part2——二百メートル走——
意外と時間があったので投稿。
クラスの席からちょうど真反対側にある、本部席。
その前にある競技トラックのスタート地点に、俺は立っている。
先ほどひとつ前の競技、百メートルハードルが終わり、今から二百メートル走が始まるところだ。
橘榛高校はどちらかと言えば田舎の学校だ。
生徒数が少なく、各学年四十人四クラスしかない。
そのため、四人一組で走る。
ライバルは三人。
だが、最初から勝利を諦めている俺は全くやる気がない。
ライバルなど関係ないも同然。
適当に走り、適当に四位をとる事しか頭にない。
「次、さっさと入れ!」
体育の熱血教師が声を大にして生徒を誘導する。
その声のおかげか、はたまた星風のためか、生徒はみんなやる気に満ち溢れている。
……俺以外は。
あんな声、聴いたところで俺の身体能力が上がるわけでもない。
したがって、運動ができない俺に教師がなにを言おうと無駄だ。
俺の出番は二年の最後だったらしく、ずいぶん待たされた。
やる気の無さから、適当に運動場を見渡す。
すると、ある人物が目に入ってきた。
星風七夏。
俺の席の近くで友達と楽しそうに話している。
素直にきれいだと思った。
同時にかなり恥ずかしくなった俺は、視線をそらそうとする。
が、そらす直前に星風がこちらを見た。
当然目が合う。
一瞬ののち、星風は視線を戻した。
直後、俺の周りに待機している同級生たちが、『今星風さん俺の方見てた!』、『馬鹿言え! 俺だ!』、『何度も言わせるなよ、俺だ!』、などの口論を繰り広げる。
今まで誰にも振り向かなかったんだ。
体育祭で活躍した程度で振り向くわけがない。
おめでたい奴らだ。
俺は勘違いなんてしない。
期待なんて、するだけ無駄だから……。
そう、心の中でつぶやく。
さっき、無駄に期待した自分に言い聞かせるように。
それから少しして、俺の出番になった。
トラックに入り、横を見る。
運動部をやっているやつばかりだった。
星風狙いからか、目つきが本気になっている。
俺は目立たないように走ろう。
そう思いながら、クラウチングスタートの構えをとる。
全員準備ができたらしく、教師の声が聞こえてきた。
「次行くぞ! 全力で走れよ!」
嫌だっての。
心の中でそう返すと同時に、ピストルの音が鳴り響く。
その音と同時に走り出した。
スタートダッシュを決めた一番左端、一組の奴が頭一つ抜ける。
やはり、運動をしてるやつらは早い。
それに負けじと、二、三組の奴も必死に追っている。
それの比べ、四組の俺は三人から見て後ろから目立たない程度の距離を取り、適当に走っていた。
目立たない、といっても5メートルは開いているが。
そのままの順位で、ゴールを迎える。
一位は一組、二位は三組で三位は二組となった。
四組の俺はもちろん四位。
みんな息切れしている中、俺だけ息切れしていないのが適当にやったという何よりの証拠である。
ばれないように、少し歩きながら適当に周りを見ていると、星風がこちらを見ていた。
まあ、向こうがすぐに目をそらしたけど。
同じクラスのよしみでレースくらいは見ててくれたのだろか?
そんなことを考えながら、席に戻った。
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