て悪戯付きでもらった。


  何かにつけて化かしにくるから、引き攣った笑いを返してやった。俺を驚かそうとして飛び出てきた首無し女が、腰を抜かす程ビビってたがな。ナイススマイル。泣く子も気絶するぜ。


  ヤヨイさんはカグラに何か吹き込んでいた。チラチラとこちらを見ては、カグラは少し頬を紅潮させ、ヤヨイさんは妖しく笑う。カグラにそんな表情させるとか、何を言ったんだ? 如何せん、碌なことではないだろう。

 



  勢い任せに結婚を受諾した後、カグラに面と向かって「好き」だと言われた。


  初めて出会った時から今までのことを思い返し、本当になんでそうなるのか謎だった。どこに惚れる要素があったと言うのだろうか?


  全く判然としないが、だからと言ってカグラの気持ちを否定はできない。それは俺がすることじゃない。


  とりあえず、カグラの想いは分かった。


  じゃあ、俺はどうなんだろうか?


  カグラに好きだと言われた時、俺は「嬉しい」と感じた。我ながら気持ち悪いと思うが、そう感じた。


  カグラのことは嫌いじゃない。寧ろ好きだ。スキルの話を聞いて、カグラはあの夜から……奴隷から解放されたあの夜から、ずっと俺を気遣ってくれていたのだと気づいた。


  人ならざる力をもつ俺を心配してくれた。そんなカグラが、俺は好きだ。


  でも、それは他の三人も同様だ。まぁ、ユリアは微妙なとこだけど、エレンとリリシアのことは間違い無く、カグラと同じように好きだと言える。


  エレンもリリシアも、俺を心配してくれた。それが理由だ。


  ……俺にはこれが、恋愛感情だとは思えない。親愛の情であるのは確かだけれど、それ以上だとは思えないのだ。これは、俺自身にまともな恋愛経験が無いのが大きな要因になってるんだろう。


  エレンはこっちに来る直前に結婚の約束を取り付けようとしてきた。あれが本気なら、エレンは俺のことを想っているのだろうか?


  リリシアはどうだ? 自意識過剰かもしれないが、彼女も俺を気にかけてるように見えた。あの時の涙は、偽りではなかったと思う。


  今、カグラとの結婚はほぼ確定してしまっている。故に、エレンとの話は無しになってしまう。ユリアもリリシアもそうだ。


  しかし、四人とも俺にとっては等しく大切だと思える存在だ。なのにカグラにだけ応えるのは、不平等ではないか?


  そんな考えがぐるぐると頭の中を回っている。


  うーむ。正直にヤヨイさんに言ってみようか。弄られるのは確実だろうが、何かしらのヒントを得られるかもしれない。


  意を決して相談すると、


「うふふ、そんなことでお悩みになるなんて、貴方様は存外初心なのですね。妻が一人でないといけないなんて、そんな規則がどこにあるのです?」


  という、身も蓋もないことを言われた。


  まさか、一夫多妻制だったとは……現代日本人からすると信じ難いことだが、生憎ここは異世界。地球の常識が通用する場所ではなかったか。さっきまでの恥ずかしい悩みはなんだったんだ。


  でも、それなら……


  一つの案が浮かぶが、これは少し……いや、ここは日本じゃないんだし……


  ………………よし、決めた。


  いっそのこともう、全員と結婚する。


  もちろん、相手側がそれを望むなら、という前提があるし、何よりもう少し大きくなってからという条件付きでだ。流石に十歳前後の子どもとはねぇ……


  ヤヨイさんにそのことを伝えると、


「男ですもの、たわわな乳房を揉みしだきたいという欲望はあって当然。それくらいは了承済みです」


  曲解された。絶対わざとだ。俺にそんな欲望は無い。


「……シンイチ、変態?」


  こらカグラ、胸を庇うんじゃありません。顔を赤くしてるあたり、ヤヨイさんからの入れ知恵だと思われる。あの人、厄介すぎる……


「……まだ、ダメ」


  厄介すぎる……!


 


  兎にも角にも、決断したなら行動せねば。


  最後の最後まで幻影魔法で悪戯しにくる狐どもに別れを告げて、最初にエレンの家に向かう。


  走ること約七分で到着。


「シンイチさん! 戻ってきたんですね!」


  エレンが迎えてくれる。必殺の頭なでなでで応じながら、エレン一家相手に俺の意思を伝える。


「エレンとの結婚の話、お受けしたいと思います」


  沈黙。


  時間が止まったかと錯覚するような静寂。


  それを破ったのは、エレンだった。


「わ、わた、わたひでいいんれしゅか……?」


  噛み噛みだった。


「ああ」


「ほ、本当ですか?」


「本当だ」


  言うが早いか、エレンが泣き出してしまった。そして、笑う。


「嬉しいです、シンイチさん……」


  お、おう。泣くほど嬉しいのか。


「幸せに、してくださいね……?」


  泣きながら微笑むエレンは、魅力的だった。


  そんな彼女に、俺は誠意をもって応える。


「……おう。エレンもカグラも、二人とも幸せにしてやる」


 


  ピシッ!




