スキル:徒歩強化
どうも、最悪な贈り物です!!
厳しくでも良いので感想を貰えると助かります!!
「えーっと…誠に残念なのですが…」
聖女さんは気まずそうに、苦笑いを浮かべた。
「すいません…底辺スキルです…」
「ち、ちなみにさ…どんな能力なんだ…?」
ま、まだだ!もしかしたら雑魚だけど、最強かもしれない…!!
「えっと…徒歩強化…ですね…」
「と、徒歩強化…それって…どう言うスキルなんだ…?」
「えっと…早歩きができます…」
「じょ、冗談だろ…」
俺がこう呟くのも無理は無いと思う。
何故なら、ボトムスキルとは、人生終了のスキルだからだ。
だが、考えてみれば、俺は最初から底辺だったのかもしれない。
15年前…
「おーい!」
俺はその明るい声に振り向かされた。
後ろからついてきたのは幼馴染の咲華だった。
「全くー…こんな可愛い女の子を置いてくなんて…これだからモテないだよ!」
彼女は、信号待ちの俺の頬を人差し指で突いた。
「う、うるせぇ…!別に…友達作るかなんて…個人の勝手だろ!そもそもなぁ、俺は別に人間が好きじゃなくてだなぁ…」
「あ!信号!青になった!」
俺の言葉を遮って咲華は、横断歩道に飛び出した。
「って!!お前…はぁ…」
俺も咲華にため息を交えて、背中を追う。
と、その時だった。
ブロロロロロロ!!!!
俺が横を見た時、そこには真っ直ぐこちらに向かって突っ込んでくるトラックの姿があった。
いや!こちらなんかでは無い!!
咲華に向かってだ!!!!
「咲華!!!!」
俺は離れた咲華に呼びかけるが、あの野郎、てっきり俺を無視する。
あいつのことだ。
俺のことを揶揄ったからって俺が怒ってるだけだと思っているのだろう。
俺は震えた足に力を入れて、手を伸ばして咲華を突き飛ばす。
「痛っ!何する「幸せになれよ。咲華」
次の瞬間、俺はトラックに突き飛ばされ、10m程吹き飛んだ。
あーあ。
死んだなぁ。これ。
道路の真ん中で倒れて、真上で広がる青空が視界に映る。
すると、その中に咲華が飛び込んできた。
目には涙を抱えている。
俺みたいな底辺で泣くなよ…
お前にそんな顔は似合わねーよ。
ここで俺の瞼が急に重たくなり、俺は目を瞑り、視界に暗闇が広がった。
もう、この暗闇が明るくなることなんて、無いと思っていた。
しかしながら、そんな俺に再び、光が差し込んできたのだ。
まぁ、ケツを叩かれて起きたわけなんだけど…
現在
で、色々あって、どうやら俺は異世界に転生したらしい。
ここ15年で分かったことをさらりと心の中でおさらいしようと思う。
まず、俺は魔法とかスキルとか、魔物が存在する世界に来たこと。
そして、スキルは、個人に1人1つの能力。魔法は、全員が平等に扱える能力。魔物は魔力から成る生物。
建物などの技術は中世ヨーロッパあたりだろうか…
ちなみに、魔法は基本的に、火、水、草、土の四種類だけ。
なのでぶっちゃけ魔法は生活を中心に使われている。
そして、スキル。
これは汎用性が高く、物によっては生活。
物によっては戦闘向きなスキルも存在するらしい。
ちなみにスキル、魔法共にレベルがあるわけで、使えば使うほどレベルが上がるらしい…
んでもって、この世界に生まれた俺。
オタで、陰キャだった俺は、まぁ、案の定異世界無双しようと思っていた。
しかし、魔法は生活でしか使わない。
ので、15歳になった時(この異世界では15歳が成人)に、スキルの授与式があるのだが…
「え?もう一回お願いしてもいいか?」
それが今日なわけで。
そして。
「えっとぉ…はい…底辺スキル…です!!!」
底辺スキル。ほぼ役に立たないスキルのことをそう呼ぶ。
「な、なので…えっと…グラフさんの役職は…王宮奴隷…です…」
どうやらここで説明を挟む必要がありそうだな。
スキルにはランクというものが存在する。
1番上で、セイクリッドスキル
