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やる気ゼロ学生のLAST RUN  作者: 静寂の月光
6/9

part6――問題発生――

時間かけた割には文化祭の時と大差ないという……

「助かったー」


 クラスの席に戻った俺は、安堵の息を漏らす。

 結果から言うと、セーフ。

 ただ、なかなかパンを食べれなくてあわや最下位、という結果だった。

 今は千五百メートル走をやっている。

 これだけは、学年混合で走る競技で、爽太も参加している競技だ。

 爽太はこの後、学年クラス対抗リレーにもアンカーで参加する。

 ほんとすごい。

 

 ラスト一周というところで、爽太の足取りが怪しくなってきた。

 足を痛めて、無理して走っているように見える。

 ラスト一周の時には三位だった順位が、ゴールの時には七位だった。

 ゴール後、そのまま救護テントに運ばれる。

 その姿を見た俺は救護テントに駆け込んだ。


「すまんマサ、捻挫しちまった」


 救護テント入ると、右足に包帯を巻いた爽太の姿があった。

 話を聞くと、競技中に足を痛めたらしい。


「でもゴールはしてきたから得点は一応あったろ?」


「お前、怪我してまで無茶しなくても!」


 分かっているつもりだったが、爽太はスポーツの事になるとすぐに無茶をする。

 それこそ、怪我をしてまで。

 それでもクラスのため、誰かのために必死にがんばる……。

 さすがは爽太。

 俺にはできないマネだ。

 そんなことを考えていると、爽太が真剣な声で話し出した。


「最後のリレーの事だけどさ。マサ、お前に俺の代わりを頼めないか?」


「……え?」


 突然の頼み事に絶句する俺。

 いやいやおかしいだろ。

 何度も言うが俺は運動が苦手だ。

 それは爽太も分かっているはず。

 はずなんだが……。


「どうして俺に? 俺より足の速い奴なんていくらでもいるだろ?」


「マサ、まだ気づいてないのか? お前、足速いぜ。それこそ、俺と同じくらいに、な」

 信じられない一言だった。

 爽太は学年でも足が速い方で、クラスでは一番速い。

 そんな奴からの一言だ。

 信じられる内容ではない。


「いや、俺には」


「私からもお願いするわ、桐浜君」


 断ろうとする俺の言葉を、透き通ったきれいな声が遮る。

 声の聞こえた方、テントの入り口を振り向くと、星風が立っていた。

 呆然としていると、星風は爽太に近づき、声をかけている。

 内容は爽太を心配したものだった。

 硬直から解けた俺は、星風へと質問する。


「星風、お前が何でここに?」


「松原君が怪我をしたって聞いて。そんなにひどい怪我じゃなくてよかった。それと……朝は怒ってしまってごめんなさい。あと、タオルの件ありがとう。助かった」


「あ、いや、別に……いいけど」


 いつもみんなに振りまく笑顔で話す。

 ほれた弱み、と言うやつか、まともに星風を見れない。

 返事もあいまいだ。

 それを横で見ていた爽太が話に入ってくる。


「マサ、照れてないでリレーの答えは?」


「照れてないっての!」


 話に入ってきたと思えば半分冷やかしかよ! 

 と、心の中で突っ込みを入れる。

 星風は横で笑っていた。

 くっそ、こっちの方が恥ずかしいっての。


「桐浜君、お願いできない?」


「マサ、頼む」

 

 俺が恥ずかしがってる中、二人でアンカーの代わりを頼んできた。

 爽太が、今にも土下座しそうな勢いだ。

 くっそ、こうも必死に頼まれると断れない。


「……わかった、やるよ。やればいいんだろ?」


 俺の返事に、二人の顔色が明るくなる。

 こうなったらやけだ。

 全力でやってやるさ!

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