  なんだ? 何かが割れる音が聞こえた。


  その刹那、今までで一番強いプレッシャーを感じた。ヤヨイさんの殺気よりも強いだと……!


「……シンイチさん、カグラちゃんもって、どういうことですか?」


  あれ? エレンの涙が消えてる。その代わり、背後に鬼が見える。何か言おうとしていたローラさんが固まってる。俺も固まってしまい、動けない。


  蛇に睨まれた蛙って、こういうことを言うのか……




「……事情は分かりました」


  狐人族の里でのことを事細かに説明して、やっと威圧感が消えた。エレンはがっかりしたように溜息を吐く。


「カグラちゃんに先を越されちゃったのかぁ……でも、私も立場は一緒なんだし……」


  何やらブツブツと呟いているが、一先ずは安心していいみたいだ。


「シンイチさん」


「はい、なんでしょう」


  安心してはいけなかったのか。一応、身構えておく。


  そんな俺に、エレンはギュッと抱きついてきた。力を強くして、ギューっと。


「絶対に、幸せにしてくださいね」


  耳元で囁かれる。俺も、エレンをそっと抱きしめる。


「……もちろんだ」


  こうして、親が介入すること無く婚約成立。


  因みに、エレン父は最初の段階で気絶していた。またパーティーにならなくてよかった……




  お次はリリシアだ。エレンたちと別れてから走って樹海に行くと、樹海が割れた。エルフの里までの一本道ができあがっている。モーセか。


  またもや突っかかってくるリヒトをあしらいつつ、リリシアの元に向かう。


「シンイチじゃない! 来てくれ、って、あっ、違っ……ふんっ! 今度は何しに来たの?」


  第一声がこれだ。相変わらず姫様は素直でない。


「樹海が真っ二つになるなんて何事かと思えば、晋一くんか。それで、婚約の件に関してかな?」


「はい、その通りです」


  ニヤニヤと聞いてくる族長に肯定の意を示すと、自分から聞いてきたくせに驚きの表情を見せる。


  そこに畳み掛けるように、言葉を紡いでいく。


「俺は、エレンとカグラ……一緒に旅をした仲間と結婚すると決めました」


「え……じゃあ、シンイチは……」


  リリシアの顔が真っ青になる。けれど、気にせずに話を続ける。


「そして、リリシアとも結婚したいと考えています。今日来たのは、正式にリリシアの婚約者になるためです」


「へぅっ!?」


「……ほう。つまり、一夫多妻、ということかな?」


「はい。そのつもりです」


「ふむ。それで、リリシアを他の者と同様に愛する自信は?」


「あります」


「……即答か。よし、娘を嫁にやろう! いやぁ、君も男だったということだね!」


「ちょ、ちょっと待って! なんで私抜きで話を進めてるのよ!」


  すんなりと婚約が成立するかと思いきや、リリシアから待ったが入った。そういや、本人の意思確認をしてなかったな。


「リリシア。お前が嫌だと思うなら、断ってくれていい。ただ、俺の気持ちはさっき言った通りだ」


  真剣に、碧色の瞳を見つめる。リリシアは少したじろぎ、顔を真っ赤にして俯いた。


「なっ、その、あぅ……別に、嫌とは言ってないじゃない……」


「……なら、俺と結婚してくれるか?」


「……エレンとカグラも、一緒なんでしょう?」


「ああ。後でユリアとも話をするつもりだ」


  真っ直ぐに見つめる。リリシアはチラチラとこちらを見てから何かを決心したように手を握ると、こちらに正対した。


「そ、そこまで言うなら仕方ないわね! いいわ! けけ、結婚してやろうじゃないの!」


「……ありがとな、リリシア」


  少し、強引だったな。でも、恥ずかしそうにしながらも俺から目を逸らさずにいてくれるリリシアを見て、結界オーライということにした。


  縁談成立、一件落着かと思ったが、そうは問屋(ロリコン)が卸さない。


「決闘だ! 貴様のような不埒な輩に姫を渡すなど、絶対にならん! このリヒト・シュタウフェンと勝負しろ!」


  ……空気読まないな。いや、逆にお約束の展開ではあるのか?


