表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やる気ゼロ学生のLAST RUN  作者: 静寂の月光
3/9

part3――事件発生――

修正に思ったより時間がかかる……

 クラスに戻ると、『惜しかったな』、『あのメンバーじゃ勝てないよな、ドンマイ』、などと、クラスの男友達が励ましてくれた。

 その通りで、本気を出してはいなかったがあのメンバーでは俺ごときでは勝てない。

 励ましてくれた奴らに軽い会釈をしながら席に戻る。


「見事に手、抜いてたな」


「やっぱ爽太にはばれるか」


 席に着くや否や、隣の爽太から早速指摘された。

 やっぱり爽太には隠せない。


「確かに手は抜いたが、どうせあのメンバーじゃ勝てないだろ?」


 苦笑いしながら、当たり前のことを言ってみる。

 クラスの奴らも同意したのでこれには同意してくる、と思ったのだが。


「そうか? マサなら勝てる相手だったぞ?」


「……へ?」


 俺は今、とてつもなく変な顔をしているだろう。

 そりゃそうだ。

 部活ばかりしている、スポーツマンしかいない二百メートル走をろくに運動もしていない俺が勝てると言い出したのだ。

 驚きもする。

 とうとう夏みたいな日差しに頭でもいかれたか?

 それとも、まさかの過大評価か?

 無駄に頭を働かせ、暇つぶしに爽太の言ったことについて考えてみる。

 突然、彼女にしては珍しい、低い声が聞こえた。


「……桐浜君、どうして全力を出さないの?」


 星風が、腰まで伸びた髪を風になびかせながら俺に話しかけてきた。

 なぜ俺なんかに話を?

 と、考えもしたが、手を抜いていたのに気付いたことも驚きだ。

 こればっかりは、驚きが隠せない。

 しかし、なんで?


「なんで俺なんかに……いや、それより、なぜ手を抜いたことに気付いた?」


「なぜって、見ていたからでしょ? それより、質問に答えてくれないかしら?」


 星風にしては珍しく機嫌が悪い。

 いつも笑顔を振りまいている存在だからかなり珍しく思える。

 

 言い方に、少しイラッときた。


 普通に言えばいいのに、何か喧嘩を売ってるような、そんな言い方。

 ふつうに話そうとしたが、低めの声が出た。


「……別にいいだろ。本気を出そうが手を抜こうが結果は同じだ」


「そうじゃないでしょ? みんな頑張っているのだからま……コホン、桐浜君もがんばってよ」


「俺なんかが全力で頑張ったって結果は同じだって。俺なんかにかまってる暇あるなら今走っているクラスメイトを応援してやれよ」


 そう言って四百メートル走をやっているグラウンドを指さす。

 爽太から、『お前……言いすぎだ』、と小声で聞こえてきた。

 俺もその一声で冷静さを取り戻し、罪悪感を覚えながら星風を見る。

 星風が口を開く瞬間、俺たちの話を聞いていたのか、クラスの女子(名前は確か高藤)、が話に入ってきた。


「七夏、そんな奴のことより、タオルタオル!」


「高藤さん、タオルがどうかしたの?」


 興味を持った爽太が高藤の話に入る。

 星風はむすっとした顔で俺の説教を終える。

 なんだ?

 このすごい罪悪感は。


「あ、松原君! 七夏のタオルが誰かに盗まれたの!」


 俺の話なんてどーでもいいくらいの一大事だった。

 高藤の口から出た一言は、俺たち二人が思ってたより、ずっと重い話。

 これじゃ、俺が星風に謝るチャンスが流れる。

 そう考えたが、すでにタイミングは逃した後。

 今更謝る空気でもない。

 そう思い、落ち込んでいると、爽太がどんどん話を進めていく。


「どこにあった誰のタオル? 犯人の目星は?」


「えっと、場所は私達の教室。犯人の目星はないよ。ちらっと見たっていう証言はあるけど」


「どんな特徴?」


 気が付くと、俺も話に入っていた。

 どうやらミステリー好きの血が騒いだらしい。

 俺はこの問題を解決する気だ。

 というかそのことしか考えていない。


「えっと、黒い帽子をかぶってて、少し太り気味だったって」


「「……はぁー」」


 目撃証言を聞いた瞬間、二人でため息をつくと同時にやる気が下がった。

 太り気味で黒い帽子、星風関係といえば一人しかいない。

 あきれた声で、二人に答えを言う。


「犯人、黒川な」


「……あー」


「黒川君……」


 答えを聞いた二人は、あきれたような声でうなだれていた。


 黒川は少し前から、こういう問題を起こすようになっていた。

 俺やクラスの奴らがさんざん注意を促してきたが……とうとう大きな問題を起こした形である。

 だが、そんなことは実際どうでもよく、問題はどうやって見つけるか。

 高藤から聞いた話では、すでにファンクラブの皆様が校舎内をくまなく探している。

 が、五分ほど経った今も何も連絡が無いらしい。


「少し時間をくれ」


 そう言うと、俺は頭の中に学校の校舎全体の図を引っ張り出してくる。

 そこから、黒川がよくいる場所、隠れそうな場所を探し出し、携帯を取り出した。

 電話帳から星風のファンクラブ会長の名前を引っ張り出し、電話をかける。


 ファンクラブは普段ちょっと敬遠気味だが、こういう時は頼るしかない。

 ……星風信者ファンクラブって、怖いんだもん。

 抜け駆けしようものなら容赦なくるし。

 会長と最低限の内容確認と、黒川がいそうな場所を教え合い、電話を切った。


 だが、本番はここから。

 今の電話で分かったのだが、ファンクラブのメンバーが約五分、校舎内を探し続けて見つからない。

 ということは、校舎内にいない可能性の方が高い。

 今度は校舎内だけでなく、学校の敷地全体の地図を頭の中に引っ張りだした。

 そこから、今度は校舎外の隠れそうな場所を探し出す。

 今日は体育祭。

 ということは……。


「あそこか!」


「っておい! マサ!」


 爽太の声を無視し、全速力で走り出す。

 面倒なことになる前に!

 走りながら携帯を取り出し、ファンクラブ会長のアドレスを再び引っ張り出す。

 手を回しておく必要があるかもしれない。

 メールを打ち、携帯の電源を切っておく。

 問い詰めてる時に携帯が鳴ると面倒になるからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