part6――問題発生――
時間かけた割には文化祭の時と大差ないという……
「助かったー」
クラスの席に戻った俺は、安堵の息を漏らす。
結果から言うと、セーフ。
ただ、なかなかパンを食べれなくてあわや最下位、という結果だった。
今は千五百メートル走をやっている。
これだけは、学年混合で走る競技で、爽太も参加している競技だ。
爽太はこの後、学年クラス対抗リレーにもアンカーで参加する。
ほんとすごい。
ラスト一周というところで、爽太の足取りが怪しくなってきた。
足を痛めて、無理して走っているように見える。
ラスト一周の時には三位だった順位が、ゴールの時には七位だった。
ゴール後、そのまま救護テントに運ばれる。
その姿を見た俺は救護テントに駆け込んだ。
「すまんマサ、捻挫しちまった」
救護テント入ると、右足に包帯を巻いた爽太の姿があった。
話を聞くと、競技中に足を痛めたらしい。
「でもゴールはしてきたから得点は一応あったろ?」
「お前、怪我してまで無茶しなくても!」
分かっているつもりだったが、爽太はスポーツの事になるとすぐに無茶をする。
それこそ、怪我をしてまで。
それでもクラスのため、誰かのために必死にがんばる……。
さすがは爽太。
俺にはできないマネだ。
そんなことを考えていると、爽太が真剣な声で話し出した。
「最後のリレーの事だけどさ。マサ、お前に俺の代わりを頼めないか?」
「……え?」
突然の頼み事に絶句する俺。
いやいやおかしいだろ。
何度も言うが俺は運動が苦手だ。
それは爽太も分かっているはず。
はずなんだが……。
「どうして俺に? 俺より足の速い奴なんていくらでもいるだろ?」
「マサ、まだ気づいてないのか? お前、足速いぜ。それこそ、俺と同じくらいに、な」
信じられない一言だった。
爽太は学年でも足が速い方で、クラスでは一番速い。
そんな奴からの一言だ。
信じられる内容ではない。
「いや、俺には」
「私からもお願いするわ、桐浜君」
断ろうとする俺の言葉を、透き通ったきれいな声が遮る。
声の聞こえた方、テントの入り口を振り向くと、星風が立っていた。
呆然としていると、星風は爽太に近づき、声をかけている。
内容は爽太を心配したものだった。
硬直から解けた俺は、星風へと質問する。
「星風、お前が何でここに?」
「松原君が怪我をしたって聞いて。そんなにひどい怪我じゃなくてよかった。それと……朝は怒ってしまってごめんなさい。あと、タオルの件ありがとう。助かった」
「あ、いや、別に……いいけど」
いつもみんなに振りまく笑顔で話す。
ほれた弱み、と言うやつか、まともに星風を見れない。
返事もあいまいだ。
それを横で見ていた爽太が話に入ってくる。
「マサ、照れてないでリレーの答えは?」
「照れてないっての!」
話に入ってきたと思えば半分冷やかしかよ!
と、心の中で突っ込みを入れる。
星風は横で笑っていた。
くっそ、こっちの方が恥ずかしいっての。
「桐浜君、お願いできない?」
「マサ、頼む」
俺が恥ずかしがってる中、二人でアンカーの代わりを頼んできた。
爽太が、今にも土下座しそうな勢いだ。
くっそ、こうも必死に頼まれると断れない。
「……わかった、やるよ。やればいいんだろ?」
俺の返事に、二人の顔色が明るくなる。
こうなったらやけだ。
全力でやってやるさ!
誤字脱字は指摘等を




