オルドの自伝書 外伝
本編を見てからの閲覧推奨
━━━━━━━━━━━━━━━
森の中、李夏はひとりさまよっていた。ほんの少し仲間たちとはぐれただけなのに、なぜか戻れない。景色はどこまでも同じで、足音だけが虚しく響く。
そんなとき、彼の前に現れたのは、蔦に覆われた古びた石の門だった。ぶら下がる木札には――『黄昏の記録庫』の文字。
「記録庫……図書館?」
半信半疑のまま門をくぐると、小さな小屋の扉が現れる。ギィと軋む音とともに扉を開けた瞬間、李夏は目を見張った。
中に広がっていたのは、外からは想像もできない、空間ごと別世界のような巨大な書架群。天井の見えない空間に、無数の本が並び、靄の中をやわらかな光が降り注いでいる。
誰もいないはずなのに、誰かの視線を感じる。
静寂の中を歩く李夏のもとに、ふいに一冊の本が舞い降りた。金の文字で名が記されていた。
――『アレクセイ』。
それは、李夏が旅の初めに出会った、あの白獅子の名前だった。
「……アレクセイ?」
震える手でページをめくれば、荒野、戦場、吹雪の中に立つ、知らないアレクセイの姿。風の冷たさすら肌に感じる、そんな現実のような記録。
これは、彼の過去だ。
なぜこの本があるのか、そんな疑問はもうどうでもよかった。
もっと知りたい。もっと、友達のことを。
李夏はその本を抱え、物語の奥へと足を踏み入れる。
――それは、仲間たちの知られざる物語の始まりだった。
━━━━━━━━━━━━━━━
森の中、李夏はひとりさまよっていた。ほんの少し仲間たちとはぐれただけなのに、なぜか戻れない。景色はどこまでも同じで、足音だけが虚しく響く。
そんなとき、彼の前に現れたのは、蔦に覆われた古びた石の門だった。ぶら下がる木札には――『黄昏の記録庫』の文字。
「記録庫……図書館?」
半信半疑のまま門をくぐると、小さな小屋の扉が現れる。ギィと軋む音とともに扉を開けた瞬間、李夏は目を見張った。
中に広がっていたのは、外からは想像もできない、空間ごと別世界のような巨大な書架群。天井の見えない空間に、無数の本が並び、靄の中をやわらかな光が降り注いでいる。
誰もいないはずなのに、誰かの視線を感じる。
静寂の中を歩く李夏のもとに、ふいに一冊の本が舞い降りた。金の文字で名が記されていた。
――『アレクセイ』。
それは、李夏が旅の初めに出会った、あの白獅子の名前だった。
「……アレクセイ?」
震える手でページをめくれば、荒野、戦場、吹雪の中に立つ、知らないアレクセイの姿。風の冷たさすら肌に感じる、そんな現実のような記録。
これは、彼の過去だ。
なぜこの本があるのか、そんな疑問はもうどうでもよかった。
もっと知りたい。もっと、友達のことを。
李夏はその本を抱え、物語の奥へと足を踏み入れる。
――それは、仲間たちの知られざる物語の始まりだった。
白銀の獅子
2025/07/29 16:58
深緑の兄弟
2025/07/29 16:59
紺碧の狂犬
2025/07/29 17:00
温かいスープ
2025/07/29 17:11
(改)
太陽のような人 前編
2025/08/26 12:03
太陽のような人 後編
2025/08/26 14:12
雪が溶ける
2025/08/29 23:55