  勝負の結果は言うまでもない。始まった直後に結界を突き破ってリヒトが吹っ飛んでっただけだ。


  茶番を終わらせた後は婚約を確定させて、今だにリンゴのように顔を赤らめているリリシアと別れた。




  最後はユリアだ。シームンの町までは少し遠かったが、余裕で十分切りを記録した。


「シンイチ殿! 久しぶりではにゃいか。息災だったか?」


  屋敷を訪ねると、執事のセバスさんに案内されてユリア父のいる部屋に通された。ユリア父の猫口調は変わらないか。


「はい。そちらもお元気なようで、なによりです。今日はお話があって来ました。ユリアも呼んでもらえますか?」


「よいぞ。おーい、ユリアー! シンイチ殿が来てるぞー!」


  ユリア父が呼ぶと、ドタドタという足音が聞こえてきて、部屋の扉が開け放たれた。


「わー、ホントにシンイチだー!」


  猫耳娘のユリアが、歓声を上げて飛び込んでくる。咄嗟に受け止めると、ユリアはすぐに俺の腕を引っ掻き始めた。くすぐったいなぁ。


「久しぶり、ユリア」


「あそびにきたのかー?」


「ん、ちょっと用事があってな」


  テンション上がりまくりのユリアの頭を撫でて大人しくさせてから、ユリア父に向き直る。


「うむ、にゃかが良くてよろしい。それで、はにゃしというのは?」


  口の端を吊り上げながら訊いてくるユリア父。見透かされてんな、これは。


「察しはついてるでしょうけど、ユリアとの結婚の話ですよ」


「ふっ、やはりにゃ。その感じだと、良い返事が貰えると思っていいかにゃ?」


「ええ、婚約を受けたいと思っています。ただし……」


「ただし?」


「以前、俺と一緒にここを訪れた子たちがいましたよね? あの三人とも結婚します」


「……ほう」


  ユリア父の目が鋭く細められる。


「君には、それをにゃせるだけの甲斐性はあるのか?」


「……それは分かりません。できるだけ頑張りますが」


「……ふむ。では、ユリアとの関係を疎かにしにゃいと言えるか?」


「言えます。それは、他の三人の誰であろうとも変わりません」


  射抜くような視線から逃げず、意思を乗せて答える。数秒の間、相手の反応を待っていると、ユリア父は唐突にプッと噴き出した。


「ハッハハハハハ! いや、すまにゃい。試すようにゃことを言ったが、特に意味はにゃいのだ。元よりユリアを君に嫁がせようとしていたのだからにゃ」


  えー、それを言っちゃうの?


「君にゃら不誠実にゃ真似はしにゃいだろうし、ユリアもお友達と一緒で嬉しいだろう!」


「エレンも、カグラも、リリシアもいっしょー? いっぱいあそべるー!」


  随分と信頼されてるみたいだな。ヤヨイさんは、違法奴隷になったら死んだも同然だと言っていたが、誇張が無ければこんなもんなのか?


「自信満々に甲斐性があると言われたら、それはそれで心配だったしにゃ」


  ……まぁ、それもそうか。


  実際に結婚するのはユリアが猫人族として成人してから、つまり十二歳になってからにしてもらった。ユリアは今で七歳だから、後五年待つことになるんだな。


  一応、エレンたちとの結婚もユリアと同時にしたいと考えている。それまでに、色々と準備したいこともあるからな。


  ユリアが催促するようにガリガリしてくるので、彼女が疲れて眠ってしまうまで遊んであげ、俺はシームンの町を後にした。






  こうして、俺は亜人娘たち全員を家に帰すことができた。この結果は完全に予想外だったが、これで良いんだと思うことにした。


「四人の嫁さんねぇ……こいつは骨が折れそうだな、っと」


  晴れ渡る青空を見上げながら、広がる草原を歩く。


  やるべきことは多い。それに、俺には異世界旅行という目的もある。それを捨てるのは、ちょっともったいない。


「一先ずは、金が欲しいかな。俺も冒険者なんだし、それで稼ぎますか。あ、ゲルグの爺さんのとこにブルを預けっ放しだったっけ?」


  とりあえずは、ゲルグの爺さんがいるキュボエのギルドを目指しますか。




  ワクワクするような、不思議な心地を感じながら、のんびりと歩く。




  四人の少女と笑顔で暮らす未来を、思い浮かべて…………



 


どうしてこうなった


二章を書き始めた時は、ヒロインは一人の予定だったのに………

まさかハーレムルートとは、思ってなかったです。



これで二章は終了です。後は幕間とオマケがいくつかありますが、どうでしたでしょうか? こうした方がいい、ここが不自然だ、等といった指摘や評価、お待ちしています。



三章では、晋一の物理無双を予定しています。魔法や冒険者など、やっと異世界要素を出せる………はずです。


それでは、ここまで「人外さん」を読んでくださって、本当にありがとうございました!

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