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ある電話の会話にて 三

「うー……何、あーちゃんこんな時間に」

「ゴメンね。ちょっとあんたに伝えたいことがあってさ」

「伝えたいって……今朝の五時半だよ? もう少し遅くに電話してきてよー」

「ごめんごめん。で、ものは相談なんだけどさ――今日、いつもより早く学校に行く気ない?」

「んー? 何時くらいー?」

「えっと、七時二十分なんてどう?」

「いやいやあーちゃん疑問形に疑問形で返されても困るよー。うーん……眠いー」

「……早く来てくれたらあんたの欲しいもの一つあげるわ」

「そこで物で釣っちゃうのはどうなのあーちゃん! うー、えっと……じゃ、じゃあね、私……彼氏が欲し」

「ごめんそれ無理」

「即決! 即決で拒否なのあーちゃん!」

「いやー……だってあんたじゃ無理でしょ」

「酷いっ!」

「あ、違う違う。勘違いしないで。ただ単純に、あんたのテンションについていける奴はいないって話だから」

「それはそれでキツイものがあるんだけどあーちゃん! え、え、私のテンション駄目なの! あーちゃんみたいにクールぶってるおかしなテンションなんかより断然いいじゃん!」

「……あんた、今日の朝覚えておきなさいよ」

「低いっ! あーちゃんの声があーちゃんテンションに比例して低いよっ!」

「なっ、あんた……もういいわ。これ以上言っても多分あんたの私への評価変わらないし」

「な、あーちゃん凄い! エスパーなのあーちゃん!」

「……本心だってことが言いたいのね。本気の本気で今日の朝の時覚えてなさいよ」

「え、あーちゃん一体私に何する気……ってもしかして! 上履きに画鋲とか入れるの!」

「そんな一昔前の少女漫画みたいな復讐はしないわよ。別に。ちょっと上履きを学校のどこかに隠すだけ」

「それも一昔前だと思うんだけど……ほ、ホントにあーちゃんそんなことするの?」

「……何言ってんのよあんた。いくら私が年中彼氏とイチャラブだからってする訳ないでしょ」

「あれなんかちょっと自慢が入ってるよあーちゃんそれ! 畜生……彼氏ってなんなんだよ……彼氏いるやつ全員消え去れ……」

「またキャラ変わってるわねあんた……。あ。そうそう、彼氏云々の話しになるんだけ」

「一秒でも彼氏の話ししたら今すぐあーちゃんの家を焼くからね」

「放火魔になるくらいの覚悟があるのねあんた……。いいわよ、出来るものならやってみなさい」

「ファイヤーブリザードっ!」

「…………」

「…………」

「……今の叫び何なの! どうしたのいきなり!」

「私の魔法だよっ! どうあーちゃん? あーちゃんの家焼けた?」

「そんなもんで焼けたら放火事件全部が迷宮入りになるっての! そもそもあんた、呪文にブリザードって入ってるじゃないの! ファイヤーにブリザードって結局何したいの!」

「人は家を燃やされた後、凍るのさ……ああ何で家が無いんだってね。凍り付くんだよ、ローン返済も終わってなかったのに……」

「何ニヒル気取ってんのよあんた!」

「うるさいあーちゃん! チチンプイプイチチンチンチンプイプイ!」

「……途中に女子が言ったらヤバイ四文字があったのはウチの気のせいよね! まさかよね! 言う訳ないわよねそんなこと!」

「チンチラチンチソチソチンチクワっ!」

「ってフェイントじゃないの!」

「流石あーちゃんだね……ここでまたさっきの長ったらしい台詞を言っていたらあーちゃんの家に放火する所だったよ……ファイヤーブリザ」

「また同じ会話繰り返しちゃうからそれ言ったら! 往年の板東エイジかあんたは!」

「……で、あーちゃん。何で学校早く行った方がいいの?」

「ここでスルースキルを使うのね……。ハハハ、泣けてくるわホント」

「泣いちまいなぁ! 私はそれを……あーちゃんの心の叫びを私の寛大な心で抱きしめてやるよぉ!」

「あんたのどこに寛大な心があるのよ!」

「失敬なあーちゃんだね! 全く、教育が成っとらんよ教育がー!」

「ほら無いじゃないの寛大な心! あんたの心が寛大なら私の心は地球の大きさにも匹敵するから!」

「……はいはい。あーちゃん気は済んだかな? 早く本題に行かない? 私、喋り疲れちゃったよ」

「……ああああ今すぐ電話越しのあんたの家を燃やしたいわ。ファイヤーブリザードっ!」

「痛っ。あーちゃん痛っ。女の子同士の会話でファイヤーなんちゃらって……アイタタタだよあーちゃん」

「……この苛立ちをウチは一体どこにぶつければいいんだろうね」

「闇討ちとかどう?」

「は? 闇討ち?」

「うんうん。最近見たドラマでね、『必殺闇討ち人』っていうタイトルのミステリーがあるんだけどね」

「そのタイトルでミステリーなの? いろいろとキツくないそれ」

「まあまああーちゃん慌てない慌てない一殴り一休みー」

「一休さんも大泣きするフレーズね」

「うん。でね、主人公が野球好きのサッカーオカマって設定で、ヒロインが犯人って設定なの」

「……あれ? なんかこの数秒で指摘しなきゃならないところが数多くあるのは私の気のせい?」

「気のせいじゃないかなー。でねでね、私も友情出演してるんだけどね」

「あんたドラマに出演してるの! しかも友情出演! 普通に凄いじゃないのそれ!」

「まあねー。私の美貌と性格と素質と根性と存在があれば簡単に出れる話なんだけどさー……ってあーちゃんゴメン! 違うの、別にあーちゃんに美貌と性格と素質と根性と存在が無いって言ってる訳じゃないんだよ! 違うの! 悪いのは全部私! この世の全てを兼ね備えた私が悪いの! だからあーちゃんは全く悪くないの!」

「…………」

「あ、あーちゃん……さん? あの、無言は怖いっていうか、その」

「……七時二十分に学校に来なさいね。てか来い。来なかったら全校生徒にあんたのヌード写真ばらまくから」

「あ、待ってあーちゃん! まだ私が演じる美人秘書カオリさんの素晴らしさを語ってな……」

「…………」

「…………」

「……はぁ。あいつも大概にして欲しいわ。欝陶しいったらありゃしない。……まあ、とりあえずあいつを朝早く来させることは成功する筈だから……あとはウチの準備だけね。フワァ……。ていうか眠いわ。いくら雄二君の跡を付け回すっていったって深夜越してまでやるんじゃなかったわね。途中でウザイ死ね死ね糞メグにも会っちゃったし。声低くしてたからばれてはいないと思うんだけど……ばれてたら怖いわね。まあそんなことは有り得ないか。だって馬鹿のメグだし。ていうか何であいつ学校に来てんの。ていうか何であいつ生きてんの。死ねばいいじゃんホント雄二君の幼なじみとか死ねばいいじゃん。雄二君の全てが欲しいのよ、ウチは。そのために……今日。メグに全てをばらして、あいつをバラしてやる。まずは……早く学校に行きましょうか」

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