召喚されたって
前書き長いです。本編メインの方はさっさとそちらへ進むことをお勧めいたします。
異世界に召喚された現代人が早々に安易に地位や力を手に入れるのは都合がよすぎると感じる今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょう。
まあ、運が良かったりあらかじめ力がなかったりすると即デッドエンドコースに突入してしまいますので仕方がないとあきらめた所存。大目に見てください。
また、現在キーワードを募集しております。この小説に適したキーワードをを思いついた方は感想、またはメッセージにてお伝えください。
とある山奥にそれはあった。
遺跡。それは長い間放置されていたために幾重にも蔦葉に覆われている。
その遺跡の中をひとりの少年が歩いていた。
少年の名はアーネリク・フランジュベル。亜人のトレジャーハンターである。
彼の目的は当然のことながらこの遺跡に眠る宝である。
宝といっても財宝に限らない。古の技術やそれにまつわる文献といった知の宝も含まれる。
そのため彼は、ほんの些細な手掛かりも見逃さないよう細心の注意を払って遺跡を進む。
「ヒャン!」
その彼を呼ぶものがあった。
名をうなぎという、胴の長い小型の犬。彼の相棒である。
「どうした?」
「ヒャン! ヒャン!」
うなぎに導かれるように彼は遺跡の慎重に進んでいく。
これといった罠もなく進むとやがて開けた場所に出た。
大当たりだった。
その部屋の中心にはいくつもの機材が置いてある。コケや蔦に覆われているが、その設計思想が現代のものでないことは一目でわかった。
どことなく、書物に出てくる魔術師たちの召喚の間を思い起こさせる空間。
と、そこで彼は気づいた。この部屋の中心、厚いコケにうずもれるように一人の少年が倒れているのに。
うなぎがその少年の周りを注意深く距離をとりながら吠えている。
「う……」
そんなうめき声とともに、唐突に少年が目を覚ました。
少年は寝ぼけ眼で周囲を見渡した。
「どこだここ? うん、ダックスフンド? あれ、キミは?」
少年は周囲からうなぎ、アーネリクへと視線を移した。
そうしてアーネリクをまじまじと観察する。
「コスプレ?」
「違う」
意味は通じなかったが、直感的に不愉快に感じた言葉にそう返しつつアーネリクも少年を観察した。
少年は紺色の上質な服を身に付けており、きれいに整えられた黒髪や健康的な肌から貴族や王族関係者に見える。しかし、ここは山奥の遺跡であり身分のある人間が来るようなところではない。まして、装備が肩掛けカバン一つなどあり得ない。
そして、人間だ。
アーネリクはとりあえず少年が何者か尋ねることにした。
「僕の名前はアーネリク・フランジュベル。よろしければ名前を伺っても?」
「え? ああ、俺は最上 日向。なあ、ここがどこだか教えてくれるか?」
「ここはユーギルの国外れにある遺跡だよ。モガミヒナタこちらからも尋ねたい。あなたはどこの出身ですか?」
「日向って呼んでくれ。俺は日本の秋葉市出身で……いや、どう考えても……でも……」
日向は急にぶつぶつと考え込んでしまった。アーネリクはそれを最新の注意を払いながら待つ。
そうして数分後、日向は戸惑いつつもはっきりと言った。
「アーネリク」
「アーネでいい」
「じゃあアーネ。俺は別の世界から召喚されたみたいだ」