1 祓い清めたまえ
「ふーん」
戸茂野木ヒロキは呆れていく。
酷いものだと思っていたが、やはり酷い。
見えるようになってはっきりと分かる。
「……ここまで酷いとは」
邪念。
言葉にするとこうなるだろう。
他人への悪意や害意。
これが周囲に吹き出している。
そんな人間が同じ教室にいる。
最悪というしかない。
実際、酷い人間である。
そいつのおかげで不登校になった者は多い。
恐喝や暴行を受けてる者もいる。
ヒロキも例外ではない。
どれだけ暴行を受けた事か。
だが、なぜかお咎めはなし。
加害者が罰せられる事はなく。
むしろ、学校の中で大手を振っている。
(世の中、暴力に優しいんだな)
悲しいかな、これが現実である。
だが、それを放置するつもりはヒロキにはなかった。
今までは何も出来ずにいたが。
もうそうではないのだから。
(じゃあ、やってみるか)
心の中から力を呼び起こし、それを放出していく。
邪念に向けて。
邪念を放つ存在に向けて。
リーン
音のない響きがヒロキから放たれる。
それが歪み淀んだ邪念へと向かう。
人が持つ霊気、それは波動となって邪念に向かう。
振りおろされる刃のように切り込む霊気は、邪念を切り裂いていく。
霊気が触れた部分から邪念が消えていく。
音のような響きによって、邪念が消散していく。
続いて何度も霊気を当てていく。
邪念が完全に消える去るまで。
その度に周囲に及んでいた怖気や腐臭が消えていく。
通常ならば気付かないような、しかし心を押しつぶす不快感が。
対照的に邪念を放ってる本人は衰弱していく。
顔から血色が消え、生気が失われていく。
騒々しい取り巻きもいぶかしく思い始める。
しかし、原因も分からずにいる。
それはそうだろう、霊的な衝撃を受けてるなど普通の人間には感じとれるわけがない。
ついでだからと取り巻きの方も処分していく。
こちらも邪念を放っている。
このままにしておいても良い事は無い。
まとめて一緒に片付けていく事にした。
霊気を更に発動する。
音のない響きが、悪人共へと向かっていく。
それらが放ってる邪念が一気に消えていく。
周囲の空気が晴れ渡っていく。
そうして邪念が消えていき。
最後の一欠片も消滅した瞬間。
邪念を放っていた者が倒れこんだ。
一緒にいる取り巻き共も。
力なく床に倒れこみ、ピクリとも動かない。
さすがに気になって様子を伺っていた生徒達も目を向ける。
だが、近づこうとはしない。
下手に近づいて難癖を付けられてはたまらないからだ。
おかげで、悪人共は教師がやってくるまで放置される事になった。
その後。
倒れた連中の心臓が止まってる事が分かり。
警察と救急車が学校にやってくる事になった。
そうなるまでにもそれなりの騒ぎになったのだが。
ヒロキはそんな騒ぎをさめた気持ちで眺めていた。
(何を今更)
問題が起こっていたのに放置して。
その元凶が死んだ途端に大騒ぎ。
何をしてるんだろうと呆れていた。
新しく思いついた。
とりあえず書けた分だけ出した。
続きはどうなるか分からないけど。