これはまぁ、人類の一握りが所有しているスキルだ。
次にベタァスキル
まぁ、大体10人に1人くらいの割合で持ってるセイクリッドスキルほどでは無いが程々に凄いレアなスキルで
ある。
その次にノーマルスキル
説明不要。普通の一般的なスキルだ。大体の人がこのスキルを持つ。
そして、ボトムスキル。
底辺の底辺。
最下位。
雑魚スキルだ。
ノーマルスキル以上はまぁ、普通のスキルな為、対応は普通なのだが…
しかし、セイクリッドスキルよりもレア度の高いボトムスキル(セイクリッドスキルが人類の一握りなら、ボトムスキルは、人類のひとつまみだ。)は、どうやらこの世界では君悪がられて、人間として扱われないらしい。
「スゥー…」
俺は一度深呼吸。
そして、この村での幼馴染で、15歳で聖女である、フリィに聞く。
「拒否権というのは存在するのか?」
「ご、ごめんなさい…ありません…王国の法律で決まっていまして…」
でしょうね。
ちなみに、これを破って逃亡などしてしまったら、俺を産んだ家族と、その村の住人全員が殺されることになる。
「あーあ…死んだなぁ…」
俺は思いつつ、家の中の衣服などを集める。
家族は、俺と顔を合わせようとしなかった。
完全に無視。
まるで俺がそこに居ないかのようだった。
まぁ、そう成るのも無理は無いか…
俺はすでに人間の形をした何かという判定になってしまっているのだから…
翌日。
早朝の5時に俺は村を出た。
近くの馬車に乗ってそして王宮へ移動する為だ。
ちなみにそこでは、もちろん俺の奴隷生活が始まるわけで…
具体的な内容はダンジョンのボス部屋のボスの能力の把握などだろうか。
多分大体即死だろうけど。
「ちょ、ちょ、ちょっとまってー!!!」
馬車を待っていると、村から少し外れた待機場に誰かぎ走ってくる。
まだ、朝日が手できてないので、黒メインの服を着た女性としかわからなかったが、次第にそれが誰なのかわかってきた。
「フリィ…」
俺の異世界人生での幼馴染であり、15歳で聖女を務めるという天才少女。
「ほ、本当に…行っちゃうんですね…」
フリィは、息切れをしながら言う。
「そりゃあ、俺が行かなきゃ殺されるのはお前だからな」
「で、でも!!行ってしまったら!!もう帰ってこないじゃ無いですか!!!」
そりゃあそうだ。
ほぼ確実に死ぬんだからな。
王宮の取り扱うダンジョンなんて本当はセイクリッドスキルを持つ奴らが攻略するんだから。
ほぼ一般人の俺が勝てるわけないし、逃げることさえ出来ないだろう。
「まぁ、そうだろうな」
「ば…バカ!!!!」
バカ。
彼女は、はっきりそう言った。
まじか…15年間過ごしてきてはっきりこんなバカって言われた…フリィに…
「な、なんでっ!!!!なんでそんなにきっぱりと諦められるんですか…!!!!」
きっぱりかぁ…
「まぁ、別にお前が死ぬわけじゃないからな。俺が死ぬだけだ。俺はお前に幸せに生きて欲しい。そう思ってるだけだ。」
すると、フリィは、一度頬を赤くする。
そして…涙を流しながら、フリィは、俺に寄ってきた。
服にフリィの涙がついた。
「離れないでよ…死なないでよ…嫌だよ…私はずっと一緒が良いのに…!!!一緒じゃないんだったら私も死ぬ…!!!」
女ってのは…
俺は思いながら、頭を撫でた。
「わかったよ…だったら、絶対帰ってくるから。その時まで待っててくれ。」
「待ってる…!!!100年でも…!200年でも…!!!」
全く…お前はエルフかっつうの。
俺は聖女らしくないピンク色の髪のフリィを引き剥がすと、いつの間にか到着していた馬車に乗り込んだ。
「ぜ、絶対だからね!!!!」
馬車が、発車した時、彼女は、そう言った。
はぁ、全くあいつは俺に余計なもの背負わせやがって…
思いながら、俺は馬車の中で揺られていた。
「てか、早歩きできるスキルって何なんだよ…どうやって生き延びりゃあいいんだ…」