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第3話 危機感

 綺麗なマンションの前、タクシーのハザードがチカチカと辺りを照らす。


「里奈、降りられる?ゆっくりでいいから」


 支払いを済ませた千隼は里奈の体を優しく支えてタクシーから降ろし、2人でマンションの中へ歩く。


「ここは……?」


 気を抜いたら瞑ってしまいそうな目を一生懸命開く。


「……俺のマンション」


「千隼の……?」


「……。」


 千隼はそれ以上何も言わない。

 様子のおかしな千隼に疑問を持つが、それ以上は何も考えられない。

 

 酔いに任せてそのまま一緒に歩く。

 

 エレベーターで7階に上がり、廊下を進む。

 千隼は鍵を取り出して玄関を開けると里奈を家に入れ、ガチャリと鍵を閉める。



 ドンッ——



 入った途端、里奈を玄関扉に追い詰める千隼。


 背後の扉に腕をつき、里奈の瞳を至近距離で見つめる。



「えっ……」


 里奈は驚いて千隼の目を見つめる。


 うとうとしていた頭に強い刺激が加わり、少しだけ里奈の意識をはっきりさせた。



「……こうやって、俺に襲われるとは思わなかった?」


 千隼は少し怒っているのか低い声で小さく囁く。


「クラブは危ないって言ったし、お酒も飲みすぎたらダメって言ったよね?」


「あ……」


 千隼の言葉が里奈の心に強く響き、罪悪感に申し訳なくなる。


「ごめんなさ」


「こうやって知らないマンションに男と……っ。これに関しては送っていかなかった俺も悪いけど、このまま帰すのも怖かったし……」


 申し訳なさそうに視線を逸らす千隼。

 里奈は上目遣いのまま千隼の姿を見つめている。


「……っ。」


 その姿に理性を刺激された千隼は奥歯をギリッと噛み締めて、里奈の肩にそっと頭を乗せた。


「俺の気も知らないで……」


 そのまま少し沈黙が流れ、決意したように千隼が頭を上げて里奈を抱き上げる。


「えっ?!」


「靴、脱がすからじっとして」


 里奈はいきなり抱き上げられて驚き、千隼の体に抱きつく。

 靴を脱がし終えるとそのまま里奈を抱いて部屋の奥へと進む。


 リビングの横の部屋を開けると大きなベッドが一つ。

 綺麗に整えられ、シーツも綺麗にかけられている。



 千隼はベッドに里奈を降ろし、寝かす。


 心臓が飛び出てしまいそうなほど早く打っているのがわかる。


「里奈はもう少し、危機感を持った方がいい」


 押し倒されたような体制、耳元で千隼の声が熱を帯びている。


「好きな子を目の前に耐えられるほど、俺は我慢強くないよ」


 

 そう言って千隼は里奈の首筋に軽く唇を当て、離れた。



 呆然と固まる里奈。

 

 心臓を掴まれたように胸に残る刺激。


 首筋に残る——キスの感触。



 千隼は扉に手をかける。


「俺はリビングで寝るからベッドは使って。……俺は、里奈が好きだから、俺の前で無防備にならないで。」


 ゆっくりと扉を閉めていく千隼。

 最後に動きを止めて、小さく呟く。



「次は我慢できる自信、ないから」



 パタン——と寝室の扉が閉まり、1人ベッドの上で千隼の去った扉を見つめる里奈。



 ボンっ!と顔を真っ赤にして限界を迎えたように倒れ込み、そのまま眠ってしまった。


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